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プロ&メジャー・アマチュア野球10大ニュース

 2012年もいろいろありました。そして遂に年末、松井秀喜選手の引退の報が飛び込んできました。ついにこの時が来てしまいましたね。今は静かに彼の功績をたたえるとともに、胸に残る数々のシーンを思い出しながら感謝したいと思います。

 さて、こちらのコーナーでは、2012年のプロ(メジャーを含む)・アマ、それぞれのトピックスをランキング形式で振り返ります。
※この記事は「今週のみどころ」のバックナンバーを再構成したものです。

『2012年10大ニュース【プロ野球・メジャー編】』

1位 ダルビッシュ有、MLBデビュー
 NPBで167試合に投げて93勝、防御率は1.99。現代の投手で、伝説級のプロ野球選手たちの記録に迫る可能性を秘めた唯一といっていい日本のエース・ダルビッシュ有。その渡米が、2012年最大のニュースでした。
 昨年の今頃、5170万ドル(約40億円)を投じ交渉権を獲得したレンジャーズと6年5600万ドル+出来高払い400万ドル(約46億円)で契約したダルビッシュは、アメリカでもトップレベルの注目を浴びながらスプリングトレーニング期間を過ごし、現地4月9日のマリナーズ戦でメジャーデビュー。5失点しましたが強力打線の援護で初勝利を挙げました。制球が定まらないのは「メジャーの公認球に慣れていないのでは」という理由が思い当たりましたが、外野まで軽々ボールを運ばれていたことには現実を突きつけられた思いも。いい当たりをされること自体がまれだった日本でのピッチングを見慣れていたこともあり、大きな当たりを何度も打たれるダルビッシュの姿は少々ショックだったファンも多いのでは?
 その後も基本的には日本のような投球はできないままシーズンは進んでいきました。この結果に誰より面食らっていたのはダルビッシュだったはずですが、メディアの前では前向きな言葉を残し、Twitterでぶつけられる罵詈雑言にも、ジョークを交えなが斬り捨て続けるメンタルはさすがでした。すると、夏から秋にかけては環境にもフィットし、コントロールは向上。四球が減り三振が増えていきました。191回3分の1を投げ16勝9敗、防御率3.90。苦心の投球を続けながらも先発の役目を守り一定の結果を残しました。日本のような投球ができなかったのは残念でしたが、その状況の中でアジャストするための「手立て」がある懐の深さには、やはり天才? という印象も受けました。

2位 イチローが名門ヤンキース電撃移籍

 昨シーズンで年間200本安打の連続記録が途絶え、今年も調子が上がらないままシーズンを送っていたイチローが迎えた、人生の転機とも言える移籍も印象的でした。
 イチローのヤンキースへの交換トレードが発表されたのは7月23日のこと。記者会見でイチローは「20代前半の選手が多いこのチームに来年以降、僕がいるべきではないのではないか」「僕自身も環境を変えて、刺激を求めたいという強い思いが芽生えてきた」と涙を浮かべながら話しました。この時にはイチローがヤンキースでポジションをつかむのはむずかしいように思われ、ビッグネームの悲壮感漂う退団会見にも映りました。
 ところが、なじみのある背番号51番を固辞して31番を背負い、さらには下位打線での出場ながら「ヤンキースのイチロー」は生まれ変わったかのようなプレーを見せました。67試合に出場し227打数73安打、打率は.322とかつての輝きを取り戻し、久々に出場したプレーオフでも“らしい”プレーを連発。ニューヨークのファンの支持を完全に得ることに。当初は今年限りと思われていた契約も延長に成功。新たに2年契約を結び、イチローがまだ経験していないワールドシリーズ制覇を、名門球団の一員として目指します。

3位 稲葉篤紀、宮本慎也、小久保裕紀――3選手が2000本安打達成

 今年は2000本安打を3選手が達成しました。日本ハムの稲葉篤紀は4月28日(楽天戦)にて達成。ヤクルトの宮本慎也は5月4日(広島戦)に41歳5ヵ月の史上最年長での達成。ソフトバンクの小久保裕紀は残り1本の1999本を放ちながら5月25日に腰の痛みで登録抹消。1ヵ月ほど調整し復帰した6月24日に達成しました。3選手はいずれも今シーズン終了時点で40歳の大台に乗っている選手。まず何よりも試合に出場する努力を、実直に続けたことにより成し遂げられた大記録でした。


4位 大物選手が次々に引退
 90年代から00年代の球界をリードしてきた選手の引退が続いた年でもありました。8月14日に小久保裕紀(ソフトバンク)が、27日に石井琢朗(広島)が今シーズン限りでの引退を表明。8月31日にはBCリーグでプレイングマネジャーを務めていた高津臣吾(新潟)も引退表明。9月12日には金本知憲が、28日には城島健司(ともに阪神)もユニフォームを脱ぐ決断をしました。
 そのほか草野大輔(楽天)、福地寿樹(ヤクルト)、英智(中日)、平尾博嗣(西武)、今岡誠(ロッテ)らも引退を表明しています。

5位 巨人が盤石の強さでセを制覇。ポストシーズンも勝ち抜く
 元々充実していた戦力にソフトバンクから杉内俊哉、ホールトンを加えた投手陣、弱点だった三塁にDeNAから村田修一を加えた打線が噛み合い出すと額面通りの力を発揮。シーズンの出だしこそもたついたものの、交流戦をセ・リーグのチームとして初めて優勝。その後は勢いに乗り後半戦は独走しました。クライマックスシリーズでは杉内らの離脱もあり中日に3連敗。一度は追い込まれましたが、意地の3連勝を決めて日本シリーズへ。シリーズではリーダーケガを抱えた阿部慎之助らが奮闘し粘る日本ハムを退け日本一に。アジアシリーズも危なげなく勝ち抜きました。“物量の差”で押し切れるレギュラーシリーズだけではなく、短期決戦でもしっかり勝てるところに、真の意味でチームの充実を感じさせるシーズンでした。

6位 ダルの穴埋めた日本ハム、パを制覇
 チームの柱だったダルビッシュ有が退団し、大幅な戦力ダウンが予想された日本ハムでしたが、既存戦力をうまく活用しパ・リーグを制しました。ダルビッシュのポスティングでの落札額として得た40億円は補強には使わず、シーズン前はどうやりくりするのか予想もつきませんでしたが、過去3年間0勝の吉川光夫が、待っていたかのようなタイミングで台頭し14勝。さらには糸井嘉男、陽岱鋼、中田翔の外野陣が攻撃、守備ともにチームに上積みをもたらしダルビッシュの穴を埋めることになりました。優勝を争った西武が栗山巧を、ソフトバンクが松田宣浩を勝負どころで故障で欠いたことや、先発投手がイニングを稼げず、負荷の高まっていた日本ハムリリーフ陣のメンテナンスに夏場成功したことなど、運やマネジメント力も結果に影響を与えていたと思われます。

7位 ミゲル・カブレラ、MLB史上12人目の三冠王に
 日本では阿部慎之助(巨人)が三冠王を惜しくも逃しましたが、アメリカでは、打率.330、本塁打44本、打点139を記録したミゲル・カブレラ(タイガース)が見事手中に収めました。昨年108個あった四球が66個に減っていることからもわかるように、後続に強打者プリンス・フィルダーが入ることにより、勝負を避けられることが減った恩恵も受け残されたものと言えます。三冠王は1967年以来の45年振りの快挙で、チームはワールドシリーズ出場も果たしており、まさに価値ある三冠王と言えるものでした。MVPの投票では、打撃ではカブレラに劣ったものの、守備力を計る指標で高い数値を出した新人のマイク・トラウト(エンゼルス)のほうが総合的には価値のある選手だ、という声が上がるという事態も話題になりました。それでも45年振りの三冠王、さらにはチームのワールドシリーズ出場のインパクトは大きく、記者投票では28人中22人がカブレラに投票。無事MVPに選ばれました。

8位 サンフランシスコ・ジャイアンツがワールドシリーズ制覇
 映画「マネーボール」で知名度を上げたアスレチックス、イチローのヤンキースがリーグ優勝決定戦で敗れ、日本人選手が所属しないチーム同士の対戦となり、一般的な注目度は下がったような気もするワールドシリーズ。ジャイアンツとタイガースのカードで行われ、4連勝でジャイアンツが優勝。2010年以来2年振りの制覇でした。ジャイアンツはそれぞれの試合で8点、5点、7点、9点を奪う攻撃力で勝利を引き寄せましたが、注目を集めたのは第1戦、26歳の巨漢のベネズエラ人、パブロ・サンドバル3打席連続ホームランでした。初戦を任された昨年のサイヤング賞投手で、今シーズンも17勝を挙げていたジャスティン・バーランダーから2打席連続弾。その次の打席も本塁打を放ち、この日は4打数4安打4打点。ワールドシリーズでの1試合3本塁打は、アルバート・プホルスレジー・ジャクソンベーブ・ルースだけが達成している偉業でした。サンドバルはシリーズMVPにも輝きました。

第9位 ノーヒットノーランが3回達成
 統一球導入後、投高打低状態の続くNPBですが、それも影響しているのでしょうか、今年は3度の無安打無得点試合(ノーヒットノーラン)が達成されました。1人目の前田健太(広島)は4月6日、横浜スタジアムのDeNA戦で達成。これは06年に山本昌(中日)が達成して以来の6年振りの快挙でした。2人目は杉内俊哉(巨人)で、5月30日の東京ドームでの楽天戦。これは9回2死2ストライクからの四球という惜しすぎる形で完全試合を逃した後に達成したもの。そしてシーズンも終わりが近づいた10月8日に3人目の西勇輝(オリックス)がヤフードームでのソフトバンク戦で達成。この試合は小久保裕紀の引退試合だったため、主役の座を奪ってしまった西は恐縮しきり。
 なお、ノーヒットノーランは1940年には年間5回、43年には4回達成されたことがありました。戦後も年間3度というケースは何度かあり、最近だと95年に西崎幸広(日本ハム/7月5日の西武戦)佐藤義則(オリックス/8月26日の近鉄戦)テリー・ブロス(ヤクルト/9月9日の巨人戦)が達成しています。なお、MLBも当たり年だったようで、ノーヒットノーランが7度、そのうち3度は完全試合という異常事態でした。

第10位 角中勝也が首位打者に。四国IL出身選手で初のタイトル獲得
 今シーズンは、ロッテの角中勝也が首位打者を獲り、日本の独立リーグ出身選手としては初のタイトル獲得者が生まれました。角中は日本航空第二高(石川)卒業後、高知ファイティングドッグスに入団。1シーズン主軸を打った成果を認められ、2006年ドラフト7巡目でロッテに指名されます。入団から4年間は1軍定着できませんでしたが、イースタンリーグでの打撃成績では上位に顔を出し、08年には独立リーグ出身選手としては初の公式戦本塁打を放つなどの活躍も見せていました。
 転機は2011年。シーズン後半にレギュラーを奪い41安打を放ち打率.266と統一球環境下ではまずまずの確実性を見せ信頼を得ます。そして今シーズンは128試合に出場し149安打、打率.312と3割に乗せる成長を遂げました。最後はベンチのサポートはありましたが、中島裕之(西武)を抑えて首位打者を獲得しました。


(2012年プロ野球メジャーのまとめ)
 日本の野球ファンとしては、ダルビッシュ有という日本では絶対的な存在が、メジャーの舞台で苦しむ姿を歯がゆい思いで見ていました。頭ではやむなしと思いつつも、やっぱりバッタバッタと三振を奪ってほしかった……そんな思いが頭をよぎったものです。
 ただ、復活を果たしヤンキースと2年契約を結んだイチローはこんな言葉を残しています。
「ポテンシャルだけでやってきた39歳と、いろんなものを積み重ねて、さまざまなことを考えて、そこに来た39歳を一緒にしてほしくないと思っている」
 1年目からMVPと首位打者を獲得し全米を震撼させた存在であるイチローは、野手と投手の違いはありますが、言うならば私たちがダルビッシュになぞってほしいと願うモデルだったと言えます。あの頃のイチローは才能でメジャーを凌駕したように映ったものですが、決してそんなことはないということなのでしょう。なんだかダルビッシュへのエールにも聞こえる言葉でした。
 NPBについては、巨人の圧勝やオフに大型補強に務める阪神の様子を見ていると、持つ者と持たざる者の違いがさらに明確になっている印象を強く受けます。そんな中、成功事例と呼んでいい育成力の日本ハム、有力外国人獲得に積極的に動く楽天、高田繁GMが手腕をふるうDeNAなどがいかに食らいついていけるのか。ペナントレースが盛り上げるために、頭を捻る球団の頑張りに期待したくなります。


『2012年10大ニュース【アマ野球編】』

1位 春夏秋冬、話題振りまいた大谷翔平 ―――高校野球
 やはり、なんといっても1位は大谷翔平(花巻東)に尽きます。3月のセンバツ1回戦での大阪桐蔭・藤浪晋太郎と投げ合いに始まり、夏の岩手県大会・準決勝の一関学院戦では160キロを計速する快挙を達成。しかし、決勝の盛岡大附戦では5点を失い敗戦。甲子園行きを逃しました。
 花巻東、大谷のいなかった夏の甲子園ではライバル・藤浪の好投で大阪桐蔭が連覇を達成。にもかかわらず、閉会式で高野連会長から「大谷くんを見たかった」という発言が飛び出す異例の事態が発生。そして10月のドラフト会議を前に、メジャー挑戦を表明。しかし「1位はその年最高の選手を指名する」というスタンスを崩さなかった日本ハムが強行指名しました。最初は「0%」と腹を決めていた大谷に対し、日本ハムが「ともに夢を叶えよう」と同じ高さの目線で相談に乗ると両者の距離は縮まり、結果日本ハム入りが決まりました。
 春、夏、秋、冬と話題を提供するとともに、その出来事の流れにもすでにドラマが存在していた大谷。これぞスターだと思わせるような人を引きつける魅力を発揮した1年でした。

2位 投げ続け、勝ち続けた、満を持してプロに挑む東浜巨 ―――大学野球

 甲子園のスターから東都のスターとなった東浜巨(亜細亜大)は、結果的にその座を4年間守りきり注目を浴びたままプロ入りを決め、アマ野球人生の大団円を迎えることになりました。今年は主将としてチームを引っ張り春秋連覇。昨秋含めると東都3連覇となり、戦国東都を制する強さを見せました。
 春はヒジの状態が思わしくなく、社会人入りが囁かれる中での優勝。それでも秋はコンディションを整え復活を果たし22完封、420奪三振の東都新記録を樹立しました。高校時代はセンバツを制覇。「プロで通用する力をつけたい」と進んだ最難関リーグでも着実な成長を見せ、4年生で見事に仕上がった感のある東浜。同じリーグで投げ合った澤村拓一(中央大→巨人)藤岡貴裕(東洋大→ロッテ)らが結果を残す中で自ずと期待も膨らみ、ドラフトではソフトバンク、DeNA、西武から1位指名を受けました。抽選では地元が近く、また投手陣が一気に若返ったばかりのソフトバンクが当たりを引くという、願ってもない結果を引き寄せる主役らしい幸運も。大学時代、投げ続け勝ち続けることで得た自信を胸に「1年目から活躍したい」と話す22歳は2012年のアマ球界のはずせない顔でした。

3位 大阪桐蔭と光星学院が起こした奇跡 ―――高校野球

 決して番狂わせの少なくないスポーツである野球で、約4000校が参加する大会の決勝戦が2度同じ組み合わせになる珍事が話題に。大阪桐蔭(大阪)と光星学院(青森)はセンバツでの対戦のあと、互いに成長を果たし夏に再戦するという偶然のようで、ある意味では必然ともとれる活躍を見せました。
 結果はご存知の通り、大阪桐蔭が史上7校目の春夏連覇を、光星学院が前年の夏から続く3季連続準優勝を果たしました。大阪桐蔭は、春は打ち勝った印象が強かったのですが、夏は藤浪晋太郎が成長。光星学院の主軸・田村龍弘北條史也を抑え完勝しチームとしての完成度の高まりを見せてくれました。
 なお、藤浪はドラフトで今年最多の4球団競合(阪神、ヤクルト、ロッテ、オリックス)の末、地元・阪神への入団決まりました。阪神は2位で光星学院の内野手・北條も指名。甲子園で2度にわたって対戦したライバル同士が、プロでは甲子園を本拠地にした同一球団に所属するという話題が生まれました。

4位 ドラフト候補で賑わった全日本大学野球選手権大会 ―――大学野球
 春のリーグ戦を制してきた大学が、さらにしのぎを削る全日本大学野球選手権大会は早稲田大が東浜巨を擁する亜細亜大に勝利し、4回目の優勝を決めました。MVPには1年生ながら準決勝、決勝と先発した吉永健太朗が選ばれ、甲子園優勝投手のレベルの高さがうかがえました。
 また、大阪体育大に負けたものの三重中京大の則本昴大が1試合20奪三振(延長10回参考記録)の大会新記録を達成。その当時は社会人野球強豪企業から内定をもらっていたものの、ここからプロへの道が拓けていきました。他にも首位打者賞を獲得した古本武尊(龍谷大→中日3位)、ベスト4入りに貢献した川満寛弥(九州共立大→オリックス2位)、九州共立大に惜敗した創価大のエース小川泰弘(ヤクルト2位)など、結果的にドラフトで指名された大学生27人中16人がプレーした大会でした。

5位 松井裕樹、歴史塗り替える1試合22奪三振 ―――高校野球
 夏の甲子園をスポットで盛り上げてくれたのが、桐光学園(神奈川)の2年生左腕・松井裕樹の奪三振ショーでした。激戦の神奈川大会を制し、5年ぶりに甲子園の土を踏むと、全4試合で先発・完投。1回戦戦の今治西(愛媛)戦で22奪三振、2回戦の常総学院(茨城)戦で19奪三振、3回戦の浦添商(沖縄)戦で12奪三振、準々決勝の光星学院(青森)戦では16奪三振を上げる快投を見せました。初戦の1試合22奪三振は87年ぶりの最多奪三振記録更新。また1大会68三振は左腕最多、板東英二(徳島商/83個)斎藤佑樹(早稲田実/78個)に続く歴代3位の記録でした。決勝まであと2試合投げていれば、これらの記録を抜いた可能性もありました。
 三振は多くをキレのよいスライダーで奪っていましたが、敗れた準々決勝では光星学院の北条史也にそのスライダーを痛打され失点。連投の疲れと、2年生投手らしい粗さも見せました。
 センバツ出場は逃しましたが、最近フォークを習得した模様。来年の夏にはさらに精度をアップさせた奪三振マシーンとして、再び甲子園に姿を見せ、大会を盛り上げてくれることでしょう。

6位 都市対抗、選手権ともにJX-ENEOSとJR東日本で決勝戦 ―――社会人野球
 社会人の2大大会の1つで、昨年は東日本大震災の影響で開催されなかった社会人野球日本選手権が2年ぶりに行われました。もうひとつの全国大会・都市対抗野球と合わせいずれもJX-ENEOSが優勝。同一年の2大会での優勝は1988年に東芝が達成して以来の快挙でした。
 決勝の相手は、都市対抗、選手権ともに、昨年唯一行われた全国大会だった都市対抗野球を制したJR東日本。JX-ENEOSは昨年のチャンピオンを倒しての2冠奪取ということになります。快挙の原動力になったのは、主戦投手の大城基志。都市対抗では2試合に先発し、決勝など重要な試合でリリーフ登板。選手権では準々決勝の日本生命戦で1失点完投などの働きを見せ、それぞれ橋戸賞、選手権で最高殊勲選手に選ばれました。
 今秋のドラフトでの指名はありませんでしたが「悔しさはあった。でも、次に向かって進んでいるので」とプロ入りへの希望を捨てない社会人野球の「顔」に来年も注目したいところです。

7位 社会人選抜が大学生選抜を一蹴! ―――東日本大震災復興支援試合
 3月10日に東日本大震災復興支援試合として開催された侍ジャパン対プロ野球台湾代表の前座として、ともに東北・東日本のチームに所属する中から選抜された選手で構成されたチーム同士で戦いました。オープン戦などでしか戦う機会がない社会人と大学生、さらに選抜された多くはドラフトにかかる可能性がある選手なので、ドラフト好きな人たちにとっては注目度が高かった一戦。
 その結果は7対0で社会人選抜が完勝。春先で状態が良くないとはいえ、数々の東都大学リーグ戦で新記録を打ち立てようとしていた東浜巨(亜細亜大)から先制点を奪い、小刻みに得点を重ね、投げては6安打、13三振に抑えた社会人野球選手の実戦性の高さが伝わる試合でした。

8位 京大、本格派右腕登場でリーグ戦60連敗をストップ ―――大学野球
 関西学生野球の春季リーグ戦で2009年から1分けを挟んで60連敗していた京都大が、3年ぶりの勝利を挙げました。記念すべき試合は5月21日にわかさスタジアム京都で行われた関西学院大戦との2回戦。勝利の立役者になったのは、2年生右腕の田中英祐(白陵高)。昨年も10試合に登板していた右腕はMAX147キロの直球とフォークやカーブ、ツーシームを駆使し奮投。関学大打線を5安打9奪三振に抑え零封。打線は最終回に連打で1点を奪い1対0で勝利しました。4年生は0人というチームでの1勝は今後につながるもの。「新たな京大が始まる」と比屋根吉信監督も手応えを述べていたようです。
 田中は秋季リーグでも開幕戦で関西大から勝利。さらに立命大戦でも2安打11奪三振の好投、新人戦では近大を完封するなど、さらなる成長を見せています。これまで京大出身のプロ野球選手は1人もいませんが、3年、4年で成熟すれば……? そんな夢も広がる投手の登場が話題を集めました。

9位 話題多かった明治神宮野球大会 ―――大学・高校野球
 シーズン最後の全国大会・明治神宮野球大会が盛り上がりを見せました。大学の部では東都を3季連続制覇した東浜巨擁する亜細亜大を優勝候補に、東京六大学秋季リーグで優勝した法政大もDeNA入りを決めた三嶋一輝が順位万端で臨んだ大会でした。しかし、優勝したのは創部7年目の桐蔭横浜大。高校時代はほぼ無名だったエース・小野和博が準決勝で亜大を、決勝で法大を完封して挙げた金星は驚きを呼びました。
 高校の部では仙台育英(宮城)が神宮大会初優勝。昨年の光星学院(青森)に続く東北勢の優勝で、来春のセンバツの神宮枠は東北に。特例の「東北絆枠」と合わせのべ4枠が東北地区に割り振られることになり、東北勢の甲子園初制覇の大きなチャンスが訪れることになりました。

10位 突然の世界大学野球選手権中止 ―――大学野球
 2012年7月13日から20日まで台湾で開催される予定だった世界大学野球選手権大会が、はじまる約1カ月前に参加チームが規定に足らず、中止となりました。2002年の第1回大会から参加している日本は最高成績は準優勝(04年、08年)。今回こそは優勝を、と意気込み、これまでの大会以上に計画的に代表候補合宿を計画的に行なっていました。しかし、過去5大会で優勝を分けあってきたアメリカとキューバが不出場、参加表明をしたのは日本、台湾、韓国、スリランカの4カ国・地域のため、開催必須条件の6カ国以上を満たしませんでした。
 また、1年おきに開催される世界大学野球選手権大会は通常だと2年後の2014年に開催される予定ですが、2015年に韓国、2017年に台湾で行われるユニバーシアード大会の主催国選択競技で野球が採用されるため、本大会が開かれるかはまだ未定となっています。

(2012年アマチュア野球のまとめ)
 こうやって眺めると、アマ球界は話題に事欠かない充実した1年だったことがわかります。そして、都市対抗と選手権でJX-ENEOSとJR東日本が、甲子園では大阪桐蔭と光星学院が続けて決勝戦で当たったことも印象的でした。4つのチームの地力はベースにありますが、一発勝負を確実に勝つ可能性を高める野球をやっていなければ起こらない事態だと思われます。一方で、京都大の連敗脱出からの復調や桐蔭横浜大による番狂わせなど、予想がつかない事態も起こるのが野球の面白いところ。大谷君の動向も、なかなか予想がつかず楽しめました。高い技術と驚くようなドラマ、双方が楽しめた2012シーズンでした。

それではみなさま、よいお年を!

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