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【プロ野球必殺技列伝】川藤幸三、高井保弘、宮川孝雄。今年は特に重要? 代打の「必殺仕事人」たち

文=落合初春

【プロ野球必殺技列伝】川藤幸三、高井保弘、宮川孝雄。今年は特に重要? 代打の「必殺仕事人」たち
 プロ野球選手の必殺技にスポットライトを当てる本連載。今年は新型コロナウイルスの影響で開幕が遅れており、開催されたとしても試合数が大幅に減るシーズンになりそうだ。

 そうなると1試合の勝敗のウエートが変わってくる。早め早めの継投で1勝をもぎ取りにいくケースも増えてくるはずだ。そこで登場するのは、代打の切り札たちである。

 2019年はやや代打男に欠ける印象もあったプロ野球界。今回、レジェンド「代打職人」の必殺技を一気に紹介したい。

伝説の代打は当たり屋!?


 代打起用778回の日本記録を持つレジェンドは宮川孝雄だ。1960年から1974年にかけて広島に在籍し、歴代トップの代打通算186安打の大記録を樹立している。

 1963年から1967年にかけては、5年連続代打率3割超を記録し、1972年には代打率.404(52打数21安打)をマークした「代打の神様」である。

 すさまじい打撃センスを持ちながら、腰や膝を痛めていたため、9回を守り切ることが難しかった。それでも15年間、プロの世界でやっていけたのは、代打の準備を怠らなかったからだ。

 1000回の素振りが日課。合気道や古武術で集中力を鍛え、出番に備えた。のちの代打屋たちも同じようなエピソードが残っているが、元祖といえるのは宮川だろう。

 ズバ抜けた集中力だけではなく、宮川にはもうひとつの武器があった。それは「死球」である。代打という役割ながら、1966年と1967年にはリーグトップの8死球を記録しており、「当たり屋」としても有名だった。

 腰をひねって避けたように見せながら、肩やヒジを残すテクニックを駆使し、際どい内角をことごとく出塁に結びつけたのだ。こうなると相手投手は内角を攻めきれない。甘い球を呼び込むための必殺技だったのだ。

世界の代打本塁打王はクセ盗みの名人


 代打本塁打27本。日本のみならず、世界記録を残した伝説の代打職人が高井保弘(元阪急)である。173センチ90キロ、愛称はブーちゃん。見た目は豪放なパワーヒッターだったが、実は一振りにかけた研究の鬼だったことがよく知られている。

 1軍に定着したのは6年目の1972年。当時、阪急に選手兼コーチとして在籍していたのが、のちに「ドクター・ベースボール」と呼ばれるダリル・スペンサーだった。

 ベンチで常に相手投手を観察し、メモを取るスペンサーの姿勢に高井は感銘を受け、事実上の弟子入り。クセの盗み方を知ったことで27歳の崖っぷちのバットマンは一気に開花。守備面の問題でレギュラーとはいかなかったが、それが代打の大記録を打ち立てる要因になった。

 そこには執念すらあった。ときには変装し、他球団の試合をバックネット裏で視察することも。日本シリーズに備え、セ・リーグの投手も研究していたという。

「ベンツは金で買えても、俺のノートは金では買えん」

 他球団はおろか、チームメートにも秘密。秘伝のタレのようにグツグツと煮込み、継ぎ足してきたレシピで、遅咲きながら代打の神様に登り詰めた。

 そして1974年のオールスター第1戦。高井はオールスター史上初の代打逆転本塁打をかっ飛ばし、それが指名打者制(DH制)導入の呼び水になったことでも知られている。

 おまけに体とは裏腹にバントの名手でもあった。19回のバント企図はすべて成功。秘技中の秘技も持ち合わせていた。

最後の一振りは必ずスタンドに放り込むんや


 通算211安打で19年間、プロの世界を生き抜いた男。代打屋らしい代打といえば、やはり阪神の野次将軍・川藤幸三だろう。

 先述の2人に比べると「記録」という面では劣るが、やはり浪花節で鳴らした男だけあって、その「代打哲学」には深みがある。

 特に深いのは練習面。球場でモーニングコーヒーを飲むほどの早出もさることながら、心がけていたのは最後の一振りだ。通算16本塁打の川藤だが、フリーバッティングの最後は必ずスタンドに放り込む。これによって相手に「振れている」印象を刷り込んでいたという。

 また、代打出場時はなるべく初球をスイングすることも信条だった。

「ベンチとは感覚が違うんや」

 代打一筋の男の言葉には真実味がある。

文=落合初春(おちあい・もとはる)

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