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祝・東京五輪開催決定! このチャンスに野球を盛り上げないで、いつ盛り上げるか?

文=鈴木雷人

東京にオリンピックが帰ってくる! 早くも“五輪特需”も期待


 国際オリンピック委員会(IOC)は日本時間9月8日未明、アルゼンチンの首都・ブレノスアイレスで開いた総会で、2020(平成32)年の第32回夏季五輪大会の開催都市は東京に決まった。IOCロゲ会長が「TOKYO 2020」と記された紙を広げた瞬間、日本中に歓喜の声が沸き上がった。

 1964(昭和39)年以来56年ぶり、国際的スポーツの祭典が東京に帰ってくる…というニュースが駆け巡った先週の日本列島。一夜明けた9日の東京株式市場は五輪関連銘柄が大幅に値上がり。スポーツ用品メーカーのミズノやアシックスはもちろん、競技場建設や周辺地区開発が進むと予測されたゼネコンや不動産株も投資家の買いが集中。早くも“五輪特需”への期待が高まっている。

残り1競技はレスリングに決定…。その時コミッショナーは…


 そんななか、我が野球界にとっては“無念”のニュースも飛び込んできた。五輪開催国を選定したのと同時に、IOCでは2020年東京五輪の実施競技についても審議を行い、野球・ソフトボール、スカッシュも含めた3候補競技からレスリングが選ばれた。投票で49票(過半数48)を獲得したレスリングに対し、野球・ソフトボールは24票の次点で落選。

 2012年ロンドン五輪で野球・ソフトボールが除外された要因としてあげられた、米大リーグの非協力的な姿勢が影響したとみられ、米球界を揺るがした薬物問題もイメージ的にマイナス要因となったことも否めない。2008年北京以来の五輪競技復帰を目指した野球界の夢は、またしても破れてしまった。NPB加藤良三コミッショナーは1泊4日の強行日程で現地入りし、国際野球連盟(IBAF)のフラッカリ会長らと共にIOC委員たちにアピールしたが、残念な結果となってしまった。

ちょっと待った! IOC新会長が名言する野球競技復活の可能性


 「これでオリンピックで野球を見ることができるのは、早くても2024年か…」と気の遠くなる向きもあるが、ちょっと待って欲しい。実は2020年の東京五輪で、野球が復活する可能性があるという見方もあるのだ。

 今回行われたIOC総会は開催国決定と同時に、実はIOCの新会長選挙も兼ねていた。開催国決定の陰で新会長選挙の注目は低かったが、新会長に選ばれたのはトーマス・バッハ氏。2020年東京五輪で手腕を振るうことになったこの新会長は、就任決定後にさっそく注目発言をした。五輪の競技数は五輪憲章により28競技が上限となっているが、それにこだわらずに改革を進める意向があるという。

「(競技数の問題は)2020年東京五輪に影響するかどうか、迅速に判断すべき」とコメントし、参加選手数を制限すれば「多少、種目数が増えても問題ない」と断言。さらに野球・ソフトボールが落選した際の審議中には、元IOC副会長のディック・パウンド委員が「2020年に行う実施競技数(28競技)は、新任会長の下で改めて協議すべきだ」と五輪憲章の改訂を要求した。

 競技数が増えれば当然、レスリングの次点だった野球・ソフトボールが採用される可能性が非常に高いといえるだろう。次回のIOC理事会は12月に開かれる予定で、バッハ新会長のもとで実施競技だけでなく種目の見直しも進めるそうだ。2020年東京五輪で野球が競技復帰するかどうかは、長期化の様相を呈してきた。

オリンピックだけが“日本の野球”ではない!


 今回の東京開催決定のニュースに対して、あのイチローは「野球は(競技に)入っているの? 入れば良いのにね。アマチュアの人たちにとっては大きな目標になりますからね。入って欲しいですね」とコメント。五輪で野球が開催されるか否かは、野球というスポーツの国際的な普及・振興のためにも極めて重要であることは間違いない。

 そして東京五輪で野球が復活すれば、出場を目指す若き野球人たちに大きな刺激を与え、日本野球界の活性化も期待できるだろう。さらに世界に向けて、日本の国技ともいえる“野球”の素晴らしさをアピールできる格好の舞台となるはずだ。

 もし、東京五輪で野球が競技復活しなかったとしても、日本の野球人気でスポーツの祭典を盛り上げることで、(野球だけではなくスポーツ界が足並みを揃えて)東京五輪成功のためにサポートすることで、世界中のスポーツファンが東京に集まるこの千載一遇のチャンスで、大いに“日本の野球”をアピールし、野球というスポーツを知ってくれるだろう。

 東京五輪の開催日程は開会式が7月24日、閉会式が8月9日と全17日間で予定されている。

 例年であれば日本全国で甲子園大会に向けた地方大会が大詰めを迎え、東京五輪閉幕の頃に甲子園が始まる時期だ。社会人野球の都市対抗が行われ、プロ野球はシーズン真っ盛りでもある。なんとか五輪前後の期間に東京に来ている世界中のスポーツファンに“日本の野球”のよさを伝えることができるのではないだろうか。



 そのためにはプロ・アマ間の協力体制や、真夏に連日行われる地方大会の試合日程の見直しなど、変革すべき点はいろいろとあるはずだ。7年間は長いようで短い。日本の野球界はプロ・アマ問わずに結束して、対策を練るべきだろう。世界に日本の野球をアピールできる7年後の大きなチャンスを生かさない手はない。

■ライター・プロフィール
鈴木雷人(すずき・らいと)…会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。”ファン目線を大切に”をモットーに、プロアマ問わず野球を追いかけている。Twitterは@suzukiwrite

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