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セイバーメトリクスでCSを分析!セの1stステージはここを見ろ!

 セパ両リーグともに今週末の11日にクライマックスシリーズファーストステージが開幕する。いろいろな分析方法がある中、『週刊野球太郎』はセイバーメトリクスに注目! OPSやQSと、一般ファンにも浸透しつつあるデータを統計学的見地から客観的に選手の評価や戦略を考える分析手法を用いて、クライマックスシリーズ出場チームの「傾向と対策」を解説していく。


■阪神
75勝68敗1分 .524

平均得点 4.16点(4.22点)
[出塁]出塁率 .335(.329)
[長打]ISO.124(.122)

平均失点 4.26点(4.29点)
[投球]FIP 3.37(3.89)
[守備]DER .672(.680)

※成績は10月5日現在のもの
※( )内はリーグ平均
※ISO(Isolated Power):長打率−打率
※FIP(Fielding Independent Pitching):三振、四球、本塁打で算出する投手の基礎能力を計る指標。低いほど良い

※DER(Defense Efficiency Ratio):グラウンドに飛んだ打球を野手がアウトにした割合。高いほど良い

・FIPとDERの計算方法は最後に掲載しています。

 阪神は得点失点ともにリーグ平均レベルでシーズンを終えた。内容はバランスを欠いており、得点については、出塁率は平均以上でありながら、長打力に欠けた。失点については、三振を奪う支配的な投球を見せる投手を擁しながら、守備のサポートに足りない部分があった。

 打線を支えたのはマートン、ゴメス、鳥谷敬。出塁、長打双方で貢献を見せた。上本博紀は自身最多の600打席に立ち、3人に次ぐ働きだった。しかし、貢献の大きさではその次の集団となる大和、今成亮太、福留孝介らの数字が伸びず、得点力も平均レベルに留まった。

 今成、新井良太、西岡剛らコンディションを取り戻そうとしている最中の選手が多く、戦力の現状は読みにくい。CSではレギュラーシーズン通算レベルである「1試合4点強」の維持が目標か。

 失点は1試合当たり4.26点だった。この数字は平均レベルだが、プラス要素とマイナス要素が相殺しあっての数字だと読み取れる。

 プラス要素は、主力先発投手であるメッセンジャー、藤浪晋太郎、能見篤史、岩田稔の三振を奪う能力と、それには劣るがやはり好値の四球割合。マイナス要素は「インプレー打球の処理割合(DER)」から推測される、守備力の低さ。また投手がリスクの高い打球(フライなど)を打たせていた可能性もあり、それもマイナス要因だ。

 阪神の守備は厳しい状態にあったようで、攻撃で貢献を見せた一塁手のゴメス、遊撃手の鳥谷、左翼手のマートンが、そろって守備範囲などに問題があった可能性が指摘されている。鳥谷は序盤のケガの影響が長引いたのかもしれない。

 攻撃優先でオーダーを組まざる得ない阪神の守備力が向上するとは考えにくい。阪神がレギュラーシーズンよりも失点を減らすとすれば、ブルペンの改善か。シーズン終盤に戦列復帰した松田遼馬などが力を取り戻していれば、効果的な活躍をする可能性もある。

 短期決戦では、三振を奪える支配力を備えた投手陣の存在は大きく、試合のある程度の計算を可能にする。その有利を生かすコンスタントな攻撃で試合をリードできるかが、阪神のポストシーズンを左右しそうだ。


■広島
74勝67敗2分 .525

平均得点 4.53点(4.22点)
[出塁]出塁率 .338(.329)
[長打]ISO.148(.122)

平均失点 4.24点(4.29点)
[投球]FIP 3.90(3.89)
[守備]DER .682(.680)

 得失点差では優勝した巨人と同レベルで、内容的にはセ・リーグトップレベルだった。差の拡大をリードしたのは得点で、出塁と長打が絡み合い、効果的に得点を生み出した。

 貢献の大きさでは最大なのは丸佳浩。シュアな打撃、選球眼、パワー全てがそろっており、チームの核といえる存在だった。これに並ぶのが長打力に寄った貢献を見せたエルドレッドと、年間通じて四球をほとんど選ばず積極的に打っていき、単打と二塁打による貢献が光った菊池涼介。

 そのほかにもシーズン途中にレギュラーをつかんだルーキーの田中広輔、ベテランの梵英心、キラ、ロサリオなどが出塁、長打ともに平均以上の値をキープし支えた。打席数は少ないが、捕手ながらよく打った會澤翼もチームの得点力のベースを上げていた。他にも、少ない出場ながら好成績を残した野手はたくさんいて、多くの選手が入れ替わりで貢献を果たしていた。

 ディフェンスについては「平均をやや上回る守備」と「四球を与えない投手陣」という組み合わせ。先発陣で最も三振を奪っている前田健太は、対戦打者の20%を超える高い割合の三振奪取率だが、大瀬良大地、バリントンなどは、三振は平均か平均より低い割合でしか奪えていない。その代わり四球の割合が低く、これが強みになっている。

 守備に関しても、まずまずの値が出ている。二塁の菊池と遊撃の田中などは投手が打たせた打球をうまく処理し効果的にアウトにつなげていた可能性がある。

 CSを占う上では、かなりいるケガ人の回復状況が不透明で難しい。投手ではバリントン、中継ぎの一岡竜司、野手では會澤、田中など、影響力のある選手がどの程度のパフォーマンスを発揮できるかで、広島の戦いぶりは一変する可能性がある。ブルペンの疲労も気になるところだ。

 広島の得点を奪う力が確かなものであることはシーズンを通して証明された。少ない試合で再度それを見せられるかには、彼らの能力とは別の要素−−巡り合わせなども影響する。選手がどれぐらい割り切って試合に臨めるかがカギを握りそうだ。
(成績は10月5日現在のもの)



 以上の分析からCSファーストステージの観戦ポイントはこれだ!

「先発投手を打ち込み、打ち勝てるのはどちらだ!?」

 特に鍵を握りそうな選手は、阪神では、繰り返しになるが先発投手。三振が奪え、失点が計算できる先発陣が破綻しなければ、勝機は見えてくる。

 一方、広島は、どの選手、というよりもチーム全体のコンディションがポイントとなる。シーズン後半でケガした選手は復帰できるのか、疲れが見えた選手は力を発揮できる状態にあるのか。監督の采配による部分も出てきてしまうが、出場した選手が、シーズン通りの活躍ができれば、優位に戦える。


※ISO(Isolated Power):長打率−打率
※FIP(Fielding Independent Pitching):三振、四球、本塁打で算出する投手の基礎能力を計る指標。低いほど良い
FIPを算出する式=[(四死球−故意四球)×3+本塁打×13−三振×2]÷投球回+リーグごとの補正値
・リーグごとの補正値=(防御率−[(四死球−故意四球)×3+本塁打×13−三振×2]÷投球回)……リーグ全体の数字で計算する

※DER(Defense Efficiency Ratio):グラウンドに飛んだ打球を野手がアウトにした割合。高いほど良い
DERを算出する式=(打席−安打−四球−死球−三振−失策出塁)÷(打席−本塁打−四球−死球−三振)
・失策出塁は全体の失策数を近似値として使用


■ライタープロフィール 秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)/1978年生まれ、東京都出身。編集者。担当書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1〜3 』(デルタ、水曜社)など。

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