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山本由伸はスライダー、大竹耕太郎はインステップ、桑原謙太朗は実戦力。あの選手、ここがスゴいんです

取材・文=勝田聡

山本由伸はスライダー、大竹耕太郎はインステップ、桑原謙太朗は実戦力。あの選手、ここがスゴいんです
 今の日本プロ野球界では、野球ファンの垣根を超えて「誰もが知っている選手」が少なくなってきているように感じる。MLBまで広げると引退となってしまったがイチロー(元マリナーズ)、そして大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(カブス)くらいか。

 野球ファンなら多くの人が知っている田中将大(ヤンキース)や前田健太(ドジャース)が、お茶の間に浸透しているかと言うと決してそうではないだろう。

 さて、プロ野球に話を戻す。野球ファン以外にも知れ渡っている選手はほぼいないと言ってもいい。お茶の間で知れ渡っているのは斎藤佑樹(日本ハム)くらいだろう。

 もう少しハードルを下げてみる。野球ファン同士で贔屓チームの垣根を超え、誰しもが知っているであろう選手はどれくらい存在するのだろうか。柳田悠岐(ソフトバンク)や坂本勇人、菅野智之(ともに巨人)、山田哲人、青木宣親(ともにヤクルト)、筒香嘉智(DeNA)ら日本代表クラスは名前のみならず、プレースタイルも多くのファンは知っているはず。

 一方、贔屓チームでは重宝されているが、他球団ファンの間ではいまひとつ知名度の低い選手も多い。また名前は知られているが特徴までは知られていない選手もいる。とくにここ数年でブレイクしてきた選手たちだ。そんな「すごいけどよく知らない」何人かを取り上げ、いったい彼らの何がすごいのかを『野球太郎』編集部のカバディ西山に聞いてみた。

 投手編となる今回(前編)は、12球団から1人ずつピックアップ。ここ数年で頭角を現してきた以下の投手たちだ。

■「投手編」で取り上げる投手
広島:九里亜蓮
ヤクルト:梅野雄吾
巨人:今村信貴
DeNA:砂田毅樹
中日:笠原祥太郎
阪神:桑原謙太朗
西武:平井克典
ソフトバンク:大竹耕太郎
日本ハム:石川直也
オリックス:山本由伸
ロッテ:有吉優樹
楽天:森原康平

山本由伸はスライダー、ストレートともOK。笠原祥太郎は大学時代から縦変化で勝負


──事前に12人の選手をリストアップさせてもらったのですが、彼らをどう見られていますか?

カバディ西山:この12人をいくつかのタイプに分類してみました。そのなかでまずはスライダー系からいきますね。

──スライダー系に分類されたのは誰でしょうか。

カバディ西山:山本由伸(オリックス)、桑原謙太朗(阪神)、平井克典(西武)の3人です。

──なるほど。山本は先発に再転向して好調ですね。その山本のスライダーをどう見られていますか?

カバディ西山:山本はカットボール系の球、落ちる球、曲がりの大きい球と3種類ほどスライダー系の球を投げているように見えます。桑原のスライダーも近いタイプですね。高速スライダーが代名詞でもあった伊藤智仁(元ヤクルト)の球とは違います。

──たしかに山本は映像で見ても、スライダーの変化の仕方は、スピード、変化量の違いがあるように見えますね。桑原はどうでしょう。

カバディ西山:桑原は手首の使い方が絶妙。ストレートを投げるような感覚で、手首の角度を変えながら投げているんじゃないでしょうか。ほかの投手ではなかなかできないことです。バッターも「アレ?」という感じで空振りしたり、打ち取られたり、不思議な反応をしてアウトになる印象があります。

──ちなみに桑原は30代に入ってからの開花です。

カバディ西山:認めて、使ってくれる人がいると花開くタイプというところでしょうか。ブルペンだと凄さが伝わりにくい投手で、使ってみて初めてよさがわかるタイプだと思います。試合に出してみたら思いのほか打たれないと。そういう意味で桑原にとっては、登板機会に恵まれた阪神の環境が適していたのでしょう。

──他にはどのように分類されたのでしょうか。

カバディ西山:フォーク系として九里亜蓮(広島)、石川直也(日本ハム)、今村信貴(巨人)を分類しました。九里の決め球は厳密にはツーシームですが、指を開いて投げるツーシームなので、ここではフォーク系として取り上げました。同じく落ちる系の球としてチェンジアップが凄いのが笠原祥太郎(中日)です。

──笠原は開幕投手にも抜擢されましたね。

カバディ西山:笠原は上から投げ下ろすフォームで、ストレートの回転軸が真横に近く、きれいな縦回転なんですね。それによって伸びがあるストレートを投げられる。だからこそチェンジアップが生きてくるんです。

──今年でプロ入り3年目ですが、大学時代もチェンジアップで勝負していたんですか?

カバディ西山:新潟医療福祉大の頃から縦の変化では勝負していました。でも、当時はチェンジアップではなく、縦のスライダーでしたね。

──では、ほかにストレートがすごい投手はどうでしょう?

カバディ西山:梅野雄吾(ヤクルト)、森原康平(楽天)、そしてスライダーでも名前をあげた山本ですね。

──山本はストレートもすごい?

カバディ西山:試合後半でも球速が落ちないストレートはやはりすごいです。昨シーズンのブレイクがフロックでないことを証明しています。それと、先発になってからカーブを使うになり、より緩急を生かせるようになりました。また、このカーブが一度浮き上がってから落ちるように見えるのか、相手バッターは顎を上げて、反応してしまうのが見られます。この反応をさせられれば、バッターにとってはカーブも厄介な球種になるのではないでしょうか。

──山本は凄さ満載ですね(笑)。同学年の梅野、そしてドラフト同期の森原はどうでしょう?

カバディ西山:梅野は伸びがあります。森原は球速はあるのにゴロ率が高いですね。いわゆる“真っタレ(垂れるストレート)”なんですが、実際のタレ具合とバッターが予測するイメージとの間にギャップがあり、ゴロに打ち取っている感じです。予想通りのタレ具合だと打たれてしまいますから。

 スライダー、ストレートの両方で名前が挙がるとからも山本の凄さは伝わってくる。また、笠原が球種は違えど「大学時代から縦変化で勝負していた」ということを把握しているのは、ドラフトに強い『野球太郎』編集部ならではの情報だろう。

インステップに凄さがある大竹耕太郎


 ここまでは球種での分類だったが、カバディ西山はほかの分類もしていた。

──球種ではない分類もあるとか?

カバディ西山:フォームに特徴があって抑えているのは大竹耕太郎(ソフトバンク)、砂田毅樹(DeNA)。ですね。2人とも球速が出ているわけではないのですが、打たれない。

──同じ左投手でも菊池雄星(マリナーズ)や松井裕樹(楽天)のようなスピードタイプではないですよね。

カバディ西山:それでも打たれないのはインステップ気味のフォームのおかげだと思います。とくに大竹は球の出どころの見えにくさもありますが、インステップがカギ。実は早稲田大3年のときに自らインステップ気味のフォームを変えようとしたんですけど、打たれてしまい故障もしました。そこでフォームを元に戻して、やや復調。育成でドラフトにかかり、そのフォームをプロでも変えてない決断がよかったんだと思います。

──大竹は投球センスがいいとも評価されていますが、少し見ただけではよさがわかりにくそうな感じがあります。

カバディ西山:先程述べた桑原と同じように、大竹もブルペンで凄さがわかるタイプではありません。使ってみて初めてよさがわかるタイプだと思いますね。

──最後まで名前が残っている有吉優樹(ロッテ)はどうでしょう。

カバディ西山:実は……有吉についてはなにがすごいかよくわかりません(笑)。強いて言うならコマンド力が高く、相手バッターの左右関係なく内外角使えることでしょうか。社会人時代からコントロールはよかったです。

──ほかにも気になる投手いますか?

カバディ西山:高卒3年目のアドゥワ誠(広島)でしょうか。森原と同じ“真っタレ”系で空振りを取らずにゴロを打たせてアウトを取ってます。長身でハーフという見た目からすると、空振りを奪う本格派に見えるのですが……。松山聖陵高時代から上手さを感じる投手で、見た目とのギャップが凄いですね(笑)。

 昨シーズン、プロ1年目で育成からスピード出世で這い上がってきた大竹に関しても、有吉に関してもアマチュア時代から追い続けている『野球太郎』編集だからこそ、ストロングポイントがわかるのだろう。

 贔屓チームの対戦相手に名前を耳にする気になる選手がいた。でも、なにがすごいのかいまいちよくわからない。そんな選手は少なくないはずだ。そういった選手を少しずつ知っていくのも野球の楽しみ方のひとつ。今回紹介した12人の投手について、少しでもすごさが伝われば幸いだ。来週は打者編をお送りする。

取材・文=勝田聡(かつた・さとし)

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