週刊野球太郎
中学、高校、プロ・・・すべての野球ファンのための情報サイト

決して順風満帆ではなかった…。 高校時代は控えも、プロ野球界で大活躍している男たち

 阪神・福留孝介が日米通算2000本安打を達成した。イチローの日米通算安打記録でも沸く今年、次に待つのは広島・黒田博樹の日米通算200勝だ。

 ドラフト会議では7球団が競合。高校入学時からすでにスター選手だった福留と違い、黒田が高校時代ずっと控え投手だったのは有名な話。そんな男が日本でもメジャーでもエースになり、200もの勝利を重ねたのだから、これほど夢のある話もない。

 高校球児【コース別】プロ入り物語・ユニーク篇。最終回は、黒田博樹に代表される「高校では補欠だった男たち」を取り上げたい。

上原浩治(東海大仰星高出身)



 まずは、「高校控え投手」から「世界一のクローザー」にまで登りつめた男、上原浩治に触れないわけにはいかない。

 大阪・東海大仰星高時代は元々外野手。のちに投手も兼任するようになるが、同級生のエースは建山義紀(元・日本ハムほか)。当然、「控え投手」が定位置だった。

 高校卒業後は1年間、浪人生活を経験。勉強とアルバイトに励み、大阪体育大に進学した。この浪人時代に取り組んだ地道な筋力トレーニングで球速が一気にアップ。大学でさらに素質が開花する。1997年には日本代表のエースとしてインターコンチネンタルカップに出場。当時151連勝中だったキューバ相手に投げ勝ったことでメジャーからも注目を集めた。

 以降、プロ野球では巨人のエースとして1年目から20勝。メジャーリーグでは紆余曲折を経て名門レッドソックスの守護神に定着。2013年、日本人初のワールドシリーズ胴上げ投手となった。今季は主に中継ぎとして活躍。6月24日にはメジャー通算500奪三振を記録している。


澤村拓一(佐野日大高出身)



 2010年、巨人にドラフト1位で入団を果たしたのが中央大の澤村拓一。その最大の武器は、大学生歴代最速となる157キロの剛速球であることに異論はないはず。

 そんな豪腕男にもかかわらず、意外なことに栃木・佐野日大高時代は140キロも投げることはできなかった。当時の最速は138キロ。それでも、高3春までエースだった。ところが、大事な最後の夏に向けての時期に調子を落とし、チームの3番手投手に。結局、夏の栃木大会では一度も登板機会はなかった。

 その悔しさを晴らすため、中央大学進学後に取り組んだのが、今や澤村の代名詞でもある筋力トレーニング。体重が15キロ以上増え、157キロの剛速球が投げられるようになったのだ。

 巨人入団後は1年目に11勝、防御率2.03で新人王を受賞。2015年からはクローザーに転向し、成功をおさめている。

又吉克樹(西原高出身)



 沖縄・西原高時代は元々内野手。普段の練習では毎日200球近く投げる「打撃投手」だったのが又吉克樹だ。ちなみに3年時、チームのエースだったのが島井寛仁(楽天外野手)。又吉は他の控え投手が調子を崩したため、沖縄大会で島井のあとを受け、リリーフとして登板を経験している。

 大学でも野球がやりたい。そう思った又吉は、親に「教師になるために大学に行きたい。野球はやらない」とウソをついて、創部間もない環太平洋大に進学。ここで、運命の出会いを経験する。環太平洋大野球部初代監督の田村忠義だ。

 田村は社会人時代、2度もドラフト指名された実績を持つサブマリン投手。又吉はそんな人物から、サイドハンド投手としての基礎を叩き込まれたのだ。入学当初、110キロ程度だったストレートは卒業するときには140キロ台に突入した。

 そんな又吉がさらに成長したのが大学卒業後、四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズに入団してから。1年目から最多勝のタイトルを獲得した投球内容が評価され、2013年ドラフトで、中日から2位指名を受けたのだ。

 今季こそ好不調の波が激しいが、昨季までは中継ぎとして2年連続で60試合以上を投げた又吉。高校時代、「打撃投手」として毎日200球投げたことで肩のスタミナがついたのだとしたら、何が功を奏するかわからない。


 今回は上原、澤村、又吉の3人をピックアップしたが、「高校控え投手」からプロ入りし、結果を残す選手は他にも多い。

 平野佳寿(オリックス)は鳥羽高時代の2年春夏、3年春と3季連続で甲子園に出場。2年春、3年春と2度もベンチ入りを果たしたが、いずれも控え投手に甘んじた。急成長を遂げたのは京都産業大進学後。4年間で通算36勝11敗404奪三振という結果を残し、2005年の大学生・社会人ドラフトでオリックスに希望枠で入団している。

 十亀剣(西武)は愛工大名電高の3年春、同校初となるセンバツ優勝を経験。ただ、十亀自身は2番手投手だった。大学は日本大に進学。1部と2部を行き来していたチーム状況もあり、東都大学リーグ1部では1勝も挙げられず。頭角を現したのは、社会人のJR東日本に進んでからだ。

 北海道や沖縄など、早い地域ではすでに始まっている甲子園への道。ドラフト上位候補、といわれる選手たちへの注目は日増しに高まっていくはずだ。でも、背番号が二桁の選手にもダイヤの原石、将来の黒田や上原が埋もれている……そんな視点で、隅から隅まで球児たちの夏の戦いの行方を見守っていきたい。


文=オグマナオト(おぐま・なおと)

記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします
本誌情報
雑誌最新刊 野球太郎No.32 2019ドラフト直前大特集号 好評発売中
おすすめ特集
2019ドラフト指名選手一覧
2019ドラフト特集
野球太郎ストーリーズ
野球の楽しみ方が変わる!雑誌「野球太郎」の情報サイト
週刊野球太郎会員の方はコチラ
ドコモ・ソフトバンク
ご利用の方
KDDI・auスマートパス
ご利用の方