まずは清宮の生い立ちから振り返ってみよう。
日本代表選手、そして監督として日本ラグビー界を牽引する清宮克幸氏(現ヤマハ発動機ジュビロ監督)を父に持つ清宮は、生まれながらにしてアスリートとしての将来を期待されていた。
ラグビーを始め様々なスポーツに取り組んでいたが、2006年夏の甲子園決勝、駒大苫小牧の田中将大(ヤンキース)と早稲田実の斎藤佑樹(日本ハム)の投げ合いを目にしたことで、一気に野球へと傾倒していく。
小学生時代は東京北砂リトルに所属し、2012年のリトルリーグ・ワールドシリーズで優勝。ちなみにその大会では、現地アメリカのメディアに「和製ベーブ・ルース」と報道されるなど、清宮の実力は野球の母国のファンにも伝わっていた。
リトルの次は、リトルシリアの調布シニアで汗を流す。早稲田実業へ入学。入学早々から話題を集め続けてきた。2度の甲子園に出場し、U-18ベースボールワールドカップの日本代表にも1年時から選ばれるなど、右肩上がりの成長曲線を描いてきた。
また、誰もが期待する高校通算本塁打を更新(111本塁打)。大きなプレッシャーがかかるなか、むしろそれを力に変えるかのようにアーチを連発し、ファンの期待に応えた。
しかし、誰が見ても怪物と認める男も高校卒業後の進路に関しては慎重で、大学進学も視野に入れながら検討。考え抜いた末、9月22日にプロ志望届を提出することを表明した。
冒頭に挙げた清原、松井、松坂ら高校時代から怪物と騒がれた3人は、卒業後即プロ入りで目覚ましい結果を残した。それだけにファン目線的には、まずは清宮が「怪物ルート」に乗ったことを喜びたい。
晴れてプロ志望を表明したとなると、次に気になるのはどの球団が清宮を獲得するのかということ。
もちろん、これだけの逸材だけに多くの球団が欲しているはずだが、筆者的にはソフトバンク、楽天、日本ハム、巨人、阪神、ヤクルトが特に狙っているように感じている。
そのなかで、一番、納得できそうな球団はどこだろうか? 筆者としてはソフトバンクを挙げたい。早稲田実の大先輩である王貞治氏(元巨人)が球団の会長を務め、記者会見で清宮自ら「(王氏の本塁打記録である)868本を目指したい」と語ったことからも、福岡に渡るのがしっくりくるように思えるからだ。
ソフトバンクでの起用法に関しては、一塁に内川聖一、指名打者にデスパイネがいるため、なかなか出番が回ってこないかもしれない。ただ、プロ入り後しばらくはプロの水に慣れ、課題と言われる守備を磨く絶好の機会ととらえれば、ソフトバンクほど恵まれた環境はないだろう。
U-18ベースボールワールドカップでは、木製バットへのまずまずの対応を見せたが、明らかにレベルの上がるプロの球質を考えると、「入団即活躍希望!」もいいが、いくらかの猶予期間があっていいのではないだろうか。
筆者のおすすめ球団に続いては、清宮に目指してほしい選手像を考えてみたい。と言っても、筆者の答えはもう出ていて……ズバリ、松井秀喜。やはり清宮には、「プロでも大成功した超高校級強打者」の系譜を継いでもらいたい。
巨人時代に本塁打王を3度獲得し、ヤンキースに移籍しても輝きを失わなかったスーパースター・松井。「55」という背番号に託された、王氏の持つ年間本塁打記録の更新は叶わなかったが、今、その背中を重ねられるのは清宮だけだ。
そう考えると、巨人に入団するのが一番ドラマチックにも映る、のだが……。果たして約1カ月にどんな結末が待ち受けているのか。今はまだ、神のみぞ知る話である。
今年は「男子サッカー日本代表のワールドカップ出場決定」や「桐生祥秀の100メートル走10秒切り」など、スポーツ界で多くのニュースが飛び交ったが、今年のドラフトはそれらに負けない国民的関心事になるはず。
もちろんその中心にいるのは清宮だ。運命に導かれるように野球を選んだ少年は、さらなる上のステージでどのような輝きを放つのか。刮目して見届けようではないか。
文=森田真悟(もりた・しんご)