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今夏は高岡商のみ。強かった「商業高校」の甲子園での活躍をプレイバック

今夏は高岡商のみ。強かった「商業高校」の甲子園での活躍をプレイバック

 雨天順延で開幕日が1日ずれ込んだが、99回目の夏の甲子園が開幕した。夏連覇を目指す作新学院、春夏連覇の期待が掛かる大阪桐蔭。鍛治舎巧監督の勇退発表でも注目を集める3季連続ベスト4の秀岳館…。今大会も強豪が揃い、1回戦から目が離せない試合が繰り広げられそうだ(※作新学院は大会2日目に敗退)。

 ここ数年、強豪私立の活躍が著しいなか、創生期から甲子園を沸かせてきた公立の商業高校はなかなか活躍できない傾向にある。今大会では高岡商(富山)のみの出場となっている。

 そんな商業高校が甲子園に残してきた足跡、名試合を振り返ってみたい。

全国に名を轟かせる「広商野球」


 商業高校でまず名前が挙がるのが広島商だ。戦前から広陵とともに広島の高校野球をリードし、春2回、夏6回の甲子園制覇を誇る。野球部OBは鶴岡一人(元南海ほか)を筆頭に大下剛史(元東映ほか)、三村敏之、達川光男(ともに元広島)ら多くがプロ野球で活躍し、近年では柳田悠岐(ソフトバンク)を輩出している。

 広島商といえば「精神野球」「緻密な野球」のイメージが強い。その昔、精神の鍛練として真剣の刃渡りを行ったエピソードは今も語り継がれている。また、最後に全国制覇した1988年夏には大会記録となる26犠打をマークするなどバントを多用し、その堅実な野球を見せつけた。2004年夏を最後に甲子園から遠ざかっているが、「古豪復活」に期待する高校野球ファンは多い。

四国をリードしてきた「四国四商」


 高校野球には古くから「四国四商」の言葉がある。高松商(香川)、徳島商(徳島)、高知商(高知)、松山商(愛媛)。この四国4県の商業高校が、長年四国の高校野球をリードしてきたのだ。

 近年は明徳義塾(高知)、済美(愛媛)などに役割を取って変わられてしまったが、昨春は高松商が20年ぶりにセンバツ出場。準優勝に輝き、古豪復活を印象づけた。

 「四国四商」のなかでも「夏将軍」と呼ばれた松山商は夏の甲子園歴代2位の通算60勝、優勝は5回と、その名の通り夏の甲子園で結果を残してきた。1969年夏にはエース・太田幸司(元近鉄ほか)を擁する三沢(青森)と決勝で対戦。延長再試合の末に全国制覇を果たし、その激闘は名勝負として甲子園史に刻まれている。

 また、1996年夏には決勝で熊本工(熊本)と対戦。1点リードで迎えた9回裏、同点本塁打を浴び、試合は延長戦に突入する。そして延長10回裏、松山商は1死満塁とサヨナラのピンチを迎える。

 ここで熊本工の3番・本多大介はライトに大飛球を放つ。しかし、打球は浜風に押し戻され、代わったばかりの松山商の右翼・矢野勝嗣がキャッチ。矢野はタッチアップした三塁走者を刺すべくバックホーム。しかし、送球は高目に浮いてしまう。誰もが熊本工のサヨナラ勝ちを確信した……が、ボールはそのまま捕手・石丸裕次郎のミットにノーバウンドで収まり、判定はアウト。

 この奇跡のバックホームで窮地を脱した松山商は延長11回表、3点を挙げ勝ち越し。27年ぶりの優勝を勝ち取った。


「黒潮打線」の銚子商業、PLと優勝を争った宇部商業


 商業高校で強い印象を残すチームに銚子商(千葉)がある。夏の甲子園には12回出場し、「黒潮打線」の異名で知られた。1973年夏には怪物・江川卓(元巨人)を擁する作新学院(栃木)と対戦。徹底した江川対策で臨み、最後はサヨナラ押し出しで勝利をつかんだ。さらに翌1974年夏はエース・土屋正勝(元中日ほか)、2年生の4番打者・篠塚利夫(現・和典、元巨人)が投打の軸となり、初の全国制覇を成し遂げた。

 宇部商(山口)は1985年夏、桑田真澄(元巨人)と清原和博(元西武ほか)の「KKコンビ」を擁するPL学園(大阪)と決勝戦で戦う。宇部商は4番打者・藤井進が3試合連続で4本塁打と打線をけん引。大会記録となる14打点を樹立していた。

 宇部商は2回に1点を先制したものの、4回、清原に一発を浴び同点に。さらに5回には勝ち越しを許してしまう。それでも6回に2点を挙げ3対2と逆転するもその裏、清原にこの試合2本目の本塁打を打たれ、再び同点に追いつかれる。試合はそのまま3対3で9回に突入。9回裏にPL学園・松山秀明にサヨナラ打を浴び、宇部商の全国制覇は叶わなかった。


文=武山智史(たけやま・さとし)

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