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【角中、又吉、入野……】四国で10年間で戦ってきた同志たちとの対戦を振り返る!

 創設以来、四国アイランドリーグplusでプレーを続け、多くの選手が夢をつかみ取りNPBへ行くのを見送ってきた梶田。彼の目に「成功者」たちはどう映ったのだろう。

 現在、ロッテの主力を張っている角中勝也は、日本の独立リーグが生んだ「最高傑作」と言っていい。リーグ2年目の2006年に、高卒で独立リーグの世界に飛び込んできた角中を梶田はこう評する。


「確かに肩は強かったけど、守備はそんなにうまい方じゃなかった。打つ方もすごいなっていう程の成績でもなかったですよ。でもね、とにかくスイングスピードが速かった。ティー(バッティング)でもなんでもボールを打ち出すと一目瞭然なんです。やっぱり、何か突出したものを持っている選手は、スカウトの目に留まりやすいのかな」

 打者で言えば、堂上隼人(香川オリーブガイナーズ→ソフトバンク)、丈武(香川→楽天)については、その飛距離に驚かされたという。独立リーガーがNPBに「上がる」ためには、総合的な好選手よりも一芸に秀でていることが、自身を振り返っても痛感しているのだろう。

 そういう点では、ワンポイントという役割もある投手は、アイランドリーグはより多くの人材を輩出している。その中では、塚本浩二(香川→ヤクルト)の印象が強いという。

「ストレートは130キロちょっとだったけど、下手からくるんで、実際にはもっと速く見えましたよ。やっぱりキレなんです。これは、実際に見た人間にしかわからないと思うんですが、同じ変化球でも落ち方が鋭いとか、ストレートでも沈まないとか。そういうことなんです」

 とはいえ、彼らも最初からその力を発揮できていたわけではない。アイランドリーグという触媒によって、彼らが真のプロ野球選手への化学反応を起こしたことは言うまでもない。

「又吉克樹(香川→中日)なんかも、そうでしたよ。最初はそんなでもなかったけど、だんだん球も速くなって、コントロールがよくなりましたね」

 それは2014年にドラフト指名を受けた投手陣も同じだという。

「入野貴大(徳島インディゴソックス→楽天5位)は、速いだけのピッチャーでしたが、このリーグにきてコントロールがつきましたね。寺田哲也(香川→ヤクルト4位)は、腕の振りと球の印象が違うんです。ゆっくりした動作からストレートがビュッ! ってくる感じ。今年はホントによくなっていましたね」

▲四国で7年プレーし、念願のプロ入りを果たした入野貴大

 その一方で、プロ注目と言われながら、ついにドラフトに届かなかった者も多数いる。

 2005年のリーグ初年度に首位打者に輝いた林真輝(元愛媛マンダリンパイレーツほか)もその一人だ。彼が、この年に記録した107安打はカラバイヨ(高知→BCリーグ・群馬→オリックス)に抜かれるまでリーグ記録だった。

「あの頃はリーグができて間もなくでしたから、アイランドリーグの認知度がなかったこともあるでしょう。いまから思うと、もったいないですね」

 ちなみに、林は中京大中京高で甲子園に出場。立命館大では、当時の関西学生リーグでシーズン最多安打記録を打ち立てたヒットメーカーだった。NPBの舞台に十分に立てる素材であったことを、同郷の梶田はわかっているだけに、この言葉には実感がこもっていた。

 リーグのシーズン最多勝記録の17勝を記録している2人……草創期の代表的投手・相原雅也も、2008年に最多奪三振と最多勝のダブルでタイトルを獲得した西川徹哉もNPBで勝負ができるはずの投手だった。ともに梶田のチームメイトである。

「テツ(西川)の場合は変化球に頼り過ぎ、という部分がありましたけど、2人ともいいピッチャーでしたよ。ただ、チャンスをつかめなかった。スカウトが来ている時に魅せられるか……そこで打てるとか、抑えられるとか。それだけですね。ここにきて努力を怠っている奴なんていませんよ。NPBに上がるためだけに来ていますから、みんな努力はしているんです」

 選手生活晩年には、外国人選手も多くなってきた。彼らの中からは、マエストリ(香川→オリックス)のようなNPBで1軍に欠かせない戦力になっているものもいる。

「外国人は、やっぱりすごい奴がいましたよ。ピッチャーはすごく球が速かったり、バッターならびっくりするくらい飛ばしたりね。バッターとしては、その飛距離はかないませんでしたけど、それだけじゃないんで、野球は」

 という梶田の表情からは、アイランドリーグで10年戦ってきた「プロ」としてのプライドがうかがえた。



 梶田宙が現役として活躍した10年で、育成選手も含めて、41人の選手がドラフトで指名された。選手から球団社長となった梶田がこれから何人の選手をNPBに排出し、高知ファイティングドッグスが、そして四国アイランドリーグplusがどんな進化をしていくか……。今後も見守っていきたい。


■ライター・プロフィール
阿佐智(あさ・さとし)/1970年生まれ。世界放浪と野球観戦を生業とするライター。「週刊ベースボール」、「読む野球」、「スポーツナビ」などに寄稿。野球記事以外の仕事も希望しているが、なぜかお声がかからない。一発当てようと、現在出版のあてのない新刊を執筆中。ブログ「阿佐智のアサスポ・ワールドベースボール」(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041)

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