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歴代オールスターゲーム、“衝撃度がすごすぎた”忘れられないホームラン5選


 いよいよ、オールスター。今年は福岡ヤフオク!ドーム、横浜スタジアムでの開催だ。ホームランテラスのある福岡ドーム、そして12球団の本拠地でもっとも両翼の狭いハマスタとあって、どうしても期待したくなるのが球宴の華・ホームランだ。

 過去、球宴を彩ってきた数多のホームラン。なかでも、衝撃度の大きかったホームランを5つ取り上げたい。

1971年 阪神・江夏豊「9者連続三振」の陰にかくれた一発


 「1971年×球宴×江夏豊」といえば、もはや説明不要の伝説「9者連続三振」だ。第1戦の先発マウンドに立った江夏豊(阪神)は1番から9番まで、全員から三振を奪って、当然のようにこの試合のMVPに選ばれた。

 だが、仮に「9者連続三振」を逃していても(「ブチ、追うな!」でおなじみの逸話だが、9人目・加藤秀司のキャッチャーファウルフライを仮に田淵幸一が捕っていたとしても)、江夏がMVPだった可能性は高い。

 その理由は、この試合の先制点にして決勝点である3ランを放ったのが江夏だから。相手は阪急のエース、通算350勝の米田哲也だからこれまたスゴイ。この試合のスコアは全セの5対0。まさに「投打二刀流」の、江夏独演会だった。


1974年 阪急・高井保弘「球宴史上初の代打逆転サヨナラ弾」


 1974年の第1戦は9回表終了時点で2対1。1点を追いかける全パは、最後の攻撃で1死一塁のチャンスを迎えた。この場面で、チームを率いていた野村克也捕手兼監督(南海)は代打の切り札・高井保弘(阪急)をバッターボックスに送った。

 高井といえば、この年、代打本塁打の日本新記録(通算14本)を樹立。そのご褒美的な意味もあって、野村監督による監督推薦でのオールスター初出場だった。

 高井最大の武器は、その徹底した観察力。相手投手をよく観察し、球種のクセを見破る術に長けていた。

 この時の相手、松岡弘(ヤクルト)に関しても、過去に一度だけ対戦したオープン戦でクセを見破っていたというからすさまじい。果たして、狙い通りの内角低め、速い球を振り抜くと、打球は左中間スタンドに弾丸ライナーで突き刺さったのだ。

 日本一の代打男による、球宴史上初の代打逆転サヨナラ本塁打が生まれた瞬間だった。


1978年 阪神・掛布雅之「球宴史上初の3打席連続本塁打」


 1978年の第3戦、阪神の若き主砲・掛布雅之は全セの3番を任されていた。迎えた4回の第2打席、佐伯和司(日本ハム)からライトスタンドにソロ本塁打を放ち、掛布劇場の幕が開けた。

 続く5回の3打席目。今度は佐藤義則(阪急)のストレートを振り抜くと、打球はまたしてもライトスタンドへ。そして8回の第4打席。パ・リーグが誇る速球王・山口高志(阪急)の打ち気をそらすカーブをとらえると、打球はみたび、ライトスタンドへ突き刺さったのだ。

 実はこの年の球宴・第1戦でも、広島のギャレットが「1試合3発」の球宴記録を作っていた。

 ところが、掛布はそれを上書きする史上初の「3打席連続弾」。掛布が名実ともに「阪神の4番」「ミスター・タイガース」へと飛躍する上でも、なくてはならない貴重な1日となった。

1990年 中日・落合博満「意地の一発」


 1990年は野茂英雄(近鉄)のルーキーイヤー。「トルネード投法」のユニークさも手伝って人気を集め、ルーキーながらファン投票1位でオールスター初出場。そんなゴールデンルーキーを迎え撃ったのが全セの4番・落合博満(中日)だった。

 試合前、記者から野茂の印象について訊かれた落合は「オジンくさい投手だ」と酷評。決め球のフォークボールばかりで直球勝負をしてこない、と挑発した。

 迎えた第1戦、落合の第4打席で初対決。“オジン発言”を耳にしていた野茂はあえてのストレート勝負。145キロの内角低めに詰まった落合の打球は平凡なライトフライ。まずは新人・野茂に軍配が上がった。

 第2ラウンドは翌日の第2戦。全パの先発を任された野茂は、落合にまたしてもストレート勝負を挑む。第1打席こそショートフライに打ち取ったものの、第2打席でついに落合が野茂のストレートをとらえ、レフトスタンドに突き刺さる2ランホームラン。ベテランの意地と知略が功を奏した瞬間だった。


1996年 近鉄・カズ山本「故郷で涙の代打スリーラン」


 1996年の球宴第1戦、舞台はダイエーの本拠地、福岡ドーム。試合は3対3の同点で6回裏、パ・リーグの攻撃。1死一、三塁と勝ち越しのチャンスで、打順はダイエーの若き主砲、小久保裕紀を迎えた。

 ところが、ここでなんと小久保に代打が告げられる。ブーイングが起きてもおかしくはない状況だったが、選手交代のアナウンスを聞いた観客は、むしろ大歓声で代打を出迎えた。

「オール・パシフィック。小久保に代わりまして山本和範。近鉄バファローズ」

 大歓声の理由は、山本和範ことカズ山本が福岡出身であること。前年まで、ダイエーに所属しながら、志半ばで戦力外通告を受けたこと。そして、そこから不死鳥のように復活を果たし、ファン投票でオールスター出場を果たしたからだった。

「こんな俺を選んでくれたファンのためにも、無様なバッティングはできない」

 そう心に秘めたカズ山本は、藪恵一(阪神)のストレートを一閃。パ・リーグの勝利に貢献する逆転スリーランとなり、山本はMVPに選出された。

「まさか打てるとは思っていませんでした……。まぐれです……」

 ヒーローインタビューでマイクを向けられても、涙で言葉が詰まったカズ山本。そんな男の意地の一発に、満員のファンもまた涙を流したのだ。

 もちろん、ここで挙げた5つのホームランエピソードはほんの一例。もっと思い出深いホームランだって、それこそファンの数だけあるはずだ。そんな期待に応え、今年はどんなアーチを描いてくれるのか?

 試合前のホームランダービーとともに、その放物線の行方を見守りたい。


文=オグマナオト

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