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開幕ロースターから見る野球の国際化〈後編〉独立リーグで実感するベースボールのグローバル化

 少しずつではあるが、世界に広がりつつあるベースボール。2013WBCでのオランダの4強入り、この3月に行われた日欧野球の結果から、実力も着実に上がってきていることがうかがえる。その傾向は日米の各プロチーム所属選手にも反映されており、いろいろな国にルーツを持つ選手がMLB、NPBでプレーするようになってきた。特に、欧州の選手は、野球について多くのことを教えてくれる指導者が多く、アメリカ球界よりも雇用が安定している日本球界を目指すようになってきた、という。

 NPB12球団における2008年と2015年開幕時のメンバーを比較した先週の記事に続いて、今週は独立リーグにおける外国人選手の変遷、「野球発展途上国」から日本にやってきた選手を追っていく。

さらに多くの国から選手がやってくる独立リーグ

 ベースボールのグローバルな拡大は、新興の独立リーグに顕著に表れている。四国アイランドリーグプラスとルートインBCリーグに在籍する外国人選手の割合は12.5%とNPBより若干高く、その出身国は10カ国にわたる。



 NPBなどの上位プロリーグを目指す、「プロへの登竜門」的な性格が強い独立リーグは、プレーのレベルが低い分、野球がさほど盛んでない地域の選手にとって敷居が低い。BCリーグの石川ミリオンスターズにはタイ出身者が、四国の香川オリーブガイナーズにはミャンマー出身者が在籍している。現実的な話では、彼らがNPBとの契約を勝ち取る可能性は限りなく低いだろう。しかし、日本でのプレーを終えた後、母国で野球の伝道者としての役割を果たすに違いない。

 彼らのような「野球不毛の地」からの野球移民が発生する背景には、実は野球を通じた開発援助という、近年の途上国援助の側面でもある。香川のミャンマー人、ゾー・ゾー・ウーは、元国連職員の日本人篤志家の普及活動で野球に出会い、日本で「プロ野球選手」の夢をかなえている。

 他にも、2008年にBCリーグの福井ミラクルエレファンツに所属していたシェパード・シバンダは、日本のNGOによるアフリカ・ジンバブエへの野球普及活動の一環として日本の独立リーグに挑戦していた。

 今年も四国の高知ファイティングドッグスにブルキナファソ人の少年が練習生として在籍しているが(表には含めていない)、このような日本発の野球普及活動を通じた選手の移動は、「野球不毛の地」への野球定着にプラスに働くに違いない。

カラバイヨ、マエストリに続く選手は誰だ!?

 独立リーグの場合、球団ごとに外国人選手獲得の方針がずいぶん違う。たとえば、BCリーグの福井や武蔵ヒートベアーズ、信濃グランセローズは“純血主義”なのか、外国人選手はたった1人。それに対して、群馬ダイヤモンドペガサスは、シニアディレクターの“ラミちゃん”ことアレックス・ラミレスの影響だろうか、今シーズンは彼の母国・ベネズエラ人が5人も在籍している。石川や四国の愛媛マンダリンパイレーツも同様に5人、高知は6人もの外国人選手を擁してシーズンに臨む。

▲「ぐんま観光特使」にも就任したラミレス

 群馬で昨年、リーグ新記録の33本塁打、87打点を記録し、三冠王に輝いたカラバイヨがオリックス復帰を果たした(4月9日に1軍昇格し、本塁打を放った)ように、BCリーグには、NPB復帰を目指す外国人選手も多く集まる。さすがに御年57歳を迎えるドミニカン、フリオ・フランコ(元ロッテほか)のNPB復帰はないだろうが、彼が兼任監督を務める石川には、アメリカ人のハモンド(元オリックス)が、群馬にはベネズエラ人のロメロ(元巨人ほか)、ソト(元中日ほか)が在籍し、シーズン途中の「昇格」を狙っている。

 最後に、2008年にはいたが、今年は姿を消してしまった国を挙げたい。それは、オーストラリアだ。NPBのロースターを見ると、7年前には3人いたオーストラリア勢が今年は姿を消している。オーストラリアでは、2010年に冬季プロリーグ(オーストラリアン・ベースボールリーグ、ABL)が再開されたのだが、意外なことにその効果は、NPBに関して言えば、表れていないことになる。しかし、その目を独立リーグまで広げると、日系人選手を含め、実に6人の選手が日本球界に身を投じている。

 その中では、香川のドリュー・ネイラー、新潟のデビッド・キャンディラス、ミッチェル・デニング、石川のライアン・シールらは前回のWBC代表にも選ばれた実力者である。

 このABLでは、イタリア人選手・マエストリ(オリックス)もかつてプレーしており、日本の四国リーグ経由でNPB入り、そして1軍でも活躍するというシンデレラストーリーを現実のものにしている。彼らの中からも、シーズン途中にNPBデビューを果たすものがいるかもしれない。

 独立リーグを含む日本のプロ野球に身を投じる「ベースボール労働移民」の出身国・地域は7年前の12から18へと確実に増えている。彼ら各々の立ち位置は、日本で“スポーツセレブ”の夢をかなえたNPBの助っ人外国人選手から、野球先進国・日本での修行まで多岐にわたる。彼らの姿を追うことで、野球のグローバルな拡大を実感するのも、1つの野球の見方なのかもしれない。


■ライター・プロフィール
阿佐智(あさ・さとし)/1970年生まれ。世界放浪と野球観戦を生業とするライター。「週刊ベースボール」、「読む野球」、「スポーツナビ」などに寄稿。野球記事以外の仕事も希望しているが、なぜかお声がかからない。一発当てようと、現在出版のあてのない新刊を執筆中。ブログ「阿佐智のアサスポ・ワールドベースボール」(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041)

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