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地方大会決勝を巡礼する男《最終章》〜全国49地区踏破へ、足掛け15年でいよいよ「マジック1」!

 高校野球と旅を愛する孤高の存在。それが「スギさん」こと杉崎暢之さんだ。地方大会が行われる全国49地区のうち48地区を制し、旅もいよいよ大詰め。クライマックスを控えたスギさんに、旅を始めたきっかけと極意、そして醍醐味を聞いた。(取材・文=御手洗あつひこ)

決勝観戦の達人が苦労と魅力を語る

 高校野球の楽しみ方はファンの数だけある。杉崎さんのそれは全国49地区すべての地方大会の決勝戦を観戦すること。2000年から決勝めぐりを始めて、これまで48地区を踏破。残すところ山口県のみとなった決勝行脚のスペシャリストだが、そのきっかけはほんの思いつきだった。

「もともと旅行と野球が好きで、旅行と合わせて各地に試合を見に行っていたんですけど、たまたま2000年に4地区の決勝戦を観戦したんですね。そのときに49地区すべての決勝を見たらおもしろいんじゃないかと思ったんです」

 かくして始まった決勝行脚。だが、そのありようは毎年4〜6地区で決勝を観戦していた(2008年までの)前半と後半で大きく違ってきたという。

「最初の頃はどれだけ効率よく決勝を巡れるかを第一に考えていましたね。出発前にある程度のスケジュールは決めていましたけど、雨や再試合などで日程が変わることがあるんです。そういった場合でも対応できるように『この県がダメだったときは別の県』というふうに二の矢を用意してましたね。

 例えば2003年は岐阜で決勝を観戦していますけど、最初の予定では三重だったんです。でも、四日市についたら雨が降っていて中止。それで長良川球場に電話で確認したら、試合をやるってことだったので引き返して観戦したんです。

 でも、残り地区が少なくなると、そういう方法が使えなくなるので、後半は『今年はここに行こう』と決定してからスケジュールを立てていました。日程が延びるとアウトのときもあったんですけど、今までは予定通り試合を見ることができています。これは相当、ラッキーですね」



 順調なように見えても全国をめぐる間には様々なハプニングに直面した。

「2002年の石川大会は準決勝も見るつもりだったんですけど、米原駅(滋賀県)の手前で電車の事故があって間に合いませんでした。最近だと2011年の兵庫大会は延長15回で決着がつかずに再試合になったんです。自分の中で引き分けはカウントしないと決めていたので翌日の再試合も当然、観戦しました。

 あと、珍しいケースでは2006年の広島大会。大会のスケジュールが遅れてカープの試合(ナイター)と重なったんです。広島市民球場から尾道に会場が変更になる可能性もあったんですけど、松田オーナーの計らいで球場の使用が許可されて、朝9時半から試合開始なんてこともありましたね。その日はせっかくなんで、決勝が終わったあとに広島vs横浜を見て帰りました」

決勝旅、杉崎さんのマイルール

 決勝観戦にあたって杉崎さんには「バックネット裏で見る」、「スコアブックをつける」、「号外をもらう(出ない県もある)」、「記念大会は除外する」などいくつかのマイルールがある。

 中でもはた目に大変に思えるのが、「なるべく旅費を安くあげる」だ。行程表に当たり前のように『熊本や盛岡まで青春18きっぷで移動』と書かれているのを目にすると決勝旅の苛酷さを思い知らされる。もっとも本人は旅行&鉄道好きとあって、なるべく安くすむ移動手段を考えることも含めて楽しんでいるそうだ。ただ野球が好きというだけでは、偉業は達成できなかったような気がする。


 最後に、杉崎さんに決勝戦の魅力について教えてもらった。

「当たり前ですけど決勝まで勝ち上がった実力のあるチーム同士の対戦なんで、好ゲームが多いんですよ。しかも、気持ちもすごく入っていて最後まで絶対にあきらめないので、何が起こるかまったくわからない。もちろん思わぬ大差がつくこともあるんですけど、劇的な展開になることも多いんですね。それからドラフト候補の選手も多いので、選手を見るという楽しみもあります。試合以外の部分でも応援や、その学校の人気や地域の野球熱を感じられるのも決勝戦の魅力ですね」

 今夏、山口大会決勝を観戦すれば足掛け15年の決勝行脚が完結するが、杉崎さんは早くも次の目標を見つけていた。それは地方大会が行われている全球場の踏破。杉崎さんの高校野球旅はまだまだ終わりそうにない。

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