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《セイバーメトリクスで読み解く》DeNAのジェットコースターのような浮上と沈下の理由を探る

【この記事の読みどころ】
・オールスターまでは首位も、現在は5位に落ちたDeNAを分析!
・好調時は投手陣が試合を作り、後半もピンチを凌いだ
・センターラインの攻撃力不足。やはり、グリエルの穴は痛かった……


 筒香嘉智が主砲として才能を開花させ、先発投手陣はベテランと若手がそろって奮闘。抑えでは山?康晃というヒーローも登場し、誰もが今年のDeNAは違うと思ったものだった。

 しかし、11の貯金を作り、セ・リーグに君臨していた5月16日から3カ月。DeNAは借金7(8月13日現在)を抱える事態に陥っている。貯金数をグラフにすると、それはジェットコースターのようでもある。


 得点と失点の動きや関係性を追いかけてみると(グラフ参照)、ジェットコースターが登って、落ちていく中で起きていたことがわかる。

 「登っていく」局面では、得点が失点を押さえ込めていた。今シーズンで唯一平均得点が平均失点率を上回っている期間だった。

 盤石ではないが一定の能力のある先発投手陣が試合をつくり、打線の力でリードを奪う。そこに好調のリリーフ陣を惜しみなく注ぎ込むことで、ハイペースで勝利を積み上げることに成功していた。打線とリリーフという2つの強みを生かせていたのが貯金を築いていた時期だった。

 しかし、その後は直近10試合の平均失点率がぐんぐん上がっていく。一時は6点に届くに至った。

 貯金を築いていた時期には4点以上を記録していた平均得点も、3点〜3.5点の幅に収まるようなってしまった。平均失点率と平均得点は逆転する。

 さらにリリーフの不調が重なることで、僅差で終盤に持ち込めても試合を落とすケースも増えた。先発と打線が低迷した苦しい期間にやっと訪れた勝つチャンスを逃した結果が大型連敗だった。

 ところで、DeNAに失速を回避する方法はあったのだろうか。これを検討するなら、まずグラフで何度も吹き上がっている失点に目を向けるべきだろう。

 DeNAの失点がかさんだのは、先発、リリーフ両方のパフォーマンス低下によるもので、先発では山口俊や三浦大輔など、リリーフでは田中健二朗などが5月までの調子を維持できなかった。


 先発投手については、どちらかというと序盤に好調期間が偏ったという側面が強い。リリーフについては、貯金を積み重ねていた期間はどうしても勝ちパターンの継投が増え負荷がかかっていたと思われる。その結果がコンディションに影響したというのはありそうだ。

 だが、5月までにリリーフを出し惜しみしたか、しなかったかで、連敗ストップはともかく、以降の失速全般を回避できるだけの影響があったかといえば微妙だ。勝てる展開の試合でしっかり勝ちを拾えていた以上、どうやっても消耗するリリーフという資源の活用方法としては間違っていなかったということもできる。

 得点力を維持することは可能だったのだろうか。得点力でリーグをリードしていた時期のDeNA は、筒香のほか梶谷隆幸、ロペス、バルディリスなどが活躍。彼らの活躍は、主軸を期待されたキューバの至宝・グリエルが再来日しないことが決まった際に落胆していたファンを勇気づけ、「グリエルがいなくても十分戦えるのではないか」といった声が聞こえてくるほどだった。

 しかし、序盤は独走状態だった総得点も、現在はヤクルトに抜かれてしまっている。現在の投手陣の力を考えると、勝っていくために十分なものとは言いにくい。

 DeNAの得点力を考える際、気になるのは捕手、二塁手、遊撃手、中堅手の選手がいずれも攻撃力に欠けていることだ。これらセンターラインのポジションは、一般的に守備重視の選手が置かれる。だが、だからこそ、ここに攻撃的な選手が置ければ、他チームに差をつけられる。どのチームも強打者をそろえやすい一塁手や三塁手、左翼手などに優れた選手を抱えることよりも、得点力アップに大きな効果が期待できる。

 そのような大事なポジションに攻撃力のある選手を置けずに戦っている以上、現有戦力にこれ以上の得点力を求めるのは厳しい注文なのかもしれない。


 そうした意味で二塁を守れる強打者・グリエルはやはり必要だった。オフに再契約を目指した球団の判断は正しかったといえる。DeNAは外国人選手だけではなくドラフトでも内野手の上位指名を敢行しており、センターラインの強打者を確保しようという意思は強そうだ。このままぶれずに進むのであれば、得点力上昇に期待を持ってもよいのかもしれない。


■ライタープロフィール
秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)/1978年生まれ、東京都出身。編集者。担当書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1〜3 』(デルタ、水曜社)など。

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