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投手はキャンプで投げ込みをすべきか否か? 根性論から投手が考える調整法へ


「パーン!!」と、キャッチャーミットの音が小気味よく響く!

 キャンプ地のブルペンは、投手にとっては戦場だ。横で投げるライバルのボールが気になり、ついつい力が入ってしまう。

 反対に、キャッチャーがいい音で捕ってくれると、「どうだ!」と言わんばかりに調子よく乗っていけたりもする。

 投手は皆、それぞれの思いを抱き、ブルペンに立つ。

投手は投げ込みをすべき? すべきでない?


 このブルペンでよく話題にのぼるのが、投手の「投げ込み」の是非についてだ。

 一昔前の日本のキャンプでは、投手は走り込みと同様、1日100球、200球と投げ込むことがノルマとして課されていた。投げ込むことで肩を作り、スタミナを蓄え、フォームを固めることが最善だと思われていたからだ。

 しかし、最近のキャンプを見る限り、投げ込みのノルマを課す球団はほとんど見られなくなった。

 本場メジャーリーグでは、投手コーチは1人1人の投手の球数を厳密にチェックし、投げ込みをさせてくれない。

「肩は消耗品」という合理的な考え方で、チームで預かった大切な投手の肩の状態には非常に敏感なのだ。

 今季、ドジャースへ移籍した前田健太は、日本でもこの合理的な考えで投げ込みをしなかった。反対に、三浦大輔(DeNA)のように、投げ込むことで肩を作っていくタイプもいる。


阪神タイガース・岩崎優の調整法


 岩崎優がこのキャンプで見せた調整法は少し変わっている。下柳剛臨時投手コーチの直伝で、ブルペンで10球投げ、何本かダッシュを行い、再びブルペンで投げる。これを何クールか繰り返すのだ。

 岩崎がシーズンで先発して5回を投げ切れなかったことで、スタミナをつけて、自身の打席の後でもすぐにマウンドで平常に投げるためのトレーニングだという。

 ストレートの球速は135キロ前後で、どちらかというとキレで勝負するタイプの岩崎にとっては、球持ちのよさと、踏み出した足を支える下半身の粘りが生命線となる。いかに低い位置から、打者寄りでボールを離すかは、終盤のスタミナに左右される。

 2月16日、楽天との練習試合に7回から2イニング登板した岩崎は、3失点と思うような結果を残せなかった。

 昨シーズン3勝10敗と大きく負け越した岩崎。「またか…」と思わせたが、どうやらこの試合ではブルペンで100球前後を投げてからマウンドに向かっていたようだ。6回まで投げたことを想定し、終盤の投球を見極めていたのだ。

 もちろん、課題としてはクリアされていないが、調整法としては面白い。


根性論よりも合理的に考えて調整し結果を出す


 かつては、ブルペンといえば、古参の投手コーチが根性論をふりかざしていた。しかし最近は、科学的理論とまではいかないが、選手の状態に合わせて調整させる投手コーチが増えている。

 近年では、藤浪晋太郎(阪神)や、新人の桜井俊貴(巨人)のように、アマチュア時代から自らの調整法を会得している投手も珍しくない。

 残念ながら、投げ込み是非論の正解はない。

 しかし、何年も勝ち星を上げ続けるという結果が、プロでは全てだということに変わりはない。投手たちの調整法の追求は続く。

文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。

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