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高橋慶彦の「レベル」感と「二刀流」の大谷翔平(第一回)

■野球が何しろ下手だった

 この記事はスマホだけに掲載されるそうだね。すごい時代だね。

 さて、今年2月に『赤き哲学』(発売:KKベストセラーズ/発行:サンフィールド)という本を出しまして、結構反響を頂いてます。ありがとう。

 本を出す経緯? 広島の出版社さんから「本出さないか?」って話がきて、「いいですよ」って。そんな感じ。本は若い頃に出したことがあったくらいで、今までそういったオファーがきたことはなかった。

「この本には、広島カープ時代の愛が詰まっていますね!」

 と言われることがよくあるけど、僕の場合は、やっぱりどこいってもカープ。ロッテのコーチやってた時もそうだったもんね。

 まあ、あそこで15年間やったからね。成績のほとんどがカープだから。トレードで球団を離れてからもそうだし、引退後にコーチになってからも、教えているものはカープで培ったものだから。

 この本を読んでもらえれば、ずっと練習漬けだったことがわかると思うけど、なぜかといえば、基本的に野球がしたかったから。それだけ。

 だって、野球をやるのは好きだったけど、見たいと思ったことなんてないもん。

 ベンチにいて見ているだけだったら、それは野球じゃないから、頑張ってレギュラーにならないと、野球ができないでしょ?

 プロ野球かどうとかは実はあまり関係なくて、僕の場合は基本的に「野球がしたい、そのためにはどうするか?」だったね。

 だから、練習はやったよ。何しろ下手だったから。いや、本当、下手だったんだって!

 今、振り返ってみても、基礎体力や運動神経はあったけど、野球に対しては上手くはなかったよね。それ以上に、周りに上手い人がたくさんいて、それをずっと見てきたから。

 山崎隆造(元広島)なんか天才だよ。この本にも書いてあるけど、僕がバットが手から離れないくらいスイングし続けて、やっと形にしたスイッチヒッターを、ヤマは短期間で簡単にものしてしまったからね。



■球界のトップクラスの選手たちと大谷翔平の目指す「レベル」

 そうそう。天才という意味では、大谷翔平(日本ハム)が「二刀流」を目指しているのも、すごいね。ただ、二刀流というのもどう考えているのかは、今ひとつわからないところがある。

 そのあたり、大谷選手に対して、みんなどういうバッター、どういうピッチャーを夢見ているんだろう?

 高校野球のエースのような、「四番、ピッチャー」で先発し、しかも完投してしまうようなイメージ?

 プロのトップクラスのレベルなら、ピッチャーなら昔だと江夏豊さん(元阪神ほか)とか? 江夏さんはノーヒットノーランを達成したし、自分でサヨナラホームラン打ったりしている。他には、山田久志さん(元阪急)や江川卓さん(元巨人)のような強いチームのエースなのか? バッターだったら王さん(貞治/元巨人)、長嶋さん(茂雄/元巨人)とか掛布雅之さん(元阪神)とかいろいろいるじゃない?

 このくらいのクラスの成績を投手と打者の両方で出したら、まさに本物の「二刀流」が完成したと言えるけど、そこまでのレベルを本気で目指しているのか? そのあたりが、わからんよね?

 でも、ファンの人たちが考えている理想の二刀流選手のイメージというのはそういうレベルだと思うよ。投げたら江夏さん、江川さん。打ったら王さん、長嶋さん、掛布さん。……でも、それは無理だと思う。

 あるいは、そこまでは期待していないという人が現実的に抱くイメージとしては、先発ローテーションを維持して、バッターとしては3割15本くらい打つイメージなのかな?

 まぁ、そこまででも、できたら本当にすごいことだね。確かに、メジャーでもいないし。彼が、出来るか出来ないか、賭けようか? な〜んてね。

 でも、本気で練習するなら遊ぶ時間なんて全くないだろうね。きっと。まったく。

 まあ、8勝して2割5分打つくらいで立派な「二刀流」ということで、許されるのであれば、それはそれでいいんじゃないかな。ちょっと物足りないけれど。

 あとは自分がどう思うかだよ。チャレンジするのかしないのか? するなら寝る間も惜しんでがむしゃらにやるのか? そういったことも含めて、自分の人生だからさ。今のところそれは貫いているみたいだから、今後、どれだけ自分や周囲の抱いている「二刀流」に迫ることができるか? それを大いに期待しています。


 ……おっと、初回からいきなり話がそれてしまったね。
 こんな調子だけれども、次回から本格的に、僕が体験してきたプロの世界をお伝えしていきますので、お楽しみに。


高橋 慶彦(たかはし・よしひこ)
1957年生まれ、北海道芦別市出身。4歳の時にスキーを指導していた父の異動により、東京に移り住む。城西高に進学し、3年夏に甲子園出場。これがきっかけで、その秋のドラフト3位で広島に指名され、入団。4年目の1978年に110試合に出場し、ポジションを勝ち取る。その後、「赤ヘル黄金期」の1番打者として大活躍。1979年に達成した33試合連続安打は今もまだ破られることがない日本記録となっている。また、村上龍が書いた小説『走れ!!タカハシ』のモデルとなったり、発売したレコードは野球選手としては異例の売上を記録するなど全国的な人気もあった。1989年オフにトレードでロッテへ、翌1990年オフに阪神へトレードで移籍し、1992年に引退。その後、ダイエーやロッテでコーチ、2軍監督を務め、村松有人、浜名千広、西岡剛、今江敏晃などを育てる。2014年2月に『赤き哲学』を上梓した。現在はテレビ新広島で解説者を務めている。

構成=キビタキビオ/1971年生まれ、東京都出身。野球のあらゆる数値を測りまくる「炎のストップウオッチャー」として活動中。元『野球小増』編集部員で取材経験も豊富。8月には『ザ・データマン〜スポーツの真実は数字にあり〜』(NHK-BS)に出演するなど、活躍の場を広げている。ツイッター/@kibitakibio

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