6月25日、中日との2軍戦のスターティングメンバーが複数ポジション制を象徴するものだった。
1番レフト・上本博紀、6番セカンド・板山祐太郎。いずれも本職であるポジションからあえて外し、慣れない守備につかせた。これは複数ポジション制を試すためのオーダーだった。
現在の阪神の野手で複数ポジションをこなさない選手は、鳥谷敬、福留孝介、ゴメスくらい。ほとんどの選手が2つ以上のポジションを掛け持ちしている。
北條史也のように内野のみ、高山俊のように外野のみを掛け持ちする選手はともかく、内野と外野を掛け持ちする選手が多いことに驚く。
前述の大和は当然のように内外野をこなしているが、これまでに西岡剛、新井良太、陽川尚将、板山祐太郎、今成亮太、中谷将大と7選手も、内外野の守備を課せられているのだ。
複数ポジション制を敷く目的のひとつには、試合展開に応じて守備位置を容易に変更すべく、選択肢が多ければ多い方がよいという意図があげられる。
これは選手にとっても、試合に出られるチャンス。自らをアピールする絶好の機会となる。
しかし、複数ポジションをこなせる技量が各選手に備わっているかといえば、はなはだ疑問だ。たとえば陽川は本職のサードの守備でさえ、未だ発展途上の身である。
先日、落球した中谷もセンターの守備では発展途上の域を超えていない。
まずは「プロフェッショナル」としてひとつのポジションにこだわるべきではないだろうか? 守備の乱れで、ここまで数試合を落としてきた阪神にとって、複数ポジション制は、やはり大きな課題として浮かび上がってくる。
「迷い」
首脳陣に垣間見えるこのキーワードが、今の阪神を象徴している。
開幕以来、複数ポジション制はもとより、打順も日ごと、頻繁に変わっている。その根本には、いい形を導きだすためのチーム戦略があるわけではなく、首脳陣の「迷い」があらわれたものとしてみる方が自然である。
首脳陣の「迷い」は、選手にすぐに伝染する。
「守備のほころび」
名手、大和のボーンヘッドがこの「迷い」からきたものだとは断言できないが、決断しきれない首脳陣が選手に何らかの悪影響を与えている気がしてならない。
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。