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《野球太郎ストーリーズ》広島2016年ドラフト2位、高橋昂也。今夏、県37イニング無失点の152キロ左腕

取材・文=菊地高弘

《野球太郎ストーリーズ》広島2016年ドラフト2位、高橋昂也。今夏、県37イニング無失点の152キロ左腕

将来の柱になる素材型投手を補強したい広島が「高校BIG4」の一角を2位指名。フォークとスライダーも操る左の剛腕が今春の「どん底」から見つけたものとは?

意外な24番目の指名


 名前がなかなか呼ばれない。

 目の前には、大勢の報道陣がいた。各球団の指名選手がアナウンスされる直前、カメラの放列が自分に向けられる。そして、別の選手の名前が読み上げられると、レンズが一斉に下ろされる。その繰り返しだった。指名を受ける当人としては、「どの球団に何位で指名されてもありがたい」と思っていたが、さすがにこの緊迫感にはハラハラさせられた。

 今秋のドラフト会議を前に、高橋昂也(花咲徳栄)は寺島成輝(履正社)、藤平尚真(横浜)、今井達也(作新学院)とともに「高校BIG4」の一角に数えられていた。高橋以外の3人の名前は1位で早々に消えていたが、高橋の名前は1位を終えて2位指名に移っても、なかなか呼ばれなかった。そして、最後の2位指名となる広島の選択で、ようやく高橋の名前がコールされた。

 24番目まで名前が呼ばれなかったことは意外に思えたが、高橋本人にとっては指名を受けた喜びが勝っていた。高橋は言う。

「日本シリーズはテレビで見ていました。セ・リーグを優勝した、実力のある選手がそろっているチームに指名してもらい光栄です」

半年前は「どん底」だった


 今から半年前、高橋は自分がドラフト指名を受ける身になるなど、まったく想像できなかったという。なぜなら、高橋は野球人生のどん底に落ち込んでいたからだ。

 春のセンバツ出場に備え、厳しい冬の投げ込みやトレーニングをこなして快調に調整していたはずだった。しかし、いざ春を迎え、実戦で登板してみると、どうも感覚がしっくりこない。

「自分のイメージ通りに体が動かない感じで、フォームがおかしくなって、スピードも出ない。冬のトレーニングによる体の疲れのせいなのか、何が原因なのかもわからないありさまでした」

 最悪の状態で迎えた春のセンバツでは、初戦の秀岳館戦で打ち込まれた。6回6失点の結果以上に、ストレートの球速がほとんど130キロ台前半だった内容の悪さに深刻さがうかがえた。

 失意のうちに埼玉に帰ると、今度は背筋痛に襲われる。春の県大会は下級生にマウンドを譲り、高橋はノースローの日々を過ごす。この時点で高橋の名前はドラフト戦線から消えたと見られていた。

見えないものが見えてきた


 しかし、高橋はどん底から、見事なV字回復を見せる。

 圧巻だったのは、夏の埼玉大会だ。37イニングを投げて、被安打11、奪三振52、四死球2。完璧な投球内容で、大会通じて1失点も許さなかった。ストレートの最速は152キロをマーク。なぜ、高橋は復活できたのだろうか。

「きっかけは休んだことだと思います。背筋を痛めてから最初の2〜3週間はしっかり休んで、次の2週間くらいも投げずに走り込みをしていました」

 約1カ月間のノースロー期間。ここで今まで見えなかったものが見えてきたという。

「ケガをするまで、自分自身のことでいっぱいいっぱいになっていて、余裕がありませんでした。ケガをしてから周りが見えるようになって、相手バッターのことも見られるようになったと思います」

 中学、高校と高橋のチームメートである遊撃手・岡ア大輔(オリックス3位指名)も「高橋が変わったのは、精神面が大きい」と証言する。夏の大会での高橋は、マウンドから野手に積極的に声を掛けるシーンが目についた。

 そして、投球フォームも「脱力」を意識することで、徐々に状態が上がってきた。球速はケガをする以前よりもスピードアップし、精神面でも成長。夏の甲子園が始まる頃には目玉選手の一人に数えられていた。

ストレートを磨きたい


 高校3年の夏から秋にかけては、甲子園、侍ジャパンU −18代表、ドラフト会議……と、さまざまなイベントがめまぐるしく過ぎていった。しかし、高橋は毎日花咲徳栄のグラウンドに顔を出し、トレーニングを続けている。

 指名後の挨拶に訪れた広島の苑田聡彦スカウト統括部長は「太ももの厚さに驚きました。あれは走ってつくってきた太ももですね」と手応えを語っていた。

 そして、高橋はプロへの思いを口にする。

「日本シリーズを見て、正直言ってこの中で自分が活躍するイメージはまだ湧きません。即戦力とは見てもらえていないと思うので、一番の武器のストレートを磨いて、1日でも早く貢献したいです」

高橋昂也プロフィール

(※本稿は2016年11月発売『野球太郎No.021 2016ドラフト総決算&2017大展望号』に掲載された「28選手の野球人生ドキュメント 野球太郎ストーリーズ」から、ライター・菊池高弘氏が執筆した記事をリライト、転載したものです。)

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