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本格化した怪物・菊地雄星(西武)、最優秀防御率は堅いか。念願の投手タイトル獲得の可能性を探る

本格化した怪物・菊地雄星(西武)、最優秀防御率は堅いか。念願の投手タイトル獲得の可能性を探る

 昨季は12勝(7敗)と、ついに2ケタ勝利を挙げた菊池雄星(西武)。今季もすでに勝ち星を2年連続の2ケタ(11勝)に乗せ、昨季の成績がフロックでないことを証明した。

 「いきなりメジャー挑戦か」という高校時代のフィーバーぶりからすると、本格化まで時間がかかった感が否めないが、それでもまだ8年目の26歳。ここから一気に現役最強投手の座をつかんでもらいたい。

 そのためにも今季は、ひとつでもメジャー投手タイトルをゲットしたいところ。なかでも最優秀防御率、最多勝、奪三振王の「投手三冠」は狙える位置につけているだけに、貪欲に獲りにいってほしい。

 そこで今回は、菊池雄星の初タイトルの可能性を探ってみたい。

最優秀防御率は手中に納めたも同然!?


 まずは最優秀防御率。現時点では防御率2.06で菊池がリープトップ。2位の東浜巨(ソフトバンク)が2.51、3位の岸孝之(楽天)が2.52なので、最優秀防御率のタイトル獲得がもっとも現実味を帯びている。

 菊池は6月23日のソフトバンク戦(ヤフオク!ドーム)で自責点7、8月10日のオリックス戦(京セラドーム大阪)で自責点4と打ち込まれた。

 しかし、今季の菊池はここまで19試合に投げて、クオリティ・スタート(先発投手が6イニング以上を投げて自責点3以内に抑えること)が17回と安定。達成率は89.5%で東浜と岸を上回っている(東浜:72.2%、岸:82.4%)。ここから、いきなり調子を崩して、東浜と岸にまくられる心配は少ないと思われる。

 仮に今季の残り登板数とみられる8試合をすべて7回・自責点3(7回=現状の菊地の投球回の平均ペース)で通過したとすると、最終的に投球回は191回2/3、自責点は55点で防御率2.58となる。

 東浜と岸に遅れをとる可能性もあるが、「ある程度は打たれても大丈夫」という余裕のある菊池に分があることは明らかだ。


最多勝は獅子が目指す場所次第


 続いては最多勝だが、現状では東浜がリーグトップの12勝。菊池と則本昂大(楽天)が11勝、千賀滉大とバンデンハーク(ともにソフトバンク)が10勝で追走し、タイトル争いの行方は混沌としている。

 今季の菊池は主に木曜日を任されることが多く、このローテーションが崩れなければ前述したように残り8試合に登板することになる。

 木曜日の対戦相手の内訳を見ると楽天戦が3試合、ソフトバンク戦が2試合、ロッテ戦が2試合、日本ハム戦が1試合。すべて勝つことができれば最多勝のタイトルは間違いないだろう。

 しかし、ここできになるのが菊池とソフトバンク、楽天との相性の問題だ。

 通算0勝11敗、今季は0勝3敗とソフトバンクとの相性は絶望的に悪い。そこでソフトバンクとの残り2試合を回避しようとすると、バツグンに相性のいい楽天(通算:14勝2敗。今季:4勝0敗)との3試合も回避することにつながってしまうのだ。

 とはいえ、今季の残り試合も楽天に勝てるかというとその保証はない。加えて、菊池のタイトル争いにとって幸か不幸かチームが優勝争いに絡み始めた。首脳陣としては負けるリスクを極力減らして、勝ちたい。そうなると、苦手なソフトバンク戦を回避するため菊池の登板日を移動する線が濃厚に思える。

 ひとつでも上の順位を狙うのか。菊池の最多勝獲得に重きを置くのか。それとも二兎を追うのか。チーム方針のベクトルによってタイトル奪取の確率は大きく変わるだろう。

マッチレースの行方は……他力本願


 奪取の可能性がある3つ目のタイトルは奪三振王。今季、メジャー記録に並ぶ8試合連続2ケタ奪三振を達成した則本がダントツかと思いきや、菊池も7試合で2ケタ奪三振を記録しており158個でピタリと並んでいる。

 ここから先の争いを読み解くために必要な指標は奪三振率。則本の奪三振率11.47に対し菊池は10.48と分が悪い。菊池の投球回数が11回2/3と約1試合分多いので、奪三振率に差が生じている。これを見ると額面上の奪三振数は並んでいても、実質的には則本がリードしている状態だ。

 菊池が奪三振王になるには、当然ながら残り試合で則本以上の三振を奪うことが大前提となる。そして、則本はこの後、優勝争いをしているソフトバンク戦に重点的に起用されることが予想されるので三振のペースが落ちるだろう……と贔屓目で考えたくもなる。

 しかし、今季の則本はソフトバンク戦に3試合登板して37奪三振。奪三振率は11.1。今季通算の数字と大差がないので、他力本願的な期待はできない。

 奪三振のタイトルは、まさにライバルとのマッチレース次第ということになりそうだ。


取れるものは取る! 狙えるものは狙う!


 2015年までは、「このまま大成せずに終わってしまうのでは……」と思うことも多かったが、いい意味で裏切ってくれた菊池。キレイなお嫁さんをもらったことで責任感が強くなったのかもしれないが、西武ファンとしてもひと安心である。

 菊池が師匠と崇める石井一久(引退)はプロ5年目の1995年に初タイトルとなる最高勝率を獲得し、その後も奪三振(1998年、2000年)や最優秀防御率(2000年)のタイトルに輝いた。

 石井に遅れること3年、菊池もようやくタイトルに手が届くところまでたどり着いた。獲得できるときにしっかりと獲得し、「無冠の帝王」と言われないようになってほしい。

 ちなみに最高勝率争いは、東浜が勝率.800、則本が勝率.786、美馬学(楽天)が勝率.750で上位。菊池は勝率.688で4位となっている。今季は、挽回は苦しそうだ。

 ただ、残り試合で17勝5敗(現時点:11勝5敗)に持っていければ、石井がタイトルを手にしたときの勝率.765を上回る勝率.772を叩き出せる。「師匠越え」も可能性がある限り目指してほしい。

(成績は8月14日現在)


文=森田真悟(もりた・しんご)

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