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『野球のネタってずっと続けることができるんですよ』ナイツ・塙宣之さんが語る野球漫才の舞台裏とは…【第4回】

 「野球芸人」第1回トータルテンボス・藤田憲右さんに続いて登場するのは、ナイツ・塙宣之さん。

 大の巨人ファンとして知られる塙さん。ナイツのお家芸とも言える「ヤホーで調べました」の漫才ネタは、実は「野球」がヒントになっていたそうです。

 そんな塙さんに全4週に渡って、野球と漫才について語ってもらう短期連載の最終回。今回は「野球漫才の舞台裏」について。



「THE MANZAI」と「寿限無」

 「10ゲーム10ゲーム後藤の振り逃げ……」

 昨年の春にテレビで放送されたこともあって、「寿限無」を元にした野球漫才が注目されたのはありがたいですね。あれは2010年に独演会用のネタとして考えました。でも、最初からああいうのを作ろうと考えた訳じゃなく、結果的にできたネタなんですよ。

 そもそもは、新作落語をやらないか、という話が発端なんです。それで、どんな落語ができるだろうかって考えて、与太郎が「落語を調べてきたよ」、「お前、そんなことも知らなかったのかよ」という掛け合いから始まって、与太郎が「寿限無」をずっと間違えてそれを訂正する、というのを作っていったんです。

 でもそのうちに、「寿限無」って「10ゲーム」っぽいなって思っちゃって(笑)。コレ、全部野球で間違えるってできないかなと思って、そこから「五劫のすりきれ」が「後藤の振り逃げ」になり……と。そこから、落語よりも漫才にしたほうが面白いな、という風にできあがっていったんです。

 でもこの「寿限無」のせいで、一昨年の「 THE MANZAI2011」の時に、土屋と大ゲンカになりましたよ。決勝戦の一週間前くらいに、何のネタにするかの話し合いを土屋としたんです。僕は、M-1が終わって大会がリセットされてるから、ボケが多いネタがいいよと言ったんですが、アイツは「寿限無がいい」と譲らなくて。

 僕としても自分で作ったネタだから愛着があるけど、さすがにそのネタは無理、と言ったんです。なぜダメかと言うと、「THE MANZAI」の4分間じゃ絶対に収まらないんですよ。4分に収めようと思ったら、フリの部分をすごく早口にしなくちゃいけないし、でも、早口にしてしまうともうフリにならない。漫才を聞く人に「コレなんだ?」「何やるんだ?」と思わせてはじめてフリになるわけですから。だから「フリだけで5分かかっちゃう」といくら説明しても、「寿限無が面白いっていう人が多い」と珍しく土屋が折れなかったんですよ。

 「じゃあわかった、4分で無理矢理やってみようか」と言って、サンミュージックのライブでやったら案の定ビックリするくらい滑りました。それでようやく土屋も折れてくれましたね。

野球のネタはずっとできる

 「寿限無」みたいな、丸々1本野球ネタっていうのを他にもやりたいなと思って、常に考えてはいるんですけどね。難しいですねぇ。

例えば、「駅名を全部覚える」という流れで、「落合」駅から以降ずっとホームラン王になっちゃう、みたいなのを作ろうと思ったんですけど、全然うまくできなかったんですよ。「寿限無」以上のものは、なかなかできないですね。

 その反対で、予想もしなかったことで、以前考えていた野球ネタが脚光を浴びることもあります。

今回の、松井秀喜・長嶋茂雄W国民栄誉賞受賞のおかげで、また復活するネタっていうのもあるんですよ。松井のネタは2006年頃に作ったんですけど、むしろ今が旬ですからね。

 そういう風に、野球のネタってずっと続けることができるんですよ。例えばイチローが引退するときが今後くれば、その時にはまたイチローのネタができるだろうし。

 だから結局、野球ネタって「時事ネタ」なんですよね。ニュース番組を見ていても、野球ニュースって時間が長いじゃないですか。基本的に野球って毎日やってるし、140試合以上ペナントがある中で、常に野球にはニュースがある。だからネタにしやすし、わかりやすいんでしょうね。いきなり、「松井が国民栄誉賞を受賞しましたよね」と入ってから漫才を始めても不思議じゃないですから。

 これがサッカーだと、「僕、サッカーがすごく好きなんですよ」と一度前置きを言わなきゃいけないんですが、野球の場合はそこがいらないんです。野球って、やっぱり、メジャースポーツなんですよね。

オール「野球ネタ」ライブを

 でもこうして振り返ってみると、少年時代に、選手としては厳しい、ということで、データから野球にのめり込み、その流れでいま漫才師として活動しているというのは、不思議ですよね。いろんなものがつながっていくんだなぁと痛感しています。

 もし、僕らの「野球漫才」を聴きたいと思っていただけたら、ぜひ寄席に来ていただきたいですね。テレビや営業の仕事だと、やっぱり「最大公約数」を意識しなくちゃいけないので、野球漫才をやろうと思っても、いつものナイツの「言い間違いネタを見たい」と言う声の方が多いですから。

 そう考えると、オール「野球ネタ」のライブとかがあれば面白いかもしれないですね。ナイツ以外でも、「カオポイント」っていうコンビが野球ネタばっかりやっているんですよ。そういう芸人を集めた場をぜひ、野球太郎さんで企画していただければありがたいです。僕ら、絶対出ますから!



塙宣之(はなわ・のぶゆき/写真左)
1978年生まれ、千葉県出身。漫才コンビ「ナイツ」(マセキ芸能社)のボケ担当。内海桂子の弟子として寄席にも登場し、「浅草の星」と呼ばれる。2008年M-1グランプリ3位、2011年THE MANZAI準優勝。実兄は芸人のはなわ。大の巨人ファンとして知られる。

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