週刊野球太郎
中学、高校、プロ・・・すべての野球ファンのための情報サイト

2部降格青学大の救世主は無名で小兵の内野手!? 一般入部の苦労人・加藤浩紀が見せる野球人生の集大成

 ついに開幕した東都大学野球リーグ。「戦国東都」とも称される熾烈極まるリーグ戦は、2部リーグでも1部リーグ優勝経験のある名門大学が並び、長らく2部に低迷するとなかなか再浮上できなくなる恐ろしさも併せ持つ。

 昨秋に2部降格となった青山学院大は、前回降格時と同じく1季での1部返り咲き(2009年秋降格→2010年春昇格)を目指し、善波厚司新監督のもと厳しい練習に励んできた。


☆一般入部の苦労人

 そんな青山学院大の救世主となるかもしれない男が、身長163センチと小兵の内野手・加藤浩紀(4年)だ。これまでのリーグ戦出場はわずか1試合1打席のみ。鎌倉学園高時代も無名に近く、指定校推薦で一般入部。2年時からベンチ入りも、加藤匠馬(現中日)や猪又弘樹(現主将)に次ぐ3番手捕手という立ち位置だったため、東都大学野球ファンでも彼の名前を知る者は少ないだろう。

 だが、今年、加藤は高校時代以来となる内野手に再転向し、2番打者として活躍が期待されている。

「やっと野球ができて幸せという感じですね」

 と加藤はしみじみと語る。昨年までは練習試合を含め、対外試合で立った打席はわずか3打席。試合形式の打撃練習でいくら良い結果を出しても、出番はいっこうに回ってこなかった。

「葛藤はありましたね。何をしたら試合に出られるんだろうと」と話す加藤だが、それでも諦めなかった。

「僕は野球を始めてから、常に身長が周りより小さかったんです。だから、“チビには打てねえだろ”とか言われるのが凄く嫌で、大きい選手に負けたくないとその一心で野球をやってきました」

 だからこそ、諦めるという選択肢は無かった。試合形式の練習でも好感触は掴めていたので、全く通用しないことは無いとも思っていた。
☆野球人生の集大成を

 今季から就任した善波新監督の存在も大きい。善波監督は、コーチとして見てきた中で加藤の打力を買っていた。加藤が「内野をやらせてください」と直訴に行くと、「俺もそうしようと思っていた」と返され、「見ていてくれていたんだ」と加藤は嬉しかったという。

 また、捕手としての経験も大きく、「投手への声かけの大事さも分かったし、配球などを読めるようになってきた」と話すように、加藤はチームの中心選手の1人としてオープン戦で好調をキープした。

 卒業後の進路については「これまで全く試合に出ていないので(社会人野球からの)オファーが来るとは思っていません」と冷静に捉え、就職活動を並行させながら、野球人生の集大成となるシーズンに臨む構えだ。

「2番を打たせてもらっているので、バントやエンドランも当然しますし、ただ送るだけではない攻撃的な2番打者を目指したいです。野球人生最後のシーズンなので、がむしゃらに、必死に野球をやります」と加藤は最後の決意を語り、笑みを見せた。

 善波監督は就任してすぐのミーティングで「練習で一生懸命頑張っている奴を試合で使う」と明言したという。スポーツ推薦入部組だけでなく、加藤に代表される一般入部組も奮起し、加藤のような存在が1人また1人と現れると、青山学院大復活への前途はより明るくなることだろう。



加藤浩紀(かとう・こうき)・・・神奈川県相模原市出身。町田リトルで野球を始め、相模原イーグルスと相模原ホワイトイーグルス(現相模ボーイズ)を経て、鎌倉学園高に進学。内野手として活躍し、最高成績は1年秋の県4強。青山学院大進学後は捕手に転向したが、今年内野手に再転向した。163センチ69キロ。右投右打。


■プロフィール
写真・文=高木遊(たかぎ・ゆう)/1988年、東京都出身。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。大学野球を中心にアマチュア野球、ラグビー、ボクシングなどを取材している。高木遊の『熱闘通信(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/buaka/)』随時更新中。twitterアカウントは@ you_the_ballad (https://twitter.com/you_the_ballad)

記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします
本誌情報
雑誌最新刊 野球太郎No.32 2019ドラフト直前大特集号 好評発売中
おすすめ特集
2019ドラフト指名選手一覧
2019ドラフト特集
野球太郎ストーリーズ
野球の楽しみ方が変わる!雑誌「野球太郎」の情報サイト
週刊野球太郎会員の方はコチラ
ドコモ・ソフトバンク
ご利用の方
KDDI・auスマートパス
ご利用の方