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岩瀬仁紀の「死神の鎌」、平松政次の「カミソリシュート」、広まりゆく亜細亜ボールなど決め球列伝!

文=藤山剣

岩瀬仁紀の「死神の鎌」、平松政次の「カミソリシュート」、広まりゆく亜細亜ボールなど決め球列伝!
 『巨人の星』の大リーグボールや『ドカベン』のさとるボールなど、昭和の野球マンガでは「○○ボール」などと称される「必殺技」が定番だった。

 しかし、現実の世界でも、異名がつくような決め球は存在する。そして、漫画の世界のように打者を牛耳ってきた。いくつか紹介しよう。

死神の鎌/岩瀬仁紀


 日本人で初めて1000試合登板と400セーブを成し遂げた岩瀬仁紀(元中日)。その原動力とも言える決め球が、スリークオーターから繰り出す「死神の鎌」だ。

 その正体は、途中まではストレートと同じ軌道できながら、打者の手元で大きく変化するスライダー。

 左打者にとっては逃げていくように変化する。スイングの大きな強打者タイプの選手が、泳がされて空振りするシーンを目にした野球ファンも多いはず。

 そして、右打者には体に食い込むように曲がってくるので、それをまともに打ちにいけば、注文通りの詰まった内野ゴロとなる。さらに、アウトコースのボールは、ホームベースをかすめるようストライクゾーンへ入ってくるため、手が出ず見逃し三振に倒れてしまう打者が続出した。「死神の鎌」恐るべし。

三段ドロップ/沢村栄治


 最近では死語に近い状況ではあるが、ドロップというのは、カーブのなかでも垂直方向に大きく変化するボールを指す。最近では岸孝之(楽天)らが使っている。

 ただ、戦前の伝説の投手・沢村栄治(元巨人)のドロップは、いったん浮き上がってから急降下し、さらに落ち際でまたもう一段変化したという。それで三段ドロップという異名がつけられた。

 厳密に言えば三段変化はありえないことだが、沢村の場合は、ホップするようなストレートが160キロ以上出ていたという証言もある。それだけの豪速球がベースにあるため、ドロップの変化がより際立ったということだろう。

ヨシボール/佐藤義則


 指が短かったため、人差し指と中指で挟むフォークボールをものにすることができなかった佐藤義則(元阪急ほか)が苦肉の策で編み出した決め球は、親指と人差し指&中指で握り、抜くようにして投げる。これが「ヨシボール」だ。回転をうまく消せば、フォークボールのようにホームベース付近でストンと落ちる。

 佐藤はコーチとしてオリックス、阪神、日本ハム、楽天、ソフトバンクと渡り歩いており(現楽天投手テクニカルコーチ)、ダルビッシュ有(カブス)や武田翔太(ソフトバンク)など、各所にヨシボールの伝承者が存在する。

カミソリシュート/平松政次


 巨人戦の歴代最多勝投手は、金田正一(元国鉄ほか)の65勝で、2位は平松政次(元大洋)の51勝。しかし、通算勝利数は金田が400勝(巨人移籍前までで353勝)、平松が201勝という数字から考えれば、平松がいかに巨人キラーだったかがわかる。

 その平松の代名詞が「カミソリシュート」だ。好調時は直角に曲がったとも言われ、右打者の懐を厳しくえぐるのが特徴。それに苦しめられたのが長嶋茂雄(元巨人)で、対戦成績は181打数35安打で打率.193と手を焼いた。カミソリシュートと命名したのも、何を隠そう長嶋である。

広まりゆく亜細亜ボール


 亜細亜大出身の東浜巨(ソフトバンク)が源泉となり、九里亜蓮、薮田和樹(ともに広島)、山崎康晃(DeNA)らに伝えられた変化球。ツーシームと呼ぶ投手が多いが、一般的なツーシームとは握りが異なる。

 打者の手元で小さく変化する一般的なツーシームは、ボールの縫い目が狭くなっているあたりに人差し指と中指を置くが、落差が大きく空振りも取れる「亜細亜ボール」は、縫い目が広くなっている部分に人差し指と中指を沿わせて、挟み気味に握る。そのため、フォークに近い軌道を描くのだ。

 最近では、昨秋のドラフトでロッテに5位指名された亜細亜大出身の中村稔弥ら直系の投手だけでなく、帝京高時代に同校の先輩・山崎(当時、亜細亜大)から直接指導を受けたという清水昇(國學院大→ヤクルト1位)ら、若い世代にも継承者が出現。徐々に広まりつつある。

文=藤山剣(ふじやま・けん)

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