アフリカから第2、第3のプロ野球選手を生み出せるか!? 日本遠征のクラウドファンディングを実施中!
☆JICAとともに行われてきた野球の普及活動
「アフリカと野球」
ピンと来ないフレーズである。ボールひとつでプレーできるサッカーならば、グラウンドとも言えないような荒れた原っぱでも、裸足でボールを蹴り合う少年の姿を「アフリカン・サッカー」としてイメージできるし、世界規模のサッカーシーンでもアフリカのチーム、選手の活躍を目にすることができる。
その点、本格的にプレーしようとすれば、結構なお金がかかる野球と「貧困にあえぐアフリカ」とを結びつけることはなかなかできない。そもそも、アメリカ生まれの野球は、ヨーロッパ諸国の植民地であったアフリカでは「未知のスポーツ」だったと言っていい。
この「野球不毛の地」からプロ野球選手を目指そうというプロジェクトが立ち上がっている。広く知られているわけではないものの、途上国援助を実行する独立行政法人JICA(国際協力機構)が行っている青年海外協力隊の派遣を通じてスポーツ普及の援助活動や青年海外協力隊OBによってアフリカで野球普及活動が継続的に行われている。
その中の1つに、青年海外協力隊のOBである出合祐太さんによって、2008年に立ち上げられたのが「ブルキナファソ野球を応援する会」がある。ブルキナファソは西アフリカの内陸部にある世界最貧国のひとつだ。政情は不安定で、昨年もクーデター騒ぎが起こっている。そんな中、長年、青年海外協力隊による野球普及活動が行われてきた。この流れをくんで、「ブルキナファソ野球を応援する会」が発足し、四国アイランドリーグplusに送り込んだサンホ・ラシィナ(高知ファイティングドッグス)が昨年、3年目にして選手契約を勝ち取った。「西アフリカ初のプロ野球選手」という実績を1つ残したのだ。
☆『西アフリカベースボールプロジェクト』で第2のラシィナを生み出したい!
今回のプロジェクトはアフリカでの普及活動で野球に触れた少年たちに夢を与えるべく立ち上げられた。「プロ野球選手」を目標とし、西アフリカ一帯から約40人の選手を集めてセレクションを行い、選抜チームを編成し、日本遠征を試みるものだ。
その名も『西アフリカベースボールプロジェクト』。選手の出身国は、ブルキナファソに加え、ガーナ、ナイジェリア、コートジボワール、トーゴ……といった国々だ。意外かもしれないが、このような国々にも確実に野球は広がっている。
計画では6月末に選抜チームが来日。「ブルキナファソ野球を応援する会」の活動拠点である北海道で、日本ハムOBチーム、札幌大野球部などと試合を行い、その後、関東、関西、そして四国に移動し、ラシィナが所属する高知ファイティングドッグスとオープン戦を行う予定だ。この試合ではラシィナも西アフリカ選抜チームの一員としてプレーする。
このプロジェクトをきっかけに、ラシィナに続く「プロ野球選手」を日本の独立リーグに送り込み、さらにその先の夢であるNPB、MLBで活躍する選手の輩出を目指している。
そして、なんと言っても究極の目標は、2020年東京オリンピックの野球競技にアフリカのチームを出場させること。現状を考えると、まだまだ「見果てぬ夢」だが、アフリカの現状を肌で感じた出合さんは、貧困にあえぐアフリカの少年たちになんとかして夢や目標をもってほしいと、「先ず隗より始めよ」と、アクションを起こしている。
とは言うものの、プロジェクトの実現には大きな壁が立ちはだかる。12人の選手を日本に呼び、2カ月近く各地を転戦するにはそれなりの費用がかかる。その費用、350万円。これを「ブルキナファソ野球を応援する会」はクラウドファンディングで集めることにした。日本最大のクラウドファンディングサイト・READYFORにて現在支援を募集中だ。
「プロ野球を目指すアフリカの裸足の野球少年団を日本に招きたい!」
http://www.crowdfunding-navi.com/buzz.html?site_id=101%25Burkina
☆アフリカ人初のメジャーリーガー誕生の可能性!?
アフリカ人のアスリートの資質は、サッカー、陸上、バスケットボールなど、さまざまなスポーツシーンで我々は見せつけられている。ラシィナも3年前の来日時は、まだまだか細い少年だったが、選手契約を勝ち取った昨年と比較すると見事な体躯の野球選手に変貌を遂げていた。
シドニーで2月に行われた第4回WBC予選に出場した南アフリカ代表。オーストラリアの壁を越えることができず、2勝2敗の2位で惜しくも本戦出場を逃したものの、ニュージーランド、フィリピンに対しては力の差を見せつけ圧勝した。このチームの主力であるギフト・ンゴエペは現在ピッツバーク・パイレーツの一員としてメジャーのキャンプに参加、開幕までロースターに残れば、「アフリカ人初のメジャーリーガー」となる。ブルキナ野球界のチャレンジは決して夢想などではないのだ。
この夏、アフリカ野球の神髄をこの目で確かめたい人は、ぜひクラウドファンディングに参加してほしい。
写真提供=「ブルキナファソ野球を応援する会」
文=阿佐智(あさ・さとし)
1970年生まれ。世界放浪と野球観戦を生業とするライター。「週刊ベースボール」、「読む野球」、「スポーツナビ」などに寄稿。野球記事以外の仕事も希望しているが、なぜかお声がかからない。一発当てようと、現在出版のあてのない新刊を執筆中。ブログ「阿佐智のアサスポ・ワールドベースボール」(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041)
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