2006年から昨シーズンまでの5月の勝敗は以下のとおりだ。()内はシーズン順位
2006年 12勝13敗 (5位)
2007年 12勝11敗1分 (5位)
2008年 12勝11敗1分 (4位)
2009年 10勝12敗1分 (5位)
2010年 8勝14敗 (5位)
2011年 7勝12敗2分 (5位)
2012年 7勝14敗2分 (4位)
2013年 9勝13敗 (3位)
2014年 12勝12敗 (3位)
2015年 14勝12敗 (4位)
10年間の5月通算成績は103勝124敗7分け。10年間で5月勝ち越しを決めたのは2007年、2008年、2015年の3度のみ。やはり広島にとって5月は鬼門なのか? クライマックスシリーズ進出を果たした2013年、2014年も負け越しと5割という結果が出ている現状をみればそう言わざるを得ない。
このように5月失速説が根強い広島。しかし、失速の定義は3月・4月の好調さがあってこそ成り立つはずなのだが、ここ10年間の3月・4月の成績はどうだろうか?
2006年 8勝14敗2分
2007年 11勝15敗
2008年 10勝14敗
2009年 11勝11敗1分
2010年 12勝17敗
2011年 9勝5敗2分
2012年 11勝13敗2分
2013年 12勝14敗1分
2014年 18勝9敗
2015年 9勝16敗
通算101勝128敗8分と、5月以上に負けが込んでいる。そもそも広島が春先好調だったという前例があまりないのがおわかりいただけるはずだ。少なくともここ10年間に関してはそんな結果が出ている。これを見る限り、『鯉のぼりの季節まで』ということ以前に、鯉がのぼってすらしていないではないか!?
ではなぜ、広島が鯉の季節までの言われるのか? それは、単純にカープ=鯉というチーム名が原因としか思えない。
虎(阪神)、竜(中日)、鷹(ソフトバンク)、獅子(西武)など、その勇ましさをチーム名とする向きの強い中、鯉という淡水魚をチーム名に据えているのは異例中の異例だ。その珍しさもあってか、恐らく12球団の中で球団名でなく、最もチーム名で呼ばれているのは「カープ」であるのは間違いない。
それゆえに、他球団のファンは、鯉のぼりが宙を舞う季節はカープを連想し、鯉のぼりがしまわれる頃に忘れる。再びカープを見たら下位に沈んでいた…。この負の連鎖が、『広島は鯉の季節まで』という妙な格言の由来と考えられる。
そもそもなぜ鯉がチーム名になったのだろうか? カープというチーム名、その由来はいくつかあるが、
《鯉は滝を登り、龍になると言われている出世魚。その滝を登る鯉の姿に、原爆が投下された広島の復興の想いを込めた》
この由来が、カープとして親しまれている最大の理由と思われる。
そんな広島が2年ぶりに躍進している。猛打爆発中の今シーズンは球史に残る打線、1996年のビッグレッドマシンの再来とも言われている。この1996年は5月を16勝7敗と驚異の勝ちっぷりを見せている。
このまま打線爆発で5月勝ち越しを決めることができたとき、25年ぶりの悲願が訪れるのも夢ではないかもしれない!?
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)