「施設充実、戦力充実の私立。それに立ち向かう公立」
甲子園で判官びいきが起こる第一要因として挙げられるのがコレだ。ある意味では「弱い者を応援する」という義に沿っているが、もっと大きな要因があるのではないだろうか。
実は日本の高校の多くが国公立なのだ。現在、高校総数のうち、約75パーセントが公立校。生徒数では約70パーセントが公立の高校(中等教育学校なども含む)に在籍しているのだ。思ったよりも高い割合ではないだろうか。
さかのぼれば、公立の比率はもっと高くなる。つまり、日本人の大多数は国公立高校出身。
「オレは公立出身だから公立が好きだ!」
という主張を聞いたことはないが、大多数が無意識のうちに公立好きの傾向になるのも頷けるだろう。
そんな理由もあり、特別に高校野球ファンから大きな期待が注がれる公立校。過去の伝説的な旋風と同じような圧倒的な熱量を持ったブームを起こすのは、やはり公立校の可能性が高い。
それでは、この夏、甲子園に出場する公立校を紹介しよう。
・大曲工(秋田/県立/初出場)
・いなべ総合学園(三重/県立/6年ぶり2回目)
・市尼崎(兵庫/市立/33年ぶり2回目)
・市和歌山(和歌山/市立/2年ぶり5回目)
・境(鳥取/県立/初出場)
・出雲(島根/県立/初出場)
・鳴門(徳島/県立/5年連続11回目)
・唐津商(佐賀/県立/5年ぶり5回目)
・長崎商(長崎/県立/29年ぶり7回目)
・嘉手納(沖縄/県立/初出場)
スポーツ新聞などの予想でもっとも下馬評が高いのは、春夏連続出場のいなべ総合学園。校名的には私立っぽさがあるが、県立校で13万平方メートルの広大な敷地を持つ。うち体育施設は6万平方メートルにも渡り、充実した環境の“ニュータイプ公立校”といえるだろう。
また、鳴門も「徳島県内無敵」と名高い。ちなみに徳島県は現在に至るまで私立校の甲子園出場がない全国唯一の地区だ。
そのほかの学校は残念ながら高い下馬評を得てはいないが、逆にいえば“旋風”に期待できる。特に境、出雲の山陰勢や大曲工は、近年不調の県勢の鬱憤を晴らす活躍ができれば即旋風だろう。
初出場の嘉手納にも判官びいきの期待がかかる。ただでさえ沖縄は公立や私立を問わず、旋風が起きやすい“特区”。旋風マニアにはたまらない注目校だ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)