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専修大の優勝は26年ぶり!1部昇格即優勝は46年ぶり!!優勝した選手コメントもたっぷり掲載!

 5月20日10時前。外苑前駅から神宮球場へ向かう道は異様なほど混雑していた。球場に着くと、専修大の応援団付近一帯がたくさんの人で埋め尽くされていた。

 前日の試合で勝ち点、勝率ともに並んでいた中央大が亜細亜大に敗れ、専修大は拓殖大に先勝していたため、この日にも勝利を収めれば、1部優勝が決まる大切な日。26年遠ざかっていた悲願を見届けようと、たくさんの人が神宮球場に足を運んでいた。

 一方の拓殖大も、最下位回避のためには1つの負けも許されない状況。両チームにとっての大一番は、専修大が堀田竜也(2年・常葉学園菊川高)、拓殖大は稲葉武昭(3年・呉商高)の先発で幕を開けた。

☆両大学の運命を決する試合は投手戦で進む

 1回表、先頭の重野雄一郎(4年・専大松戸高)が二塁打で出塁し、犠打で三塁へ。2死三塁の場面で、濱田竜之祐(4年・鹿児島実業高)が振り抜いた打球はレフト前へ。左翼手が滑り込んでグラブを差し出すも届かず、打球は外野を転々。重野が先制のホームを踏み、濱田は二塁を陥れた。

▲初回、二塁打で出塁した重野は拳を突き上げる

▲先制タイムリーを放つ濱田。これが唯一の得点に

 強打の専修大打線だが、今季初先発の稲葉が後続を抑えて最少失点で切り抜けた。

 前日、2回途中でKOされた堀田だが、この日は順調な立ち上がりを見せる。3回には四球で許した走者を三塁まで進められるが、中堅手・重野のファインプレーもあってスコアボードに0を並べていく。

 それでも4回、専修大ベンチは堀田から大野亨輔(4年・星稜高)にスイッチ。実は大野は、一昨日の練習中、右足首をねん挫していた。それでも、1回戦では救援登板。「安定した投球ができていないので、(先発は)堀田が最適だろうと思っていた」と、ケガの影響であることは否定したが、開幕から任されていた1戦目の先発マウンドを譲った形になっていた。

 そんな大野だったが、最初の打者にヒットを打たれると、そこから2死三塁のピンチを背負う。だがここもセンターフライに打ち取って切り抜ける。

 その後は互いにほぼ毎回、走者を出すもホームが遠い展開。稲葉も立ち上がりこそ制球に苦しんでいたものの、徐々に立ち直りを見せていた。

 8回表、専修大は先頭打者が死球で出塁すると、続く打者は犠打も、捕球した稲葉が一塁へ悪送球で無死一、二塁。犠打と四球で1死満塁となると、拓殖大は稲葉から岸潤一郎(1年・明徳義塾高)へと交代を告げる。

 対する打者は先制打を放っている濱田。もう1点も許されない状況ながら、強心臓ぶりを発揮した岸。動揺する様子はなく、制球も乱れることなく浅いレフトフライに仕留めた。続く打者もセカンドゴロに打ち取り、何事もなかったかのように岸はベンチへと戻っていく。

▲ピンチを切り抜ける岸。表情一つ変わらない

 その直後、1死から森田悠太(4年・霞ヶ浦高)がヒットで出塁すると、次打者の初球で二盗を決める。続く鈴木孝昌(4年・山梨学院大付高)は強い打球を放つもサードライナー。いい当たりが続いたところで、大野から高橋礼(2年・専大松戸高)に投手交代。

 ここで打者は岸。守備でのいい流れをそのままつなげたいところではあったが、空振り三振で得点ならず。

 9回も2死から敵のエラーにより走者を出すものの、盗塁失敗で試合終了。初回の1点を守りきった。

 専修大が実に26年ぶり、32度目となる1部優勝。歓喜に沸くスタンドの目前で、齋藤正直監督が選手の手によって宙を舞った。

☆監督、選手が一体となり掴んだ優勝

 試合後に行われた優勝会見。取材陣から投げかけられた「齋藤監督はどんな監督?」の質問にそれぞれが回答した。

「常にポジティブな声をかけてくれた」
「メンバー内外関係なく皆を信頼してくれて、監督のために勝ちたいと思わせてくれる方」

 と声が上がっていくと、それまで笑顔だった齊藤監督が何度か涙をぬぐってみせた。

▲優勝を決め、大応援団が詰めかけたスタンドに挨拶をする選手たち

★試合後コメント
高原悠主将
「監督を胴上げしようというところから始まったチーム。1部にいた2年前にも日本一を掲げていたのですが、それは本気だったのか? という話を、練習後にしていました。胴上げができて嬉しかったです」

大野亨輔「監督、コーチを信じて1つになって戦ったことが優勝に繋がったと思います。(昨年のエース)角田さん(皆斗/現富士重工業)に、投手がしのげば勝てる、ということを見せてもらいました。堀田や高橋も大舞台で投げてくれて、取り組んできたことが間違いじゃなかったです。(一昨日にケガをしたが)痛いとは言っていられないので、痛み止めを飲んだり、テーピングを巻いたりしました。トレーナーの方にもよくお世話になって感謝しています。治療のおかげです」

渡辺和哉(4年・文星芸大付高)「全員で胴上げをしよう、と死ぬ気でやってきた結果が結びついて嬉しいです。去年は全然貢献できなくて、入れ替え戦でやっと(貢献が)できたかなという感じでした。チーム、監督のためになろうという思いでやってきました。守りがしっかりしていたのは大きな要因だと思います」

濱田竜之祐「2部にいたのが長くてなかなか想像できなかったのですが、絶対に優勝すると、厳しい練習をしてきたのが報われたようで嬉しいです。昨日は自分のバッティングができなくて消極的だったので、どんなボールでも初球のストライクから打つと決めていました」

 専修大が悲願の優勝を掴んだ一方、最下位が確定した拓殖大。序盤は飯野徹也(4年・作新学院高)、尾松義生(4年・明徳義塾高)ら投手が低めに集める丁寧な投球を見せていたが、以降は失点が多くなっていってしまった。反面、打撃力は上向いた印象を受ける。また、岸も投手として計算が立ち、投打に好材料はある。

 何より森田、鈴木の常に全力疾走を見せる姿勢、ベンチから大きなアクション、声でメンバーを励まし続ける大熊慎也主将(4年・松本工高)といった4年生の姿は他チームに引けを取らない。いや、彼らほどの動きを見せる選手は、それほどいないと言える。そういう部分にはぜひ自信を持って、下を向かずに入れ替え戦へと臨んでほしい。


■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速中。イベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。

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