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受験シーズン到来! 誰もが悩む進路・高校選びについて〜どうやって決まる、どうやって決める?(後編)

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●それ、ほんとに決まってるの……?

 選手と硬式クラブと高校間で話が進み、いわゆる野球界でいうところの「進路先が決まった」という状態になっても、企業のように内定通知のような書面が発行されるわけではない。
(少なくとも私はそのような書面は見たことがない)。

 そのため、中学校側(特に担任)が

「決まった? でも、試験に通ってないじゃない」

「決まった確証がどこにあるの?」

「そんなおいしい話ある? 騙されてない?」

「あなたのこんなひどい成績で試験が大丈夫なんて思えない」

 といった反応を示すケースも少なくない。

 しかし、担任に「確証は?」と言われても、実際に形に残っているものは何もなく、選手側は「口約束ですが」としか言えなかったりする。

 中には「過去にそうやって決まったって言ってたけど、結局、直前になって話がなかったことになったケースが何度もあるのよ!」といった実例を挙げてくる先生もいるらしく、選手側のほうがいつしか不安になってしまうケースもあると聞く。

 そのため、高校サイドが比較的早い段階で、中学校に連絡を入れ、実際に学校まで赴いてくれると学校側の疑念と選手サイドの不安は相当解消される。

●我が家の次男の場合

 我が家の息子2人は2学年違い。長男の高校の進路が私立高校に決まった時点で「さすがに下は公立にいってもらわんと家庭の財政的にきつすぎるな……」というのが私と妻の偽らざる気持ちだった。

 しかし、上が私立に行ったから、下はダメというのも、次男にすればやるせない話。親の心情としてはなんとかしてやりたいが、現実的に考えれば、やはり厳しい。妻は早い段階で「かわいそうな話になるけど、あんたは公立しか無理よ」と伝えていたようだった。

 中学では硬式クラブではなく、部活の軟式野球を選択した次男。中学2年生になる直前の時期に気持ちを確かめるべく、「高校、どう考えてるんだ? おまえの正直な気持ちで言ってみろ」と尋ねてみた。

 次男の答えは「甲子園が真剣に狙えるようなレベルの高いところでやりたい。そのためなら家を出て寮生活をしてもいい。大学でも野球がやりたい」というものだった。兄よりも野球に対する志が高い点が不憫さを増幅させた。

 そんな中、当時中学2年の次男に興味を持ったという関東の高校が現れた。2年の終わりごろには正式に「うちに来てもらえませんか?」という連絡が入り、「お願いします」と返事すれば、野球進路界でいうところの「進路が決まる」という状況になっていた。


●縁を信じて

 予想もしていなかった展開に妻と私は戸惑うばかりだった。

 その高校はここ数年で甲子園出場も複数回果たしており、「そんなレベルのところへ行って、やつが通用するとは思えんのだが……?」という思いも湧き上がる。

 妻は「息子を家から送り出す決心が果たしてつくのか?」という不安が拭えないでいた。

 そしてなにより、現実問題として、寮暮らしとなれば、特待生条件がついたとしても、地元で私学に通うよりも経費がかかるという点も到底無視できなかった。

 しかし、心情論でいえば、次男がいわば自分の力で引き寄せた話をむざむざ壊したくないという気持ちも当然湧き上がる。

 次男に「おまえの正直な今の思いを教えてくれ」という質問を約1年ぶりにぶつけた。

 次男の返答は「学年の中で一番下手なところからのスタートでもいいから勝負してみたい。練習中に死んでもいいというくらいの気持ちでやる」だった。

 正直、私はこんな言葉が次男の口から出てくるとは思わなかった。

 ここで行かせなければ、後々、必ずや後悔する予感に襲われた。強い縁があっての話だ。ここは逆らうのではなく、流れに乗ったほうがいい。

 中学生で最後の大会が終わった翌週、次男を連れ、車で関東の高校に向かった。練習を一通り見学した後、監督、部長に「よろしくお願いします」と伝えた。

 果たして今後、彼の高校野球生活がどうなるのかまったく見当がつかない。

 楽しみもあるにはあるが圧倒的に不安が勝っている。

 そのせいだろうか。先日、入学試験で次男が落ちた夢を見てしまったのは、ここだけの話である……。

(終わり)

文=服部健太郎(ハリケン)/1967年生まれ、兵庫県出身。幼少期をアメリカ・オレゴン州で過ごした元商社マン。堪能な英語力を生かした外国人選手取材と技術系取材を得意とする実力派。少年野球チームのコーチをしていた経験もある。

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