週刊野球太郎
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球界Twitter事件簿2013

 千葉ロッテマリーンズ・神戸拓光選手のTwitter投稿が社会問題となっている。

 問題となったツイートは10月10日に投稿されたもの。名指しはしていないが、三鷹市女子高生刺殺事件を侮辱していると疑われる内容で、ネットユーザーを中心に批判が殺到し炎上した(※ツイートはすでに削除済)。

 翌11日は中村家國ロッテ球団社長が公式サイトで謝罪。さらには千葉市の熊谷俊人市長までも「ホームタウンの長として看過できない」として遺憾の意をツイートするなど、問題は更なる広がりを見せている。

 球団にとどまらず、選手が個人で情報を発信できる時代。球界全体にとってもファンにとっても、Twitterをどう活用し、どう向き合うべきかが問われている。そこで今回の「プロ野球やじうまジャーナル」では、2013年の「球界Twitter事件簿」を総ざらい。「Twitterと球界の今」を探る。

炎上部門


 2013年のプロ野球で特に盛り上がったのが、王貞治(元巨人)氏の55本塁打を軽々と超えた、ヤクルト・バレンティン選手のシーズン60本塁打だ。だがこの「本塁打記録」を巡り、Twitter上ではある男が炎上した。

《バレンティンの記録更新には何も思いません。なぜなら飛ぶボールで出した記録だなら。どうせなら100本くらい打って欲しいですね。飛ぶボールで。王さんの記録と記憶は一生語り継がれていくものですから》(※原文ママ)

 ツイートの主は、熱狂的な巨人ファンとして知られる落語家・ヨネスケ氏(@yonesuke51)。巨人愛&王貞治リスペクトゆえのツイートだというのはわかるのだが、ファンからは「器が小さい」「バレンティンに失礼」「王さんにも失礼」と非難が続出した。

 そもそも大きな事実誤認があるのが、今年のボールは決して「飛ぶボール」などではないということ。バレンティンの記録更新に関しては野村克也氏なども新聞紙上で否定的な発言をしていたことも手伝って、球界ジェネレーションギャップを見せつける事例となった。また、炎上するのは選手だけでなく、ファンやその周辺にも及ぶ、という意味でも押さえておきたい話題だ。

激論部門


 野球界で最もTwitterが似合うのが、テキサス・レンジャーズのダルビッシュ有(@faridyu)投手だ。フォロワー数97万人超は、球界だけにとどまらず、スポーツ界全体を見回しても日本人スポーツ選手で圧倒的1位を誇っている。

 「ダルビッシュとTwitter」と言えば、ファンとの歯に衣着せぬやり取りが見物でもあるが、今季はこれに球界のご意見番・張本勲氏も加わることとなった。

《いやかなりチームに必要とされてますよ! てかあのコーナーは何のためにあるのかな?けなすため?わからん》

 事の発端は、6月23日に放送されたTBS系「サンデーモーニング」のスポーツコーナーで、ご意見番・張本勲氏がメジャーで人気を集める川?宗則選手(トロント・ブルージェイズ)に対し「(打率)2割2分くらいだったら野球選手じゃないよ」と批判したこと。ツイッター上でファンがこの報道への感想をダルビッシュ投手に尋ね、返したコメントが上記である。

 普通ならここで話は終わるのだが、なんと張本氏がダルビッシュ投手のコメントに週刊誌で反論。

「男なら日本に帰ってきて私の目の前で言いなさいよ。暗闇から石を投げるようなことをしてはいけません」と“喝”を入れた。

 ダルビッシュ投手は10月12日、日本に帰国したことをブログで報告。張本氏との舌戦の続きはあるのか!? 是非とも注目したい。

激賞部門


 そんなダルビッシュ投手だが、8月にはこんなつぶやきで野球ファンの注目を集めた。

《動画見たけど、これは一番だわ》

 「これ」とは、甲子園に出場し、高校日本代表にも選ばれた瀬戸内高の山岡泰輔投手のこと。ダルビッシュ投手はいったい、山岡投手の何を評価したのか。そしてその真意とは? このテーマについては『野球太郎No.006』にて谷上史朗氏が記事にまとめているので、そちらを是非一読いただきたい。


▲瀬戸内高・山岡泰輔投手


お笑い部門


 少しは軽い話題も挟んでみたい。
 イチロー(NYヤンキース)選手が日米通算4000本安打を達成した8月22日(日本時間)、Twitter上でもイチローへのメッセージや賛辞の声が賑わったが、その中で一際ユニークだったのが、解説者・岩本勉(@gun18gun18)氏のつぶやきだ。

《因みにアッシはイチロー選手に世界中のピッチャーの中で一番彼にヒットを提供している『36安打』いわゆるヒット〜(筆頭)株主ですわ〜(=´∀`)人(´∀`=)なんてねf^_^;ホンマに誇りに思いますわ〜ヽ(´o`;)》

 いつも誰かを喜ばせようというガンちゃん節は、Twitter上でも健在だった。

せつなさ部門


 今季限りでの引退を表明していた横浜DeNA・小池正晃選手が、引退試合で魅せた2本のホームラン。自らの花道を見事に飾ったわけだが、この本塁打にTwitter上で反応し、ファンの涙を誘ったのが横浜高校時代のチームメイトで、今季ニューヨーク・メッツで再スタートを切った松坂大輔(@matsu_dice)投手のつぶやきだ。

《小池、お前はそういう奴だよ。ホームラン2発って…。》
《小池はやっぱりそういうモノを持ってるよね…。》


 二つの「…。」に、同じ釜の飯を食った球友同士の思い出が詰まっているようで、なんとも切なさに満ち満ちていた。

 そんな松坂投手は、今季の自身のプレーを振り返ってこんなツイートを残している。

《今までにないくらい悔しい思いを沢山した1年間だった…。》

 ここでも登場した「…。」が、小池選手へのメッセージ以上になんとも切ない。

問題提起部門


 最後に注目したいのが、今季の日米胴上げ投手、2人のつぶやきに関して。

 24勝0敗1セーブと無敵の強さを見せつけたのが楽天・田中将大投手。だが、3月のWBCでは調子が今ひとつで、新聞報道では「中継ぎ降格!?」といった見出しが躍った。これに噛み付いたのが、ボストン・レッドソックスの上原浩治(@TeamUehara)投手だ。

《先発の調子が悪いから、中継ぎに降格?? 降格って何やねん(?_?#) 中継ぎをバカにするなよ。野球を知らない奴が、記事を書くなって思うのは俺だけ??》

 思わず感情を爆発させた上原。このツイートに関してはファンからも、「上原さんの言う通り!」、「先発・中継ぎ・抑え全てを経験した男の発言だから重みがあります」と共感が殺到。さらには、当事者でもある田中本人(@t_masahiro18)がコメントを返すという熱い展開に!

《お久しぶりです。僕も先程記者の方々に逆取材してきました…(。-_-。)》
《本当に同じ事思って記者の方々に聞いていたので、思わずリツイートしてしまいました(._.)頑張ります‼》


 結果としてWBCでチャンピオンになることは叶わなかった田中だが、その鬱憤を晴らすように、今季のペナントレースで楽天の胴上げ投手に。そして、問題提起をした上原自身も中継ぎと抑えでチームの地区優勝に大きく貢献し、こちらも見事胴上げ投手となった。

 今となっては、あの時のエール交換が、お互いの今季の躍進に繋がったような気もしてくる。


 このように、今季だけを振り返っても様々な話題を球界に影響してくれたTwitter。もっとも、一部のファンや評論家の間では「そんなことしてる暇があったら練習しろ」「選手はプレーで示せ」という批判が起こりがちだ。だが今回見てきたように、田中将大投手、ダルビッシュ有投手、上原浩治投手など、日米において今季ひときわ輝き、結果を残した選手たちが活用している姿からは、それら批判も少し的外れなように思えてくる。

 今日、他競技においても世界で伍しているアスリートは、皆「自らの言葉」を持っているものだ。プレーの意図、理由、解説を自分の言葉でできないようでは世界のトップに立つことはもちろん、その後、指導者として花開くことも難しいのは、もはや常識とも言える。

 中にはその言葉の使い方を間違えてしまう神戸選手のような例も起こってしまうわけだが、一方で神戸選手は今年の8月12日、自身のブログ上で日航機墜落事故について記述し、野球ファン以外からも「感動した!」と注目を集めた経緯がある。その経験を生かせなかったと見るべきか、あれで注目を集めることに味をしめてしまったのか……。いずれにせよ、まだまだアスリートとしての発言の重大性と責任の大きさを理解できていなかったと言わざるをえない。

 選手も、そして球団や球界全体も、いま一度自身の「言葉」の重要性を見直すべきであるだろう。


文=オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。また「幻冬舎WEBマガジン」で実況アナウンサーへのインタビュー企画を連載するなど、各種媒体にもインタビュー記事を寄稿している。ツイッター/@oguman1977

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