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「プロ」っていう、感じ方が違ったね(最終回・前編)

■エキスパートが自分の仕事を全うするだけだった時代

 最終回はこれからのカープについて話そうか。

 まず、その前に、今のプロ野球に共通していることだけど……。

 選手同士の仲がいいよね。よくコミュニケーションをとっているし、点を取ったときとか、バントを決めたときなんかでもハイタッチをしている。

 強かった頃のカープ? 仲悪かったよ。

 いや、そうじゃないな。周りもライバルという緊張感があった。

 オレ、ホームラン打ったとき、ベンチにいた先輩に言われたもん。「嬉しいのはお前だけやぞ」って。

 みんな自分のことで必死だったから、関心が無かったのよ。それぞれが単体だったから。「おててつないで」じゃないからね。

 ゴルフに例えるとわかりやすいんだけど、今のプロ野球は7番アイアンが14本入っている感じだよね。そして、それぞれが一生懸命ロフトを変えて色々な役割をしようとしている。当時はドライバーからパターまで専門職がしっかりしていた。

 だから、それぞれが持っている役割を果たすことだけを専念すれば良かった。ここまでボールを持っていけば、あとはスプーンとかミドルアイアンが待っていてくれる、とかね。仮に2番手がミスをしても、サンドウエッジやピッチングウェッジがあったからフォローしてくれる……というのがあった。

 具体的には、僕やヤマ(山崎隆造)はとにかく出塁して先の塁に進む。それを(山本)浩二さんやキヌさん(衣笠祥雄)が還す。仮にそれでも点にならなければ、後ろには長嶋(清幸)なんかが控えていた。もう、それ以外ないわけよ。自分のすべきことって。シンプルでしょ?

 ところが、今は状況に応じてみんなが色々な役割を果たそうとするんだよな。それで、全員が責任を感じて失敗する。きっと自分に対して、そして周りの選手に対しても自信がないからそうなるんだと思う。

 プレーにおいて相手を信頼できれば、自分がやらなくてはいけないことだけに集中すればいいだけのことでしょ? それがプロ。本来、その集まりなわけだから。

 今、そんなチームないよね。

 逆に考えたら、自分のプレーさえしていれば、人のことなんて考えなかった。よく、北別府(学)とオレが仲悪いとか言われたけど、 仲が悪いんじゃなくて、関係ないという感じだったんだよ。

 「プロ」っていう、感じ方が違ったね。


■今、「本職」の選手っている?

 それと、今のプロには「本職」もいないよね。
 12球団で「この選手は1番打者以外にあり得ない」って選手がいるかな? 2番打者でもいい。いないでしょ?

 例えばさ。長嶋茂雄さん(元巨人)がセカンドやっている姿とか考えられる? 想像つかないでしょ? セカンドなら?木守道さん(元中日)だよね。そう思わん?

 使い勝手はいいかもしれないけど、本物がいるか? ということだよね。

 僕らの頃は本職揃いだった。だから極端な話、監督いなくても試合できたもん。

 自分たちの役割が決まっていたから、状況によって今、自分のすべきことを迷わずすることができるんだよね。自分を評価することができるから、次に出るサインが読めるようになる。サインにびっくりすることなんてなかったよ。

 それは、レギュラーだけじゃなくて、代打にしても2番手、3番手とも同じだよね。「ここはオレだな」って思える役割があった。そういうときの選手は、1+1=2以上の力を発揮するものだよ。

 ただね。今の選手にそういう部分がないというわけではないのよ。それは彼らが悪いのではなくて、教育の問題だと思う。

 当時のカープは、僕を自由にさせてくれた。若いから責任を感じないで済んだ。遊ばせてもらったよね。どこまで計算した上でのことだったのかはわからないけど。

 ただ、今のような「みんなで責任を取ろうや」というやり方を、若い選手にも強要してチームを強くするというのは、難しいことだと思う。



後半へ続く

?橋 慶彦(たかはし・よしひこ)
1957年生まれ、北海道芦別市出身。広島東洋カープに入団し、「赤ヘル黄金期」の1番打者として大活躍する。現在はテレビ新広島で解説者を務めている。

構成=キビタキビオ

詳しいプロフィールはインタビュー後半にて

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