昨季の巨人リリーフ陣はかなり危うい状況だった。2015年から2016年にかけて守護神を務めた澤村拓一が右肩痛で全休。森福允彦、山口鉄也の両左腕もピリッとせず、1軍と2軍を行き来した。
そんななかでチームを救ったのは、西村健太朗と池田駿だった。西村はシーズン序盤こそ出遅れたが、マシソン、カミネロに次ぐ45登板。ルーキーの池田もチーム4位の33登板で即戦力となった。
しかし、このキャンプでは2月中旬に池田がコンディション不良で1軍から3軍へ。26日になって西村も下半身のコンディション不良で別メニュー調整になった。開幕まで1カ月あるが、万全の状態で臨めるかはわからない。
澤村拓一は調子を取り戻し、キャンプで最速149キロを記録したが、実戦でどこまで本来の力を発揮できるのかは未知数。蓋を開けてみなければわからない。
現時点でリリーフ陣の駒不足は明らか。本気で上原獲得に動くのが得策だろう。
実績あるバリバリメジャーリーガーのリリーフ投手は、巨人以外の球団もノドから手が出るほどほしいだろう。
上原の国内復帰のウワサが出るたびに必ず名前が挙がるのは阪神。大阪出身の上原は阪神ファンであることを公言しており、虎党もはるか昔から上原がタテジマのユニフォームを着ることを夢想している。
ただし、阪神のリリーフ陣は充実しており、上原を切望する状況ではない。そして何よりも巨人と阪神は、永遠のライバルでありつつも実は相思相愛の関係。いわば巨人OBの上原に声をかけることはしないのではないだろうか。
巨人ファンが懸念しているのは高橋由伸監督の存在がどうでるか。年明けのテレビ特番で上原は「アイツに命令されたくないんで(巨人に)いきたくない」「アイツのことを監督と呼びたくない」と高橋監督のことを語っている。
字面で見ると険悪だが、決して上原は高橋監督が嫌いなわけではない。同級生であり誕生日も同じの大親友。それがかえってやりにくさを生むこともある。
戦力が固まり、補強が終了するこの時期に上原を迎えられる資金力も必要だが、おそらく「上原フィーバー」で元は取れるとソロバンを弾く球団がほとんどだろう。
巨人の出方をうかがいつつも密かに獲得の準備を進める球団も出てくる。特にリリーフ陣に不安を抱える球団は必ず動くはずだ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)