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衝撃デビューの“アジアの大砲”呂明賜、“オリエンタル・エクスプレス”郭泰源ら台湾人助っ人列伝

文=藤山剣

衝撃デビューの“アジアの大砲”呂明賜、“オリエンタル・エクスプレス”郭泰源ら台湾人助っ人列伝
 今季から日本ハムでプレーしている台湾出身の王柏融がまずまずの活躍を見せている。7月9日のロッテ戦で右肩を痛め登録抹消となり(1カ月程度休養の見込み)、規定打席は割り込んでしまっているものの打率.281、3本塁打、32打点を記録。

 三冠王や、打率4割を2度記録した台湾時代と比較すればやや物足りなさは感じられるが、来日後は新たに対戦する投手ばかりで、NPBとCPBL(台湾プロ野球リーグ)のレベルや選手層の厚さも違う。その事情を考慮するなら、及第点と言っていい成績だろう。

 ほかにも今季は陽岱鋼(巨人)、宋家豪(楽天)、陳冠宇(ロッテ)らがプレー。これまでに多くの台湾出身の選手がやってきたが、今回は日本球史にその名を刻んだ台湾人助っ人をピックアップしたい。

アジアの大砲・呂明賜(ロ・メイシ)


 1988年に巨人に加入した呂明賜。期待されつつも、外国人枠の関係もあって2軍スタート。というのも、現在4人(投手だけで4人、野手だけで4人は不可)にまで拡大している外国人枠だが、当時は2人しかなかったのだ。

 当時の巨人の外国人枠は、実績のあるガリクソンとクロマティで埋まっており、呂はあくまで「第3の外国人」。しかしこの年の6月、クロマティの骨折により1軍昇格を果たすと、いきなり初打席でレフトスタンドへ3ランを叩き込む。

 その後も、1軍の試合に出られなかった悔しさを爆発させるように、出場17試合で本塁打は10本に到達。シーズン後半はさすがにペースダウンしたものの、1年目は79試合で16本塁打をマークした。

 インパクトの瞬間に重心が沈むような体勢となり、そこから大きくフォロースルーをとるダイナミックな打撃フォーム。これに日本の野球ファンは魅了され、あっという間にスターの座へと上り詰めた。

 ただ、華々しい活躍は、実質1年目だけ。2年目以降は、またも外国人枠の影響、さらには、一部コーチとの確執も取り沙汰され、出場試合数が激減。2年目は18試合で2本塁打、3年目は7試合、4年目は8試合でいずれもノーアーチ。日本での現役生活はここでピリオドが打たれた。

 結局、日本では通算18本塁打。特筆すべき記録ではないが、ブレイク当時の衝撃は、歴代助っ人最強クラスと言っても過言ではないだろう。

“オリエンタル・エクスプレス”郭泰源(カク・タイゲン)


 2リーグ制となった1950年以降、外国人投手としては歴代最高の117勝を挙げたのが郭泰源だ。

 郭が西武に入団した1985年は、まだ台湾プロ野球リーグ発足前。ナショナルチームの一員として国際大会でたびたび登板し注目され、日本が金メダルを獲得したロサンゼルスオリンピックにも出場し、台湾の銅メダル獲得に貢献した。

 西武では、1年目からおもに先発で活躍し、通算成績は13年間で、117勝68敗18セーブ、防御率3.16。最高勝率(1988年、1994年)、MVP(1991年)、ベストナイン(1991年)、ゴールデン・グラブ賞(1991年、1992年)などのタイトル獲得だけでなく、1985年6月4日には日本ハムを相手にノーヒットノーランを達成している。

 160キロに迫る速球は“オリエンタル・エクスプレス”とも称され、在籍期間中のリーグ優勝は10回を数える。まさに、西武の黄金時代を支えた台湾人助っ人だった。

イチローの盟友・チェン


 日本で腕を磨き、さらに新天地へステップアップしていった台湾人助っ人もいる。代表的なのがチェン(陳偉殷)だろう。

 2004年から2011年まで中日に在籍。入団当初は故障もあって能力を発揮できず、一時は育成契約も経験。そんな苦境を経て、2008年に頭角を現すと先発で14試合、リリーフで25試合に登板し、7勝6敗12ホールドを記録。さらに2009年はローテションの一角を担い、23試合に先発し8勝4敗ながら最優秀防御率のタイトル(防御率1.54)を獲得した。

 2012年、メジャーのオリオールズに移籍し4年間プレー。46勝32敗と結果を残し、2016年からは5年総額8000万ドルという大型契約を結んだマーリンズに在籍中だ。

 なお、今年の3月に現役を引退したイチローとは、マーリンズ時代のチームメイトでもある。イチローが引退会見で、台湾人記者に「チェンは元気にしてますか?」と聞いたことに対し、チェンがフェイスブックで「イチローさん、僕は元気です」と返答。クラブハウスのロッカーが隣同士だったことなど、当時の思い出を綴っている。

まだまだいる台湾人助っ人


 前述した選手以外にも、投手では荘勝雄(ソウ・カツオ/元ロッテ)、郭源治(カク・ゲンジ/元中日)、許銘傑(シュウ・ミンチェ/元西武ほか)、郭李建夫(カクリ・タテオ/元阪神)、野手では林威助(リン・ウェイツゥ/元阪神)、李杜軒(リー・トゥーシェン/元ソフトバンクほか)、大豊泰昭(元中日ほか)ら、これまで50人近くの台湾人選手が来日し、球界を盛り上げた。

 また、日本からも、選手、または指導者として多くの人材が台湾球界と関わっており、今春に自律神経の不調によりソフトバンクを退団した川崎宗則も、プロリーグ復帰を目指す味全ドラゴンズに選手兼コーチとして加入することが決まっている。

 お互いの国民感情もおおむね良好な日本と台湾。野球を通じ、両国の交流がますます深まることを願いたい。

文=藤山剣(ふじやま・けん)

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