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高卒でプロ入りする逸材たちよ、ドラフトのジンクスや呪いを乗り越えろ!

【この記事のよみどころ】
・ドラフト会議後に囁かれるジンクスや呪いについて検証
・甲子園優勝投手は大成しない?は本当か
・高卒野手が1年目から活躍するのは難しい?


 MLBではシカゴ・カブスが70年目の「ヤギの呪い」に遭遇。またもワールドシリーズ出場が叶わなかった。データや科学的分析が進むプロ野球の世界でも、いまだに不思議と「呪い」や「ジンクス」「法則」としか呼べないような事情は意外と多い。

 そこで今回はドラフト会議直後ということもあり、新人選手にまつわる「法則」、ファン界隈で噂されている「ジンクス」を集めてみた。プレーする前から縁起でもない言葉が並ぶかもしれないが、それらを打ち破って活躍する選手の登場を期待したい、という気持ちで読んでいただければ幸いだ。


「夏の甲子園優勝投手」はプロで大成しない


 新人選手の「ジンクス」「呪い」と聞いて真っ先に思い浮かぶのがこの「夏の甲子園優勝投手」に関してではないだろうか。といってもこの言説は「大成の基準」をどこに置くかで見え方が大きく変わってくる。

 ドラフト制度が始まった1965年から2015年まで、夏の優勝投手はちょうど50名(※桑田真澄が2回達成。のべ人数は51人)。うち、プロに進んだのは、ほぼ半数の24人。ただ、愛甲猛や金村義明、堂林翔太などの野手転向組も7人いるため、実質は17人となる。こう見ると、そもそもの絶対数が少ないことがよくわかる。優勝投手は毎年増えるのに、プロで活躍した投手があまり思い浮かばない、というイメージがまずここに起因しているはずだ。

 次にこの17名の投手たちの「結果」を見ていこう。17名の中で、通算最多勝は桑田真澄(元巨人、ほか)の173勝。次いで松坂大輔(西武ほか)の164勝(※日米通算。NPBでは108勝)。3位が田中将大(楽天ほか)の124勝(※日米通算。NPBでは99勝)。4位が野村弘樹(元大洋)の101勝となる。

 名球会入りの条件である「通算200勝」を達成した投手はゼロ。このことが「夏の甲子園優勝投手はプロで大成しない」というイメージの2つめの理由ではないだろうか。「夏の全国制覇」という結果とインパクトの大きさからすると、物足りないファンが多いのかもしれない。

 一方で、17人中4人が100勝以上。しかも藤浪晋太郎や高橋光成など、まだキャリアの浅い選手も多いことを考えると、むしろ高い確率で成功をおさめている、という見方もできるはずだ。また、藤浪しかり、高橋光成しかり、彼らは甲子園に出ることが最終目標ではなく、その先も見据えながらプレーしていた意識の高い球児だった。高校時代の投げ過ぎ、酷使によるダメージなどを心配する必要もないだろう。

 ここでようやく、今年の「夏の甲子園優勝投手」、中日1位指名の小笠原慎之介(東海大相模高)の話に移りたい。ドラフト前には「目標とするプロ野球選手はいない。自分が目標とされる日本一の投手になりたい」という強気のコメントを残していたのが印象的。また、高校入学時はむしろ同期の吉田凌(オリックス5位)の方が評価は高く、そこから一歩ずつ階段をのぼり、最後の1年で大きく成長を遂げた“意識の高さ”は折り紙付きだ。

 懸念点があるとすれば、左腕投手で活躍した元優勝投手が野村弘樹の事例しかないことか。正田樹も日本ハムでの3年目に新人王を獲得しているが、ほぼこれがキャリアハイ。現在は独立リーグ所属に甘んじている。だからこそ、ここで小笠原が成功をおさめることができれば、のちに続く左腕投手たちの新たな道標となるはずだ。

高校生野手は即戦力では難しい


 「甲子園優勝投手」以上に活躍が難しいのが「高卒野手」の選手たちだ。ドラフト制度開始以降、新人王を獲得した高卒選手は13人。ただ、野手に限れば清原和博(86年・西武)、立浪和義(88年・中日)、金子誠(96年・日本ハム)、小関竜也(98年・西武)のたった4人しかいない。また、金子は入団3年目、小関は入団4年目と考えると、高卒でそのまま通用した、とは言いにくい。つまり、高卒野手で「即戦力」となった事例は、過去に清原と立浪のたった2人しかいないのだ。

 なぜ、高卒野手は即戦力での活躍が難しいのか。力の差、といってしまえばそれまでだが、一番の違いは「毎日試合できる体力があるかどうか」という点だろう。投手であれば試合間隔を置きながらでも新人王レースに残れる登板数を確保することはできる。だが野手の場合、常時出場できるレギュラークラスでないかぎり、新人王に選ばれることは難しい。そして、この「常時出場する」ことが何よりも難しいことを、以前、当事者である立浪氏本人が『野球太郎』のインタビューで答えている。

《僕自身は、プロ入り1年目から開幕スタメンでショートを任せていただきました。でも実は、ショートの守備そのものに関しては高校からプロに入ってもそれほどギャップを感じたことはありませんでした。むしろ、プロとアマチュアの差を一番感じだのは「試合の数」ですね。毎日試合があるというのが一番こたえました。アマチュアはそんなに試合をしませんから》(『週刊野球太郎』2014年6月記事より)

 さて、今年は高校生野手で、楽天のオコエ瑠偉(関東一高)、ロッテの平沢大河(仙台育英)と、2名のドラフト1位選手が誕生した。

 ともに「即戦力として働きたい」という意識の強いふたりがどんな勇姿を見せてくれるのか? 平沢は伊東勤監督自身が「立浪に近い」という評価を与えているのが興味深い。立浪の1年目の成績は110試合出場で打率.223、4本塁打、18打点、22盗塁。まずはこの数字がひとつの評価軸になるだろう。


 一方のオコエの場合、外野手で1年目から「即戦力」で活躍した高卒選手の事例自体がほぼないため比較が難しい。強いてあげれば2011年のオリックス・駿太(30試合出場)、今年の日本ハム・浅間大基(46試合出場)を超えなければ、「ビックマウス」には不釣り合いだろう。

 1年後、我々は新たな歴史を目撃できているのかどうか、大いに期待したい。


文=オグマナオト(おぐま・なおと)

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