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引退後の第2の人生。ちびっ子球児と触れ合う本間満氏が本気で伝えるのは“野球の楽しさ”

引退後の第2の人生。ちびっ子球児と触れ合う本間満氏が本気で伝えるのは“野球の楽しさ”

 プロ野球のOBたちに現役時代のエピソードとユニフォームを脱いでからの第2の人生に迫る『プロ野球選手だった男たち 〜あの日々、そして第2の人生〜』。1人目のプロ野球選手OB(全4話連載)はダイエー、ソフトバンクで15年間に渡り“陰日向にチームを支えるプレー”を見せたユーティリティープレーヤーの本間満氏が登場。本間氏は王貞治監督(当時)が指揮を執った14年間をともにした唯一の選手としても知られている。

 現在、本間氏はリーフラス株式会社に所属。3歳から小学生までのちびっ子球児を指導する野球教室を中心に、野球界の裾野を広げるべく“野球の楽しさ”を伝える日々を過ごしている。取材に訪れたのは2018年1月。BBC(ベースボールコミュニケーション)に特別講師として招かれ、高校入学を間近に控えた中学3年生たちに神宮球場室内練習場で守備の指導を行っていた。最終回となる今回は、少年たちへの野球の指導について語ってもらった。

「本間さんにやってほしい」と請われることがモチベーションに


―2008年のオフにホークスのユニフォームを脱ぐ時、“これから”のことをどう考えていましたか。

本間 何も考えていませんでした……それは考えられないですよね。現役でありながら「そろそろかな」と思う選手は本当にやめた方がいいと思います。自分は最後の最後までそういう気持ちにはなりませんでした。だから、球団に戦力外を伝えられた時に、その後のことを考える気持ちにもなれなかったんです。

―ソフトバンクを退団後、独立リーグのBCリーグ・石川ミリオンスターズで1年間、プレーを続けています。

本間 周りからは「ちょっとゆっくりした方がいいんじゃないの」と言われましたけど、野球を続けたかったんです。でも、独立リーグでプレーをしてみて、そこにいる若い選手にNPBに進むチャンスをあげた方がいいなと思って、1年でやめることにしました。

―そこからは?

本間 僕のことを気にかけてくれる方からいただいた話に、「やります」と答えるスタイルを貫いています。解説の仕事にしても、現役の頃は自分にはできないと思っていましたが、できないと決めつけることは簡単です。でも、やってみないとわからない世界がありますよね。だから、いただいた話はまず、挑戦してみようと。自分としては経験してみないと、イエス、ノーは判断できません。その繰り返しで、今、子どもたちへの野球の指導をしています。「本間さんにやってほしい」と声をかけてくれる方がいるのは、モチベーションになっていますね。

壁を取り払い、子どもたちに本気で“野球”を伝える


―ここからは野球の指導について聞かせてください。今、取り組んでいるのはどういう活動ですか。

本間 リーフラスという子ども向けのスポーツスクールなどを行っている会社に属しています。ほかにも、野球教室に呼んでもらっていますね。

―リーフラスでは「本間塾」を各地で開いていますが、指導を受ける子どもたちは何歳くらいですか。

本間 主に3歳から小学生までの子どもたちに野球を教えています。

―今日はBBC主催の「ベースボールチャレンジ」に特別講師として招かれて中学3年生の球児に指導していましたが、いろいろな世代の子どもたちと接すると、野球への見方が変わってくるものですか。

本間 いえ、自分にとっての野球の見方は変わらないです。ただ、指導の仕方という点では、教えるという感覚とはちょっと違いますね。

―と、言いますと。

本間 教えるというよりは、本気で野球を伝える。本気にならないと伝わらないので。自己満足で「今日はいい指導をした」と思っていても、相手に伝わらなければ意味がないですよね。だから、どう見られているかわからないですけど、とにかく真剣に、一生懸命に伝えようとするスタイルで接しています。

―子どもたちも様々。プロを目指す子どももいれば、そうではない子もいます。難しいところです。

本間 教え方には「こうしたらうまくなる」という正解はありません。だから、たくさんの子どもと接しながら、自分の引き出しを増やして、その子に合ったアドバイスをできるようにしなければいけないんです。自分の考えを押しつけるのでは駄目ですから。

―小・中学の野球部やクラブチーム、高校の野球部の監督ではないので、継続的な指導をできない難しさもあると思います。

本間 そうですね。でも、野球教室で頻繁に会う子もいます。そこで僕はひとつのアドバイスを「やってみたらどう?」と伝えることを心掛けています。その子にとって絶対にマイナスになることはないと思っているので、まずはそのアドバイスを受け入れてくれる信頼関係を、初めて会う子どもたちと築かないといけないですよね。
 僕が元プロ野球選手ということで緊張してしまう子もいますが、そこは「僕との間には壁はないよ。いつでもウェルカムだよ」という姿勢で接して、リラックスしてもらうようにしています。

―野球を教える上で、その他にこだわっていることは?

本間 実際にプレーをして見せることですね。やっぱり“見せる説得力”は大きいので。だから、僕は今年で46歳になりますけど、現役時代から体型を変えていません。ちなみに、僕の父親は75歳ですけど、今も軟式の朝野球をやっているんですよ。僕も地域の軟式野球やソフトボールの試合があれば、積極的に参加しています。父親には負けていられないので(笑)。


“楽しさ”を知り、ひとりでも多くの子どもに野球を続けてもらいたい


―今は野球の競技人口も減少が問題になっています。実際、子どもたちにとって野球は必ずしも馴染み深いスポーツではなくなってきていますが。

本間 そこが楽しい半面、難しいところです。僕が子どもの頃とは生活習慣が変わってきて、スポーツをするにあたっての、そもそもの体の動かし方を知らない子も多い。例えば、股割りは、僕らは和式のトイレにかがむ中で、自然に身についていました。でも、今は違います。そこで、どうしたら体を動かしやすくなるのか、というところから教える必要があるんです。

―技術の前に基本的な体の動かし方ができない、というよりも知らないと。

本間 そうですね。でも、僕は幸い野球教室で3歳くらいの子どもに接して、動かし方を教えてあげることができます。それは野球以外のスポーツに進むにしても、大事なことですよね。
 あと、先日亡くなられた星野(仙一)さん(元楽天監督ほか)が「結局は底辺拡大が大切だ。野球人口を増やさないといけない」と言っていました。その通りですよね。僕は今、野球教室を通じて「野球はこんなに楽しいんだよ」と子どもたちに伝えようとしています。野球の楽しさを知ってもらって、一人でも多く野球を続けてくれる子を増やしたいと思っているんです。

協力:日本プロ野球OBクラブ

引退後の第2の人生。ちびっ子球児と触れ合う本間満氏が本気で伝えるのは“野球の楽しさ”

■プロフィール
本間満(ほんま・みつる)
元ダイエー、ソフトバンク。内野手・右投左打。1972(昭和47年)8月25日生まれ、北海道留萌市出身。駒澤大学附属岩見沢高、駒澤大を経て、1994年のドラフト3位でダイエーに入団。内野のユーティリティープレーヤーとして攻守に渡って貢献。2009年にソフトバンクを退団した後、BCリーグ・石川ミリオンスターズに1年間在籍。解説者などを経て、現在はスポーツスクールを運営するリーフラスに所属し、子どもたちへの野球の指導に勤しんでいる。

取材・文=山本貴政(やまもと・たかまさ)

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