「なんで阪神だけ、『代打の神様』と呼ばれるんですかね?」
議題は里崎の素朴な疑問から始まった。1985年の日本一にも貢献した「浪速の春団治」川藤幸三の時代から始まるとされる、阪神の伝統「代打の神様」の系譜。
以降、真弓明信、八木裕、桧山進次郎らがその名を受け継いできた。そして、2010年代に「代打の神様」と呼ばれたのが関本だった。実際、2012年の開幕戦代打逆転スリーランや2014年の巨人戦で放った代打逆転満塁ホームランなど、ここぞの場面での一振りは今でもファンの間で語り種だ。
「そう呼んでいただけるのはありがたいこと。阪神でよかったなぁと今でも思いますよ」と当時を振り返った関本に、里崎がさらなる疑問を投げかけた。
「で、本当の神様って誰? だって、神様はひとりじゃないですか?」
里崎からの剛球質問に、会場のファンも興味津々。しかし、関本はこの問いにさらっと返答してみせた。
「七福神です!」
会場がこの日一番の爆笑に包まれたのはいうまでもない。
昨年限りで引退した関本。では、今年は誰がその名を受け継いだのか?
「狩野(恵輔)がなるはずなんですけど、あいつ、断りよるんです。自分はまだそんな立場にないです、って」と関本が語る。そもそも、「代打の神様」にはどうやったらなれるのだろうか?
「これね、ファンの皆さんに決めていただくんです。『僕、代打の神様やってますー』なんて言ったことないですから。襲名式もないですからね(笑)」
だからこそ、会場を埋めたファンに「次の神様候補、誰がいいですか?」と里崎部長が話を振ると、「関本さんみたいに、任せられる選手がいないんですよ」と声が飛ぶ。
「でも僕も、さすがに毎打席打てるつもりではなかったですよ」と関本が答えると、ファンからこんなコメントが返ってきた。
「違います。結果よりも、“打ってくれそうな気にさせてくれる”。ファンにとっては、それだけでいいんです」
ファンが決め、ファンが呼ぶ「代打の神様」の大看板。だからこそ、呼ばれる当人にしてみれば、そのプレッシャーたるや尋常ではないという。
「プレッシャーはね、めっちゃあるんです。だって、僕が打席に立つのって、だいたい試合終盤。相手ピッチャーは中継ぎエースかクローザーばっかり。もう、抑えるのが当たり前の投手たちですよ。そんなの、どう考えたって厳しいじゃないですか(笑)」
そもそも、3割打てれば一流の打者稼業において、1試合にたった一回、一振りに賭けなければならないのが代打という難しいポジションだ。
「でも、皆さん、『出てきた関本ぉ! 打ってくれよ』と、まだネクストにいるときからサヨナラ用の風船膨らませて。ちょっとちょっと、その風船、一旦降ろしてぇ、と。そんな心境でした」
一方で、ファンもそんな厳しい境遇を理解しているからか、関本には一度も野次が飛んでこなかったという。ただ、ひとつだけ納得がいかないことがあったと現役当時を振り返る。
「僕、24歳で『いぶし銀』言われて、28歳で『ベテラン』言われて、31歳で『神様』。『いぶし銀の若手』って、もうわけわからんでしょ(笑)」
ここだけの球界マル秘トークも、熱い野球論も繰り広げられる『里崎智也のプロ野球語り呑み』。この日も、阪神の超変革について、鳥谷敬や藤浪晋太郎らの今季の不調の原因について、OBだからこそのオフレコ話がいくつも飛び出し、ファンを唸らせた。一体、どれだけギリギリトークばかりなのか? それは、里崎部長がこの日叫んだ次のセリフからも明らかなはずだ。
「ここは一カ月に一回、溜まったもんを吐き出す場なんです!」
次回開催は10月20日(木)に開催が決定。イベント情報について、詳しくはオンラインコミュニティ「乾杯!ほろ酔いプロ野球部」のホームページ(https://bukatsu.hikaritv.net/#/discover/5)もチェックを。
※文中、敬称略
文=オグマナオト