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第1回『ラストイニング』『ONE OUTS』『砂の栄冠』より

「球言(たまげん)」とは、名作&傑作マンガに登場する野球格言≠フことである。野球というスポーツの真理を突いた一言、技術を磨く名言、駆け引きを制する名台詞の数々は、現実のプレイや采配にも役立ったり役立たなかったりするのだ!



《意味》
相手の意表を突いた奇襲は、1度だけでは寝た子を起こす可能性がある。自分たちの流れを作るには、もう1つ奇襲を重ね、本当の意味で相手を浮き足立たせる必要がある。

《寸評》
野村(克也)イズムが色濃く見える『ラストイニング』らしい弱者の兵法。2度の奇襲が成功したら一転、正攻法に戻すのが効果的。いつまでも奇襲を続けていては、奇襲の効果が半減してしまう。虚実ないまぜ≠ェ詭道のセオリー。


《作品》
『ラストイニング』(中原裕、神尾龍、加藤潔/小学館)第4巻より


《解説》
母校・彩珠学院の監督に就任した鳩ヶ谷圭輔は、1年間で野球部を甲子園まで導くという課題をクリアすべく、チーム改革に乗り出す。流山商工との練習試合の途中、1死一塁からの初球スチールという部員たちのアイデアを採用した鳩ヶ谷。続けてバスターが提案されると、「よし、その調子だ」と笑みを漏らす。
「いいか、奇襲ってのは二回続けるからこそ奇襲になるんだ!!」
意外な作戦を続けられた流山商工は、簡単なバント処理でもミスを重ね、茫然自失。
「いいか、これがカサにかかった攻撃ってんだ。自分達で流れを作り、敵を圧倒する!! 勝つために相手が嫌がることをやるってのはこういうことだ」
完全に主導権を握った彩珠学院は、この回に一挙5得点を挙げ、試合を決定づけた。



《意味》
一見、強力打線に思えても、思い切りのいいストライクを投げている限り、想像するような大量失点を喫することはない。むしろ逃げに回り、四死球を増やしてしまうほうが、大ケガのもとになる。

《寸評》
1つのイニングを無得点で終わるために、「走者一人までなら許されるとするなら その確率は16/27…ほぼ6割だ」というのが数字の根拠。実際の凡退率は、「100パーセント−打率」ではなく、「100パーセント−出塁率」であるため、余計な四死球を与えないことが無得点の確率を6割に近づけるカギとなる。


《作品》
『ONE OUTS』(甲斐谷忍/集英社)第16巻より

《解説》
埼京彩珠リカオンズの渡久地東亜は、大型補強によって史上最強打線を形成した千葉マリナーズに脅えるチームメイトたちに、不動の投手継投と、「ストライクのみを投げること」という2つのルールを課す。目的は、フォアボールさえ出さなければ「マリナーズと五分に渡り合えると実感」させるため。渡久地は語る。
「チーム打率 3割3分でも 裏を返せば凡打率6割7分 つまり3つに2つは凡打」
「マリナーズほどの打力のチームをもってしても理論上は──6割のイニングは無得点」
「マリナーズの恐ろしい所は その打率の高さではない その圧倒的なまでの出塁率」
相手の出塁を防ぐには、何よりもまず味方の投手にムダなボール球を投げさせないことが重要なのだった。



《意味》
打席へ入る前、動作に落ち着きのない選手は、バッテリーの配球を読まず、初球に手を出してくるタイプが多い。外角の変化球から入れば、空振りか凡ゴロに取れる確率が高く、その後の配球も有利になる。

《寸評》
「シャカシャカ」という表現は、「バット突き出して吠えたり 足場を直したり ヘルメットやたら触ったり手袋のテープ何度も直したり」する様子を指すらしい。反対が「ゆったりと構える」タイプ。こちらは「理屈抜きで気合で攻める」のが定石とのこと。


《作品》
『砂の栄冠』(三田紀房/講談社)第3巻より

《解説》
樫野高のキャプテン・七嶋裕之は、エースで四番を務めるチームの柱。翌日に秋季の県大会を控え、彼は捕手の後藤久佳に告げる。
「相手のバッター 打席に入る前にようく観察してくれ こいつはバカか・・・・利口か」
曰く、「バカ」とは「なにも考えず ブリブリ振るだけ」、「利口」とは「ようく考えて きっちり打ち返してくる」打者のこと。
「それを見極めるためにも 打席に入る前の様子を全身くまなく観察するんだ!」
女房役を頼り、張り切らせることで成長を促す。キャプテンとしての思惑も含んだ相談だった。

文=ツクイヨシヒサ/野球マンガ評論家。1975年生まれ。著書に『あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論』(飛鳥新社)、編著に『ラストイニング勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─』(小学館)など。

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