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【2020大学生ドラフト候補密着レポ! 野手編】まるで「ぴの」!? 五十幡亮汰(中央大)の超絶プレー

取材・文=寺下友徳

【2020大学生ドラフト候補密着レポ!野手編】まるで「ぴの」!? 五十幡亮汰(中央大)の超絶プレー
 さる11月30日(土)から3日間にわたり、愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアムに50選手(右投手14名、左投手7名、捕手6名、内野手12名、外野手11名)が集い、同地では4年連続となる侍ジャパン大学代表強化合宿が開催された。

 2016年参加組からは昨年のセ・リーグ新人王に輝いた東克樹(立命館大〜DeNA)を筆頭にドラフト1位3名を含む多くの指名選手が輩出。2017年組も巨人1位指名の高橋優貴(八戸学院大)や、プレミア12初優勝に大きく貢献したソフトバンク1位の甲斐野央(東洋大)はじめ10名がドラフト指名された。

 さらに昨年の参加選手からもDeNA2位の坂本裕哉(立命館大)、ロッテ2位の佐藤都志也(東洋大)、ロッテ3位の高部瑛斗(国士舘大)、ソフトバンク2位・海野隆司(東海大)、中日4位・郡司裕也(慶應義塾大)の6名がプロへの扉を開けている。

 では、今回の合宿ではどんな選手がインパクトを与えたのか? 全3回にわたってお送りする連載企画「2020先取り大学生ドラフト候補・密着レポート!」の第2回では前回の投手編に続き、捕手3名、内野手8名、外野手7名が集った総勢18名の3年生野手(2020年度に4年生)を取り上げていきたい。

「堅実さ」で光るものを見せた野手陣たち


 今回、侍ジャパン大学代表強化合宿に参加した3年生野手18名は「堅実」と「豪快」に大別される。「堅実」の代表格は2年連続侍ジャパン大学代表入りを目指す古川裕大(上武大)に、代表候補として初召集された山崎基輝(東洋大)、榮枝裕貴(立命館大)の3年生捕手たち。決して派手さはないが、二塁送球はいずれも1秒9以内。古川以外は来シーズンからがレギュラー本格稼働となる経験値の低さをカバーできれば、ドラフト候補の枠には十分に入ってくるだろう。

古川裕大(上武大)
古川裕大(上武大)

 また、今年の日米大学野球・侍ジャパン大学代表組の内野手では児玉亮涼(九州産業大)が165センチ63キロの体格をカバーして余りあるチームバッティングで観客をうならせた。強肩が以前から光っていた元山飛優(東北福祉大)は、三遊間への反応やステップの踏み方、送球の安定度に格段の成長が見られた。小川龍成(國學院大)は積極的な走塁が光った。

 小川、元山に関しては打撃面での上積みがあれば、今年の楽天1位・小深田大翔(大阪ガス)のような強肩巧打の遊撃手としての期待は大。児玉は内野守備に不安を抱える球団であれば「スーパーサブ」的存在として指名を検討する球団が現れそうだ。

元山飛優(東北福祉大)
元山飛優(東北福祉大)

豪快さの裏に見えた「多種多様」


 昨年の強化合宿では生田勉監督(亜細亜大監督)の下「右打者の発掘」に重点が置かれたことで、豪快な打者が数多く見られた。今年もその基本線を引き継ぐように、外国人投手に振り負けない豪快さを兼ね備えた選手が多く招集されたが、その中身は多種多様であった。

 右打者では渡部健人(桐蔭横浜大、三塁手)や赤尾光祐(東海大札幌キャンパス、外野手)、左打者では中村迅(法政大、一塁手兼三塁手)や大石航輝(天理大、外野手)、三宅浩史郎(立命館大、外野手)が変化球にも対応できるバットコントロールの柔らかさを垣間見せた。一方、50メートル走5秒6の小川晃太朗(同志社大)や、中・四国大学担当ライターとして恥ずかしながら全く認識していなかった中村拓貴(徳山大)の外野手2人は、右打席からのパンチ力があることを示してくれた。

 さらに坊っちゃんスタジアム開催となってから初となる東京大からの侍ジャパン大学代表強化合宿召集となった石元悠一(三塁手)は、自分のミートポイントに入れば引っ張ってライト線に飛ばせる力強さを披露した。

 このような「豪快組」のなかで、精彩を欠いたのは大卒野手の2020年ドラフト上位候補と目される2019年東都大学リーグMVPの牧秀悟(中央大、二塁手)と「フルスインガー」の佐藤輝明(近畿大、三塁手)。「インパクトの時に指先で走らせる感覚が出てくればすごいことになる」と某NPBスカウトは2人の高いポテンシャルを端的に表現してくれたが、牧はタイミングがやや合わず。佐藤に至ってはタイミングを失ったスイングで6打数無安打4三振と厳しすぎる結果に終わった。

 ただ、幸いにも当初3月と言われていたハーレムベースボールウィークに向けた侍ジャパン大学代表選考合宿は、大学選手権直後の6月に変更。まずは頭のなかを整理し、冬の間に自分の持ち味を出し切る心技体を鍛え、春の復調に期待したい。

牧秀悟(中央大)
牧秀悟(中央大)

佐藤輝明(近畿大)
佐藤輝明(近畿大)

まるで「ファミスタ・ぴの」!? 五十幡亮汰(中央大)の超絶プレー


「これ、若い人には理解できるかわからないけど……」

 合宿中、左打席からの一塁駆け抜けタイムは3秒8台。50メートルは5秒42。内野安打に右翼線三塁打、一塁から11秒68で悠々とホーム生還。3秒12での二盗と、坊っちゃんスタジアムのグラウンド上を駆け抜けた五十幡亮汰(中央大、外野手)の評価をあるNPBスカウトに聞くと、上記のような前置きが。

 そして、そのスカウトは、まるで野球少年のような表情をして、こう言葉を続けた。

「まるでファミスタの『びの』(※)だよ。ありえないことを実現させてしまう」

 ファミリーコンピュータの野球ゲーム『ファミリースタジアム(1986年版)』に登場するチーム、ナムコスターズにおいて、投手前のバントですら内野安打にしてしまう走力を発揮する「ぴの」。確かに五十幡を表現するにはこのフレーズが最もふさわしい。

 加えて、今合宿では6打数4安打と「肩もあるし、打力も上がった」とスカウト陣の評価を高めることにも成功。「どんな形でもいいから足で見せたい」今合宿のテーマをベースに、上位指名への鍵となる打撃・守備をさらに高める2020年が楽しみになってきた。

五十幡亮汰(中央大)
五十幡亮汰(中央大)

 また、50メートル5秒32とタイム上では五十幡を上回った並木秀尊(獨協大、外野手)は、肩に課題がやや残るものの、右打者というアドバンテージは大きな魅力。紅白戦では6打数3安打と打撃でもアピールできた自信を糧に、首都大学リーグ2部のハンデをはねのけて、大学初となるドラフト指名まで駆け上がってほしい。

並木秀尊(獨協大)
並木秀尊(獨協大)

取材・文=寺下友徳(てらした・とものり)

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