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ストップウォッチャーを唸らせる好記録が連発!実は野球に必要なスピードを持つ選手が揃った甲子園だった!

■3秒台が有望選手の「聖域」となる一塁かけ抜けタイム

 バットがボールに当たった瞬間から一塁ベースを踏むまでを測る一塁かけ抜けタイムは、「よーい、ドン」でみな平等にスタートが切れる50メートル走のタイムとはまた違う結果が出ることがある。スイングを終えてから、走りだすまでの無駄のない動作と、少ない歩数でトップスピードに乗せる加速が必要になるからだ。塁間の27メートル43センチは50メートルよりはるかに短い。

 イチロー(ヤンキース)なら、マリナーズに移籍してすぐの全盛期で3秒70台を頻繁に出しており、アマチュア選手も3秒台が有望選手の「聖域」となる。今大会の甲子園に出場した選手たちの場合はどうだっただろうか。

■スピード面もでレベルが高かった今年の甲子園

 前回の滞空時間と同様に、今回も各チームの初戦1試合のみを原則として測定した。ただし、勝ち上がったチームの数人の選手については例外的にその後の試合で測定したタイムも含まれていることをご了承のうえ、ご覧頂きたい。

 まず、一塁に近い左打者は以下のとおり。



 実は今回の結果については、結構驚いている。それは、1位の堀口裕真(近江)のタイムが3秒80を記録したことである。


 実は高校生の場合、例年4秒を切る選手が数名出てくることはあっても、大抵は3秒98とか、3秒90台後半が最速であることが多い。だが、堀口の3秒80というのは珍しい。過去に藤村大介(巨人)が熊本工時代に3秒70台を出したという話を巨人のスカウトから聞いたことがあるので、史上最速というところまではいかないだろうが、それにしてもかなり速いと言えるだろう。

 その他のランキング選手についても、全員4秒00台を記録しており、高校生としてはかなりの好タイムである。自分で言ってしまうのもなんだが、手押しによるストップウオッチの測定でコンマ2ケタ目までを正確に測れているかは甚だ疑わしい(笑)。4秒05の大西涼太(智辯和歌山)と4秒06の脇本直人(健大高崎)を比較して「だから大西の方が速い!」なんて断言してはいけないと思っている。2人とも同程度に速いとしていい。

 その意味においては、このランキングにおいて、1位の堀口は別格、2位の小太刀緒飛(日本文理)も「聖域」入りしたという意味で特別としていいだろう。3位の逢沢崚介(関西)は、実は春のセンバツ時に3秒98のタイムを出して「聖域」入りを果たしているため、合わせ技で「安定した速さ」と評価したい。

 ただ、4位以降の4秒00台は、年によっては2〜3人しかいない場合もあり、これだけの人数いるのは多い部類である。「今年はなかなかレベルが高い甲子園だった」としていいと思う。

■右打者もなかなかよろしい

 続いて右打者のランキングは以下のとおりである。


 ランキングの人数そのものが少ないのは、これより遅い4秒40台タイムはお世辞にも「速い」とはいえず、人数も極端に増える。「普通」の領域に過ぎないから外したというわけだ。右打者は一塁ベースとの距離が遠いうえ、完全に振り切ってからスタートすると体重移動とは反対の方向に走りださねばならず出足がかなり遅れるので、タイムが出にくいという背景もある。左打者が増えるのは、それなりに理にかなっているのだ。

 そんな中で、1位の太田光(広陵)が出した4秒06というタイムに再び驚いている。これも、高校生選手を測定する中では、めったに見たことがないほど速い。今年はなにか条件が変わったのだろうか? と思うほどである。


 ちなみに、前出の堀口にしても、この大田にしても、最初は筆者の測定ミスと思い、動画を繰り返し再生して何度も測定したのだが、結果は変わらなかった。どちらもまごうことなき好タイムということである。

■好タイムを出した選手に期待大

 今年の甲子園は、ドラフトの目玉として大きく騒がれるような選手が少なく、一見地味な大会に思えたが、ストップウオッチャーとしては、なかなかの強者揃いな大会だったようである。

 ただ、ここでのタイムが良いからといって、果たして将来プロの世界で活躍できるかどうかはわからない。その他にも必要な素養というものがあるだろう。

 じゃあ、なんでこんな測定で有望選手の良し悪しを語ってるのかって? …そうだ、ヤバイじゃん! 今回上位にランクインした選手には是が非でも上の世界で活躍してもらわないと! オレのようなライターの存在意義をキープするためにも、ぜひ、活躍をお願いします!


■プロフィール
文=キビタキビオ/1971年生まれ、東京都出身。野球に関するありとあらゆる数値を測りまくる「炎のストップウオッチャー」として活動中。ライター活動の傍ら、2013年には『ザ・データマン〜スポーツの真実は数字にあり〜』(NHK-BS)に出演するなど、活躍の場を広げている。

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