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松坂大輔、島袋洋奨、藤浪晋太郎。“春夏連覇”男たちの「何も言えなくて…夏 2017」

松坂大輔、島袋洋奨、藤浪晋太郎。“春夏連覇”男たちの「何も言えなくて…夏 2017」

 いよいよ開幕する第99回全国高等学校野球選手権大会。年々、群雄割拠の度合いが増している高校球界だが、そうはいってもセンバツ王者、大阪代表・大阪桐蔭の「春夏連覇」が叶うかどうかは注目点のひとつだ。

 今から5年前の2012年に史上7校目の春夏連覇を成し遂げた大阪桐蔭。もし今回も連覇が実現すれば、史上初となる2度目の春夏連覇達成となるわけだ。

 過去、春夏連覇を成し遂げた学校は99回の歴史においてたった7校しか存在しない。

■1962年
作新学院(栃木)

■1966年
中京商(愛知、現・中京大中京)

■1979年
箕島(和歌山)

■1987年
PL学園(大阪)

■1998年
横浜(神奈川)

■2010年
興南(沖縄)

■2012年
大阪桐蔭(大阪)

 今大会はこの7校のうち、箕島とPLをのぞいた5校が甲子園に顔を揃える形となった。古くからの甲子園ファンほど、その馴染みの名前が甲子園に戻ってきたことを喜んでいるのではないだろうか。

 さて、プロに話を移せば、高校時代に春夏連覇を成し遂げた投手は、現役ではたった3人しかいない。1998年の横浜のエース・松坂大輔(ソフトバンク)。2010年の興南のエース・島袋洋奨(ソフトバンク)。そして、2012年の大阪桐蔭のエース・藤浪晋太郎(阪神)。

 かつて、春も夏も負けることを知らず、世代の頂点に立った3人の男たち。母校が甲子園に凱旋するこの夏、奇しくも3人揃って1軍の舞台にも立てず、苦しい時間を過ごしている。復活のエールとすべく、栄光の日々と現状の姿を振り返っておきたい。

1998年と2017年の松坂大輔


 「平成の怪物」「日本のエース」。大げさすぎる修飾語でもその存在感を表現しきれなかったのが、在りし日の松坂大輔だ。

 1998年、横浜のエースとしてセンバツ優勝を成し遂げると、「打倒! 松坂」を合言葉に挑んできた神奈川の猛者たちを寄せつけず、夏の甲子園に帰還。2回戦では、初戦でノーヒットノーランを演じた鹿児島実の杉内俊哉(巨人)に投げ勝ち、準々決勝ではPL学園との延長17回におよぶ伝説の死闘を制し、250球の完投勝利。準決勝では明徳義塾から奇跡の逆転劇で勝利をもぎとり、そして京都成章との決勝戦でまさかのノーヒットノーラン。

 あの夏、甲子園のマウンドに君臨した松坂は、あまりに圧倒的だった。

 あれから19年、右肩痛に苦しむ松坂はマウンドにすら立てていない。

 7月上旬に、キャッチボールができる状態にまで回復、という報道が流れたが、その後はまた、何の音沙汰もない状況だ。3年契約の3年目。このままボールも握らず、何も言葉を発しないままシーズンを終えてしまうのだろうか。

 奇しくもこの夏は、母校・横浜だけでなく、決勝戦で戦った京都成章も甲子園に出場。あのノーヒット決勝戦以来、19年ぶりの甲子園だという。時の流れを痛感するばかりだ。


2010年と2017年の島袋洋奨


 身長172センチの小さな体を補うために編み出した「琉球トルネード」。その独特なフォームでまさに旋風を巻き起こしたのが2010年の島袋洋奨と興南だった。

 まずは春。センバツに出場した島袋は、1回戦から14個の奪三振を記録。その後も順調に勝ち進み、見事にセンバツ優勝を達成した。

 だが、沖縄県民にとって「夏」こそが悲願。それまで、沖縄勢はセンバツで優勝することはできても、夏の甲子園を制することがどうしてもできなかったからだ。そんな「沖縄の夢」も背負って夏の甲子園にやってきた島袋。もっとも苦しんだ報徳学園との準決勝で、序盤に5点のリードを許しながら大逆転勝利を収める。その勢いのまま、決勝では東海大相模を13対1で圧勝。沖縄勢初となる夏制覇を、春夏連覇で成し遂げたのだ。

 あの年、島袋は春・夏の甲子園で11勝0敗、102奪三振を記録した。

 あれから7年。中央大を経て、プロ3年目の島袋の主戦場は2軍と3軍の試合だ。

 今季、7月21日には阪神2軍との試合で甲子園のマウンドを踏み、1イニングながらノーヒットピッチング。28日には広島2軍との試合で今季ファーム1勝目と、母校が甲子園出場を決めて以降、いい内容を続けているのは朗報だ。

 この夏の興南は、「島袋2世」と呼ばれる1年生左腕・宮城大弥(ひろや)の存在も大きなトピックス。島袋を彷彿とさせるトルネード投法から、沖縄大会で三振ショーを演じた。そんな後輩たちの存在も、発奮材料のひとつとしたい。

2012年と2017年の藤浪晋太郎


 ここ最近、「最強横綱」「21世紀最強チーム」とも称される大阪桐蔭。その存在感を高めたのが、間違いなく2012年の春夏連覇であり、その立役者である藤浪晋太郎だった。

 センバツ1回戦で大谷翔平(日本ハム)を擁する花巻東に勝利すると、決勝では、田村龍弘(ロッテ)、北條史也(阪神)を擁する光星学院(現・八戸学院光星)を退け、センバツ優勝を達成。大会で投げた5試合すべてで150キロ以上を記録したのは史上初の快挙だった。

 それでも、藤浪は満足しなかった。「春勝っても、夏勝たなければ意味がないんです」と口にし、夏の甲子園に登場。初戦から14個の三振を奪うと、準々決勝でも13奪三振。続く準決勝では強豪・明徳義塾を相手に2安打しか与えず、完封勝利で決勝戦に進出した。

 迎えた決勝の相手は、センバツと同じく光星学院。しかし、雪辱に燃える光星ナインをまったく寄せつけず、決勝でも打たれたヒットは2本だけ。決勝戦史上最多タイの14奪三振を記録し、2試合連続完封。最後の打者を152キロのストレートで空振り三振にした瞬間、藤浪は両手を突きあげ、そしてキャッチャーの森友哉(西武)と抱きあった。

 あの年、誰よりも高みに登りつめたのは、身長197センチのエース・藤浪だった。

 あれから5年。阪神入団後も「甲子園のエース」として活躍を続けながら、今、その姿は甲子園にはない。

 今季、制球難からプロ5年目にして初の無期限2軍調整中。その2軍でも、頭部への危険球を含め7四死球&7失点と大乱調だった7月2日の試合以降、3週間もマウンドにすら立てなかった。1軍復帰には、まだ時間がかかりそうだ。


 苦しい夏を過ごす、かつての“春夏連覇”男たち。その勇姿が復活するのを待ち望んでいるのは、在りし日の姿を知る甲子園ファンであるのは言うまでもない。


(オグマナオト)

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