昨秋はエース右腕・大栄陽斗が先発完投する試合が多かったが、この春に継投パターンを確立した仙台育英の投手陣が抜けている。春の公式戦には8投手が登板した。大栄はストレートの平均球速がアップし、右打者へのスライダーに加え、左打者へのチェンジアップの精度も上がった。先発しない試合では三塁でスタメン出場し、抑えでマウンドへ。短イニングに全力を出せるようになり、負担が軽減した。同じく右腕の鈴木千寿も140キロを超えるストレートの内角へのコントロールがよくなり、ツーシーム、スライダーに磨きがかかった。
そして、この春、系列の秀光中から最速144キロ右腕・伊藤樹と最速147キロ左腕・笹倉世凪が入部。早速、公式戦デビューしている。中学軟式界から高校野球へ舞台を移し、どんな進化をしていくのか。3年間の成長を追う楽しみがある。
■将来性豊かな素材型多数
佐々木繕貴(古川学園)の指にかかった空振りを取れるストレートは見応えがある。打者がバントで押される球威あるストレートは5月に146キロをマーク。その後も140キロ超えを連発。夏の戦いぶりはもちろん、その先の将来も気になる右腕だ。素材でいえば、塩釜の安藤令も注目。粗さがあり、背番号は18番だが、140キロ中盤は出ているストレートが魅力だ。
松渕海星(松島)もスピードボールを持つ182センチ右腕。伸びしろたっぷりの2年生からも目が離せない。
初の東北大会出場の原動力となった井上聖南(東北学院)は投球時のグラブの使い方を変えて制球力がアップ。吉田凱(気仙沼向洋)はストレートとキレのある変化球で東陵を3安打完封した実績を持つ。
昨秋の東北大会4強に導いた古川・千坂優斗は一冬を越えて体も球も力強くなった。
右投手が豊富な宮城において、左腕で注目したいのは庄司陽斗(聖和学園)。コースへの制球力がある高い投手だ。
仙台育英で昨夏も4番を打っていた小濃塁がスケールアップしている。飛距離、打球の質がアップ。冬の間に苦手なコースを減らし、一球で仕留める確実性を上げた。状況に応じて切り替えができるようになり、須江航監督は「勝つチームのスラッガーになってきた」とうなずく。
伊藤康人(東北)は1年春からレギュラー。当てるのがうまいだけについつい手が出てしまうところもあるが、チャンスメークできる。守備範囲、スローイングなどにも不安がない。
1年秋に東北大会を経験している岩崎勇利(仙台南)は対応力があり、広角に長打を打てる。がっちりとした体躯で、春終了時点で高校通算25本塁打の丹治基(東北生文大高)は春の公式戦で4本塁打のパワーヒッター。県大会出場はならなかったが、仙台二の鈴木杜朗はヒットゾーンが広く、逆方向へ痛烈な打球を放つ。
巧みなリードを見せる高橋寛太(古川)や試合勘を身につけた朝倉優大(東北学院)といった秋春の上位校の捕手にも注目したい。
今年は私学に勢いがあり、公立の力がやや落ちる。
優勝候補は3季連続で県大会を制している仙台育英。
投打の実力はもちろん、試合巧者ぶりで負けない野球を見せる。
追う東北は投手力の弱さを攻撃でカバーしたい。
東北学院、聖和学園は初の春4強の実力を示せるか。
投手次第では古川学園が上位を脅かしそうだ。個々の能力が高い東陵、東北学院榴ケ岡も一発逆転を狙う。
古川、佐沼、仙台南、仙台三といった実力派公立校も地力を発揮し、私学を脅かしたいところ。