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2013春季東都大学リーグ入れ替え戦・第3戦目レポート!入れ替わるか入れ替わらないのか、この一戦で決まる!

 2013年春、東都大学リーグ1部2部入れ替え戦の1回戦は18-7で専修大がまず先勝。続く2回戦は拓殖大が3年生エース・佃勇典(広島商)の好投もあって雪辱。
 泣いても笑ってもこの3回戦で両校の秋への行方が決まります。


☆選手の緊張感がヒシヒシ伝わってくる3回戦!☆

 先発投手はともに1回戦と同じく専大は池田駿(新潟明訓)と拓大は尾松義生(明徳義塾)。しかし、これまでの2試合とは違う展開が待っていました。

 入れ替え戦初戦は3回途中で降板した池田、対する尾松は4回途中と先発の役割を果たせないままマウンドを後にした両投手。勝つのと負けるのとでは大きく変わるこの試合でどのようなピッチングを見せてくれるのか。

 1回表、専大は前日に負傷退場した1番の??健太(常葉学園菊川)が、初球をレフト前にはじき返して3試合連続となる出塁を果たした。この日は送りバントも成功し、2死三塁で4番・渡辺和哉(文星芸大付)に打席を回した。しかし、ここは尾松が空振り三振に仕留めてチェンジ。

 直後の拓大も、先頭の井田学(前橋育英)が初球をライト前に運んで出塁。2死二塁として、4番・高橋弘樹(拓大紅陵)に回す。この高橋、これまでの2試合で3安打だが、出塁は8度に上る。何かを持っているラッキーボーイ的な存在だ。

 しかし、高橋の打球は三塁への平凡な内野ゴロ。

「やっちまった…」と思ったが、これが敵失を誘って、井田が先制のホームを踏んだ。
 続く北條は右中間を破る当たり。一塁走者の高橋が一気に2点目のホームに還ってきた。打った北條は三塁を狙ったが、ベース前でタッチアウト。2点を先制してこの回を終えた。


▲貴重な先制点のきっかけとなった拓大1番・井田学(前橋育英)


▲初回、タイムリー二塁打を放つ拓大・北條貴之(志学館)

 先制点をもらった尾松だが、2回も先頭打者の出塁を許してしまう。続く打者を左飛に打ち取るものの、稲角航平(常葉学園橘)に四球を与えて1死一、二塁のピンチを背負う。

 打席に立つのは高校の先輩でもある河合優介(明徳義塾)。だが、河合を見逃し三振にとると、続く岩下和幸(専大松戸)もセカンドゴロに打ち取って、なんとかピンチを脱した。

▲尾松・杉原バッテリーに話をする拓大・内田俊雄監督

 拓大ベンチはこの尾松を2回で諦め、3回より福永雅之(神村学園)をマウンドへ送る。リーグ戦では主に抑えの役割を担っていた福永が、後のない3戦目に入れ替え戦初登板を果たした。

▲入れ替え戦初登板の拓大・福永雅之(神村学園)

 早い回からの登板もあった影響か、ボールを受ける杉原賢吾(明徳義塾)はその感触を「ちょっとどうかなぁ…」と思ったそうだが、三者凡退に打ち取った。

 すると試合は一気に落ち着きを見せ、池田と福永の投手戦に。

 初戦でコントロールに苦しんでいた池田の姿はもうなく、味方の好守に笑顔で拍手を送ったり、時には派手にガッツポーズを見せていた。

 イニングが進めば進むほどそのリアクションは大きくなっていた。まるで味方の反撃を呼び込もうとしているかのように、力強いピッチングを披露していた。

▲マウンドに駆け寄る河合に笑顔で応える専大先発・池田駿(新潟明訓)


▲初回以降は立ち直り、池田は鬼気迫るピッチング

 それでも福永の好投は続く。リリーフした回こそ本調子ではなかったが徐々に球も走り出し、ほとんどのアウトをフライで稼いでいた。気がつけば福永は一人のランナーも許さず、全く危なげのないピッチングで専大打線を寄せ付けない。

 拓大打線も初回以降は得点を奪えず、2-0のまま試合は最終回に。

 1番から始まる打順も、まず??を見逃し三振にきってとり、続く市原一樹(松商学園)も空振り三振。専大はここで代打に1年生の伊與田一起(明徳義塾)を起用。この試合、5人目の明徳義塾OBである。

 伊與田はしつこく粘り、ここで終わらせまいと食らいついていく。

 高校時代の同級生で現在でも伊與田と仲がいい杉原は、一球変化球を入れようと思ったが、福永の選択は全て直球だった。

 そして――しっかり捉えた打球はライトへ舞い上がり、村岡健次郎(志学館)がフェンス前でジャンプして、キャッチ。このファインプレーで拓殖大学野球部が初の1部昇格を決めた。

 創部85年目にして掴んだ悲願だった。

 涙を流しながら喜ぶ選手、満面の笑みで仲間と歴史的な瞬間を味わう選手が入り混じっていた。

▲3回からパーフェクト救援の福永は試合終了の瞬間、大きく吠える


▲一部初昇格を決めて歓喜に沸く拓大の選手たち

 一方で1季で2部へ逆戻りとなってしまった専修大。池田は8回4安打1四球、自責点は0。わずか97球の好投だった。

◆先制、ダメ押し点のきっかけとなった拓殖大・高橋弘樹


「チャンスで凡退したり、チャンスすら作れなかったので、後半になるにつれて『ヤバイな』という雰囲気になっていました。バッターは援護できなかったのですが、ピッチャーが踏ん張ってくれました。

 2戦ともに失策を犯すもこの日は無失策)すごく守りやすかったです。

 昇格して嬉しいというか、プレッシャーもありましたし、いろいろなことを思い出して…最終回は本当にヤバかったです」

◆ルーキーにして正捕手を務めた拓殖大・杉原賢吾

▲1年生ながら冷静なプレーを見せた

「自分は1年生で試合に出させてもらって、4年生が練習を手伝ってくれていたんです。最初の目標はリーグ戦出場でしたが、2部優勝をしてからは、手伝いをしてくれている4年生に1部に上がってもらいたいという思いでした。

 初戦は点差も開いたので、2試合目、3試合目と切り替えは出来ていました。

 自分は緊張もなかったので、他の選手が盛り上がっていたので『客観的に見よう。冷静でいよう』と思っていました。

 1部昇格が嬉しいことは嬉しいです。でも亜細亜大の水本(弦)や、(同じ四国の高校出身の)法兼(駿)とか、そういう同級生に早く追いつきたいです」


 拓殖大が初めての東都大学リーグ1部昇格を決めたことをお伝えし、これでこの短期連載は終了です。皆さま、ありがとうございました。

 今後も東都の熾烈な争いは続いていきます。また皆さまに何かしらのコーナーで東都の魅力をお伝えできればと思っています!


文=山田沙希子(やまだ・さきこ)/早い時期から東都大学の魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速。ナックルボールスタジアム主催のイベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。

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