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4年前のリベンジなるか!?1部をかけて争われた入れ替え戦を振り返る〜勝負を分けたものとは……

●試合を決めた意外なヒーローとは〜1部2部入れ替え戦・第1戦目

 大学野球の日本一が決まった翌日から、“名物”ともいえる東都大学リーグの入れ替え戦が神宮球場で始まった。

 東都の場合はまず、1部2部の入れ替え戦が行われ、終了翌日から3部4部、2部3部の入れ替え戦が同日に行われている。この入れ替え戦は1部〜4部関わらず神宮球場で試合をすることになっている。

 今春の1部2部入れ替え戦のカードは青山学院大(1部最下位)vs立正大(2部優勝)。

 2010年春の入れ替え戦と同じカードだが、今回は立場が逆。立正大はこの入れ替え戦に敗れて降格して以降、2部にとどまったままだ。

「最後は4年生でいきたい」

 初戦の先発は、青山学院大が福本翼(4年・大阪桐蔭高)、立正大は沼田優雅(4年・天理高)が任された。リーグ戦中、青山学院大は1戦目の先発に岡野祐一郎(2年・聖光学院高)を起用していた。だが今回は、河原井正雄監督から先発投手について相談された捕手の加藤匠馬(4年・三重高)が「最後は4年生でいきたい」と、福本を推薦したという。

 初回、青山学院大はトップバッターの遠藤康平(1年・常葉学園菊川高)がヒットで出塁。しかし続く、小林愉尚(4年・日大藤沢高)がバントを失敗。その後、失策でチャンスを広げるが無得点に終わった。

 その裏、立正大は先頭の小林諒哲(4年・青藍泰斗高)が四球で出塁すると、犠打で二塁に。その後、2死一、三塁とチャンスを広げると、三好大輝(1年・三本松高)がレフト前に落ちるタイムリーを放って先制点をたたき出す。


▲先制タイムリーを放ち、勢いをつけた三好

▲先制のホームを踏んだ小林諒

 初回は互いに先頭打者を塁に出すも、2番打者の打席で明暗が分かれた。

 その後、沼田はストライク先行のいいテンポでピッチングを続けていく。なかなか制球が定まらない福本だったが、なんとか要所は締めて、スコアボードにはゼロが並んでいった。

▲立正大エース・沼田。2部最優秀投手に輝いた

伏兵の一発で逆転!

 試合が動いたのは7回。

 青山学院大は、この回の先頭打者がヒットで出塁すると、犠打で進塁。ここで打席に入ったのは内田遼汰(2年・健大高崎高)。1ストライクからの2球目を振り抜いた打球はレフトスタンドへと消えていった。

 内田の大学初本塁打は逆転となる2ラン(入れ替え戦は参考記録)。流れは一気に青山学院大へと傾いていった。

▲逆転2ランを放った内田は笑顔でホームに還ってきた

 攻撃はまだ続く。
 8番の加藤匠が二塁打で出塁すると、続く山口雄大(3年・三重高)がプッシュバントを試みる。これが内野安打となっただけではなく、この打球を処理した二塁手が一塁へ悪送球し、加藤匠が一気に生還して追加点を奪った。

 投げては福本が中盤からは立ち直り、気迫のこもったピッチングで立正大を寄せ付けず。9回にもエラーで1点を追加した青山学院大。福本は最終回、四球とヒットでピンチを招くが、最後は併殺打で無失点。

 4−1で青山学院大が先勝した。

▲1戦目で完投勝利を収めた福本はガッツポーズ

青山学院大・福本翼
「今日は変化球主体で抑えました。初回はストレートの調子がよくないのにストレートで投球を組み立ててしまった。みんながよく守ってくれました」

青山学院大・小林愉尚
「最下位が決まった時は、『あぁ、入れ替え戦か』と沈みましたが、みんなが1つになって同じ方向を向いてやっていこう、と話しました。初回のバントは何とか気持ちで決めたかったのですが……。入れ替え戦の独特な雰囲気に緊張はしましたが、シーズンを通じて一番、チームの雰囲気はよかったです」

●青山学院大の残留か? 立正大が意地を見せるか? 運命の第2戦

 1部残留にリーチをかけた青山学院大は岡野が、後がない立正大は高橋史典(3年・修徳高)が先発のマウンドを託された。

▲2戦目の先発を任された高橋史

 先制したのは青山学院大。実にリーグ戦、プレーオフから3試合ヒットがなかった4番・安田紘規(4年・天理高)がタイムリー内野安打を放つ。

 前日はわずか1得点に抑えられた立正大は3回、2死三塁から小林諒、本間諒(4年・関東一高)の連続タイムリーで逆転に成功。実はこの2点目を巡って試合が一時中断した。

 2死二塁で本間の打球はレフトへのヒット。二塁走者の小林諒が一気に本塁を狙うが、左翼手からの好返球もあってホームでのクロスプレーはアウトのタイミングに見えた。

 しかし、球審は小林諒にホームベースを踏み直すよう指示。捕手の走塁妨害と見なされて得点が認められた。

▲本間のタイムリーで小林諒が生還

 河原井監督は、この判定に猛抗議するも異議は受け入れられず。だが、マスクを被る加藤匠が「ちゃんと切り替えられた」と言う通り、追加点は許さなかった。

 青山学院大、立正大ともにチャンスを作るも“あと一本”が出ず、また岡野、高橋史はピンチを背負いながらもホームは許さない粘り強いピッチング。その中でも、勢いは立正大にあるかのように見えた。

入れ替え戦の行方を決めた「四球」

 だが5回。2つの四球で走者を得点圏に置くと、立正大は前日も登板した平良寛太(4年・履正社高)がマウンドへ。平良はまず1人目の打者を打ち取ると、打席には久保田大智(4年・帝京高)を迎える。久保田は前の打席で凡退し、チャンスを逸していた。しかし、この打席では、2人の走者をホームに還すタイムリーを放ち、久保田も俊足を飛ばして三塁に到達。1戦目に続き、この日も逆転に成功した。

 この援護を受けた岡野は危なげない投球を続けて試合を優位に進める。そして、リードを2点に広げた青山学院大が最終回も無失点で切り抜けて連勝。残留を決めた。

▲1部残留を決めて喜びを分かち合う岡野(右)と加藤(左)

 勝負を分けたのは四球といえるだろう。岡野は最終回に、際どい投球をボールと判定されて与えた1四球のみ。一方の高橋史は4四死球、3番手で登板した沼田も2死から四球を与えて追加点を奪われている。結果的に立正大は1イニング3安打を放っても得点を奪えず、青山学院大は1安打で2点を挙げて逆転に成功している。

 勝利と1部残留に沸く青山学院大に対し、立正大は泣き崩れる選手もいた。これで2季連続、チームが入れ替わらずに1部2部入れ替え戦は終わった。

▲試合を終えてスタンドに挨拶する立正大の監督、選手たち

青山学院大・加藤匠馬
「残留はよかったけど情けない。入れ替え戦が決まってからは全員でミーティングをして、『6位という現実は変わらないから深く考えずにやろう。私生活からしっかりしよう』という話をしました。

 最後は4年生、という思いでしたが、岡野もリーグ戦からずっと頑張ってくれました。生きるか死ぬか、の戦いをしたので精神面も成長できたと思います。こういう試合を経験できたのだから得たものはあるはずなので、秋にしっかり生かしていきたいです」

※2部3部、3部4部入れ替え戦につきましては、再来週更新分にてレポートを載せる予定でおります。


■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速。ナックルボールスタジアム主催のイベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。

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