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炎のストップウオッチャー選定・プロの技ランキング

 2003年の春に当時の『野球小僧』(白夜書房)で連載を開始したので、今年で丸10年がすでに過ぎたことになる「炎のストップウオッチャー」。その間、様々なプレーに目をつけてストップウオッチで、いや、ときにはビデオのコマ送りなど、別のツールを利用して野球を“測って”きた。

 今回はその中から、プロ選手の一塁かけ抜けタイムの歴代ランキングを左右の打席別で紹介したい。対象としているのは、筆者が過去に測ったデータの中で、各選手のベストタイムを集めて時代を越える形で並べた。

 もちろん、全試合全選手の全かけ抜けを集めるなんてことは、会社組織にでもしない限り不可能であり、偏りがあることをお知り置きのうえで、ライトに楽しんでもらえたら…と思う。

※今年のドラフト指名選手の一塁かけ抜けランキングの記事はこちらになります。

★  ★  ★


▼プロかけ抜けランキング〈左打者〉

イチロー(ヤンキース) 3秒69
―――[2001年マリナーズ時代]
石川雄洋(DeNA) 3秒70
―――[2010年横浜時代]
赤田将吾(日本ハム) 3秒80
―――[2007年西武時代]

【4位タイ】青木宣親(ブリュワーズ[2008年ヤクルト時代])、本多雄一(ソフトバンク/2012年)、柴田講平(阪神/2012年)、鉄平(楽天/2012年) 3秒83
【8位】松本哲也(巨人) 3秒85 [2010年]
【9位】工藤隆人(元ロッテほか)3秒87 [2007年]
【10位】聖澤諒(楽天) 3秒88 [2012年]
【11位タイ】糸井嘉男(オリックス/2013年)、藤村大介(巨人/2012年)、赤星憲広(元阪神/2006年) 3秒89

※ランキングはベストタイムで3秒90を切った選手を対象

★1位はやはりイチロー

 形としては、素晴らしい収まり方でイチローがトップである。2001年といえば、まだ渡米したばかりの頃。無我夢中でプレーしていたせいか、シーズンを通して3秒70台を何度も出していた。その後、2010年に再度まとめて測定した際は平均で0.10秒程度遅くはなっていたが、それでも3秒80台を時折出しており、イチローのパフォーマンスの源がこの足の速さであることを表している。

★歴代を代表する選手がランクイン

 2位以下については、3秒80台を出した選手が並んでいる。石川は随分前から誌面においても「イチローに匹敵するタイムの保持者」と紹介しているが、なかなか本格的に台頭してくれないのはタマにキズだ。

 また、西武時代の6年前にはリーグトップクラスの俊足で、歴代3位に入った赤田は、残念ながら今はもうその面影はまったくない。また、糸井嘉男は、偶然にも全力疾走しているときのタイムが取れたために無事にランクインしているが、残念ながら最近はほとんどの内野ゴロで全力疾走をしていない。相変わらずの潜在能力は健在だが、普通に測ると4秒20〜30台が多いことを補足しておく。

 それ以外の選手については、一応、結果的な数字のアヤで上記の並びとなったが、人間の手押しによる測定において、小数点2ケタ目に大きな意味はない。測っておきながらこんなことを言うのもなんだが、みな同レベルと位置づけてもまったく問題ない球界トップクラスの「走り屋」たちである。

 ちょっと面白いのが9位に入った工藤。今季終了時にロッテから戦力外通告を受けたが、12球団合同トライアウトで落合博満GMの目に止まり、中日のテストを受けている。こういう選手に目をつけるあたり、さすがだと改めて感じた。


▼プロかけ抜けランキング〈右打者〉

荻野貴司(ロッテ)3秒83
―――[2010年]
奈良原浩(元西武ほか)3秒98
―――[1997年西武時代]
森本稀哲(元DeNAほか)4秒01
―――[2007年日本ハム時代]

【4位】宮本慎也(元ヤクルト) 4秒02 「1997年」
【5位タイ】西岡剛(阪神[2008年ロッテ時代])、安達了一(オリックス/2013年) 4秒03
【7位】菊池涼介(広島) 4秒09 [2013年]
【8位】松井稼頭央(楽天) 4秒10 [1997年西武時代]
【9位タイ】井端弘和(中日/2012年)、片岡治大(西武/2010年) 4秒11
【10位】松田宣浩(ソフトバンク) 4秒12 [2012年]
【11位】牧田明久(楽天) 4秒13 [2012年]

※ランキングはベストタイムで4秒20を切った選手を対象

★荻野の驚異的なタイムは前人未到もの

 燦然と輝くのは、1位の荻野がルーキーイヤーに記録した3秒83という大記録である。ダルビッシュ有(レンジャーズ)がまだ日本ハムのエースだったときに対戦した際、普通のショートゴロがセーフになったあのときのタイムである。その後、とある企画記事の関係で1997年の奈良原や宮本なども測ったが、結果は上記のとおり、まったく歯がたたない。

 若手で今回ランクインしている菊池と安達の2人には今後に期待したいが、3秒台は出たとしても果たして3秒80台が出せるだろうか? ちなみに、荻野はその後、度重なる故障を経てようやく2013年は本格的な復帰を果たしたが、今年測定した結果の最速は4秒15。このときは、アウトが確定後にスピードをやや緩めたうえでのタイムなので、終始全力であれば菊池や安達といい勝負になるだろうが、上記のタイム以外に何度も3秒80台を記録したあの「奇跡のシーズン」を自身が再現するのは厳しいようだ。

★右打者は4秒10台なら十分速い

 以降のランキングには、松井稼頭央、井端、片岡などの常連に、松田、牧田の「総合身体能力タイプ」、前回でいうところの「坂本タイプ」が名を連ねた。

 松井稼頭央は、ランクインしたタイムが15年以上前のものであるため、「今はもう速くないんでしょ?」と思われがちだが、なんのなんの! 今シーズンの左打席において、全力で走ったときは4秒00を記録しており、衰えつつはあるものの、超速→普通の俊足になった程度。年齢を考えたら十分元気だ。

 むしろ、井端や片岡らの方が、もはやランクインしたときのタイムが出せない…というか、出す気がない走りっぷりで、通常アウト時で4秒30台と普通の選手並みに成り果てている。2人とも、期せずしてこのオフに転機を迎えるが、タイム的にフィジカル、メンタルいずれにおいても先行き不安な面はある。なんとか、全力疾走できる体に戻して再び躍動してほしい。

 逆に、中軸を打つ立場にいながら、内野ゴロで常に全力疾走を怠らずにランクインを果たした松田には、今一度この場で敬意を表したい。

★その他にも今後に期待したい選手

 余談ではあるが、この原稿を書くにあたって、今シーズンの試合でかなりの数を“測りおろし”た。いずれ誌面で詳細を紹介したいとは思うが、「先行公開」的に、今後期待の選手について、ひとことコメント形式で軽く紹介して締めとしたい。

▼期待が持てる次世代の左打者
かけ抜けタイム一覧

中島卓也(日本ハム) 3秒91
いわゆる、しぶとい走り打ちタイプ
秋山翔吾(西武) 3秒93
見た目は地味だが常に全力。実際速い
金子侑司(西武) 3秒94
秋山と同様全力。右打席は4秒25前後

今浪隆博(日本ハム) 3秒96
こちらもひたむきな全力プレー系
長谷川勇也(ソフトバンク) 3秒97
安打製造機は走塁面も好姿勢
上田剛史(ヤクルト) 3秒98
速いのは誰もが認める。打で境地を
荒波翔(DeNA) 3秒99
アマ時代は小奇麗主義だったが、プロで泥臭く変貌

大島洋平(中日) 4秒03
3秒台を普通に出していた意欲を再び
天谷宗一郎(広島) 4秒05
30歳だが、まだ十分走れる。復活を!
石川貢(西武) 4秒06
周知の事実だが見た目に反して速し!
西川遥輝(日本ハム) 4秒06
結構全力時のタイム。もう一弾上を

大谷翔平(日本ハム) 4秒21
ストライドの広い全力疾走、よろし
丸佳浩(広島) 4秒39
全力時でないタイムにしてももう少し速くあれ!


ライタープロフィール
キビタキビオ…1971年生まれ、東京都出身。野球のあらゆる数値を測りまくる「炎のストップウオッチャー」として活動中。元『野球小増』編集部員で取材経験も豊富。8月には『ザ・データマン〜スポーツの真実は数字にあり〜』(NHK-BS)に出演するなど、活躍の場を広げている。

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