週刊野球太郎
中学、高校、プロ・・・すべての野球ファンのための情報サイト

ナンバーワンであり、オンリーワン! 「1」や「31」が織りなす、ヤクルトの家族的背番号物語

 2016年はチャンピオンチームとして、シーズンに臨むヤクルト。

 昨季は打撃タイトル三冠を異なる3人で独占した強力な打線、バラエティ豊かな面々を揃えたブルペン陣を武器に、前年最下位からのV字回復を達成。今季も神宮の杜に傘の花が咲き、「東京音頭」が歌われる回数が多くなると、リーグ連覇の可能性が高まることだろう。


 1950年の国鉄スワローズ誕生からサンケイ、アトムズ、そしてヤクルトと球団名を変えてきたが、ファミリーのような懐の深さは良き伝統として残っている。今回はそんなツバメ軍団の背番号の系譜を見ていこう。

「1」山田哲人に受け継がれた「ミスタースワローズ」の象徴


 2015年12月8日。この日はスワローズファンだけでなくプロ野球ファンにとっても、記憶に留めておきたい瞬間があった。

 トリプルスリー男・山田哲人の背番号1への変更を発表、そして「1」の前任者・青木宣親(マリナーズ)によるユニフォームの手渡し式が行われたのだ。


 契約更改を終え、ホクホク顔で記者会見をしていた山田は青木先輩の登場に激しく動揺。本人には一切知らされていないサプライズでの登場だっただけに、無理もない。それだけヤクルトにとっての「1」は尊く、まさに「ナンバーワン」にふさわしいものなのだ。

 その歴史は小さな大打者・若松勉から始まる。プロ2年目の1972年から「1」を着けると、1989年の引退まで18年間にわたり誰にも譲らなかった。1978年の球団創設初優勝・日本一時には、不動の3番打者に座り大きく貢献。2度の首位打者、12度のシーズン3割を達成した球界屈指の巧打者である。

 また、北国の生まれらしく素朴でシャイな人柄で、監督としてリーグ優勝に導いた2001年には「ファンの皆様、優勝おめでとうございます!」という名言を残している。

 2代目「ナンバーワン」は池山隆寛。「ブンブン丸」の異名を取ったスラッガーで、90年代の黄金期を支えたひとりだ。足を大きく上げてフルスイングするのが特徴で、鮮やかな放物線を幾度も放った。「1」を着けたのは1992〜1999年の8年間で、その間3度のリーグ優勝・日本一を経験している。チームの栄光とともに、背番号1の池山を記憶している人も多いのではないか。


 池山から三塁のレギュラー、そして「1」を継承したのが岩村明憲。「何苦楚魂」を座右の銘とする反骨さが魅力の選手で、175センチの比較的小さな身体に筋肉の鎧をまとっていた。2001〜2006年の6年間「1」を背負い、その後はメジャーリーグへ。NPB復帰後の2013〜2014年は古巣に戻ってプレーし、今もBCリーグ・福島で選手兼任監督ならびに球団代表として戦い続けている。

 岩村と同様ヤクルトで「1」を背負い、メジャーリーガーになったのが前述の青木。「1」を背負ったのは2010〜2011年の2年間のみだが、当時の応援歌の歌詞に「世界に輝くナンバーワン」とあったのは印象深い。

 青木が「23」から「1」に変更する際には、既に生え抜きスターが身に着けてきた偉大な番号だという認識が強かったとされる。その証拠に、青木は球団からの変更打診を何度も固辞。「1」を身につける決意をしたのは、奇しくも若松の野球殿堂入りだったそうだ。

 そして、今季からは山田が「1」を継承。入団時には青木の「23」を引き継ぎ、今度は「1」を受け継ぐ。流れとしては完璧だ。

 某アイドルの有名な歌ではないが、「ナンバーワン」であり「オンリーワン」な系譜を歩んできた背番号「1」。山田がいつまでつけるかわからないが、今後も末永く幸せな時間を過ごしてもらいたい。

「31」山崎晃太朗は“真中二世”になれるか


 真中満監督が現役時代につけていたのが「31」。今季からはドラフト5位ルーキー・山崎晃太朗が背負うが、然るべき人間が着けたといえる。なぜなら、日本大出身の外野手で左投げ左打ち、俊足巧打が持ち味と、指揮官の現役時代を彷彿させるものが多くあるのだ。


 改めて真中監督の選手時代を振り返ると、1993年の入団から2008年の引退まで16年間ずっと「31」を背負い続けた。球団史を紐解いてもこの番号を最も長くつけているのが真中監督で、内角高めのボールをクルッと回って本塁打にする打撃とともに思い出す人は多いのではなだろうか。

 2001年日本一時の1番・中堅を務め、晩年は代打の切り札として活躍。2007年には代打起用回数98回、代打安打31本のシーズン記録を打ち立て、これは今も破られていない。

 翻って、山崎も開幕1軍に向け必死のアピールを続ける。ドラフト指名時には「真中2世」の呼び声もあったが、本当の意味でそう呼ばれるためには攻守にわたり活躍を続けなければならない。

 果たして、神宮のフィールドを「31」が再び駆け回るのか注目だ。

文=加賀一輝(かが・いっき)

記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします
本誌情報
雑誌最新刊 野球太郎No.32 2019ドラフト直前大特集号 好評発売中
おすすめ特集
2019ドラフト指名選手一覧
2019ドラフト特集
野球太郎ストーリーズ
野球の楽しみ方が変わる!雑誌「野球太郎」の情報サイト
週刊野球太郎会員の方はコチラ
ドコモ・ソフトバンク
ご利用の方
KDDI・auスマートパス
ご利用の方