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「名前勝ち」できる大阪桐蔭・西谷浩一監督の勝負強さと「名前勝ち」コンプレックスを払拭して欲しい注目監督たち

 今夏の甲子園は龍谷大平安(京都)、九州国際大付(福岡)、東海大相模(神奈川)といった優勝候補が初戦で敗れる中、北信越勢が大躍進。その活躍ぶりを見ていると「本当に地域格差がなくなってきたなあ」と思うとともに、強豪校の「名前勝ち」がなかなか通用しなくなってきている事実にも突き当たる。

 そんな波乱含みの展開で、あらためて知らしめられたのが2年ぶり4度目の優勝を果たした大阪桐蔭(大阪)のしぶとい試合運び。初戦の開星(島根)戦などは典型だが、最後には乱戦となる試合もきっちりとものにしていく様は、まさに二枚腰、三枚腰の勝負強さだ。

 常に大型チームのイメージで見られがちな大阪桐蔭だが、その真骨頂は「粘っこくて、泥臭くて、負けない野球」。事実、大阪桐蔭は追い込まれてからがまた恐ろしい。「逆転のPL」といわれた時期や清原和博、桑田真澄のKK時代のPL学園にしても、追い込まれてからが本当に強かった。

「いつか逆転されるのでは……」

 試合中盤以降に相手を不安にさせる見えない力こそが、本当の「名前勝ち」の威力なのだ。それは「やっぱり勝てなかった」という負け癖を相手に植え付けることにも繋がっていく。

 『野球太郎No.010 高校野球監督名鑑号』に掲載されている西谷浩一監督のロングインタビューでは「しぶとさ」のバックボーンが語られ、「粘って粘って後半勝負」が、西谷監督がいつも口にするフレーズとして挙げられている。平成の最強軍団・大阪桐蔭を築いた西谷野球の真髄に触れるアーティクルとしてぜひご一読を。



 さて、この原稿がアップされた頃には、2015年のセンバツを睨んだ秋の大会に向けて各校の新チームが始動している。そこで「監督名鑑号」のロングインタビューで取り上げながら夏の甲子園に届かなかった監督のうち、以下の3人を秋の注目株としても紹介したい。

●末次秀樹(真颯館/福岡)

 選手としては柳川商(現柳川)の捕手で4番として、1976年夏の甲子園で8打席連続安打の大会記録を達成。監督としては2000年に柳川で春夏連続甲子園ベスト8。数々の実績を誇る末次監督が2013年の春に、やんちゃくれ部員の揃う真颯館の監督に就任した。同年秋には部員不足のため県大会を出場辞退。そんな無名校の監督を引き受けたことに周囲は驚いたが、末次監督は真颯館で、日が暮れるまで野球をして遊んでいた「原風景」を取り戻したという。2014年には末次監督を慕って1年生も多数入部。福岡の名将の新しい挑戦に乞うご期待。

●鍛治舍巧(秀岳館/熊本)

 松下電器(現パナソニック)の監督や日本代表チームのコーチなどを歴任。甲子園中継の解説者としてもお馴染みのアマチュア球界の重鎮が2014年、ついに高校野球監督に就任。2014年の春に行われたRKK旗大会では熊本球界の名門・熊本工を破り、優勝を遂げるなど早くも実績を積み上げている。独特の育成メソッドを誇る鍛治舍野球がよりチームに浸透し始める今秋は、どんな戦いを見せてくれるだろうか。

●竹本修(市尼崎/兵庫)

 元プロ出身監督のパイオニア的存在。「プロになったら二度と高校野球の世界には戻れない」と言われていた時代に覚悟をもってプロに飛び込み、覚悟をもって教壇に立ち続け、念願の高校野球監督になった苦労人。人生の酸いも甘いも噛みしめてきた人情派監督として慕われる竹本監督は、2000年の監督就任以来、強豪揃いの兵庫で公立の“イチアマ”を率いて、度々県大会上位に進出している。いつの日か、甲子園の大舞台で采配を振る竹本監督の姿を見たいと願う者は多い。


 新たなチャレンジに挑むニューカマーが「名前勝ち」できる強豪校の足をすくうことも高校野球の醍醐味。そして、名前コンプレックスを払拭したニューカマーが「名前勝ち」できる強豪校へと変貌していく姿も我々はたくさん見てきた。

 2015年の高校野球がスタートするこの秋。永久保存版としても使える「高校野球監督名鑑号」を片手に、「監督」や「vs強豪校」を切り口にして秋の大会をチェックしてみてはいかがだろうか。「49地区別有力高校野球」コーナーには名将同士の注目対決なども載っているので、こちらも観戦のガイドにして欲しい。



■ライター・プロフィール
山本貴政(やまもと・たかまさ)/1972年3月2日生まれ。音楽、出版、カルチャー、ファッション、野球関連の執筆・編集・企画・ディレクションを幅広く手掛けている。また音楽レーベル「Coa Records」のディレクターとしても60タイトルほど制作。最近編集を手掛けた書籍は『ブルース・スプリングスティーン アメリカの夢と失望を照らし続けた男』、編集・執筆を手掛けたフリーペーパーは『Shibuya CLUB QUATTRO 25th Anniversary』、ディレクションを手掛けた展示会は『Music Jacket Gallery』(@新宿高島屋)など。

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