このところ、シーズンオフの台風の目ともいえる存在となっているのが楽天。FAやトレードなど、選手の入れ替えを積極的に行っていて、それを主導しているのが石井一久GMだ。現役時代、日本ではヤクルトと西武に在籍し143勝、メジャーでもドジャースとメッツで39勝。2013年に現役を引退してからは野球評論家として活動していたが、2018年9月にGMとして楽天球団の一員に加わった。
就任するやいなや、その2018年オフにFAで西武から浅村栄斗、トレードで広島から福井優也、さらにはヤクルトを自由契約となった由規を獲得。
今オフも、美馬学がFAでロッテへ、嶋基宏を自由契約にしてヤクルトへそれぞれ放出した。一方、FAでロッテから鈴木大地、アメリカから帰国する牧田和久を獲得するなど、精力的に戦力整備を行っている。
さらには、昨季途中からの監督代行を経て、今季も指揮を執っていた平石洋介監督に対しては、前年の最下位から3位にまで浮上させた功績がありながら、来季の監督契約を締結せず、2軍統括としてのポストをオファー。これを固辞した平石氏は、チームを離れ、ソフトバンクの1軍打撃兼野手総合コーチに就任する事態となった。
後任は、今季から2軍の指揮官を務めていた三木肇監督が就任。ただ、三木新監督が石井GMのヤクルト時代の後輩でもあり、そういった「お友達人材」を重用しているのではないかという反発が一部から挙がったのも事実。生え抜きでもある平石氏に愛着を感じていたファンは少なくなかったのだ。
しかし、監督やコーチングスタッフも含めチーム全体の編成を任されるGMが大きな権限と責任を持つのは、メジャーリーグでは当たり前となっている。つまり、石井GMが、昨年最下位のチームを3位に引き上げた、という見方もできるわけである。当然ながらこの先、チームが低迷するようなら、GMの進退にも関わってくる。
もちろん、メジャーのやり方がすべて正しいわけでもなく、日本球界になじまない部分もある。それでも、時代の先端を行くIT企業が母体で、メジャーに近い運営スタイルを目指している部分もあるのではないだろうか。
この先、外国人選手も含めて、新戦力が加入する可能性もあるが、ひとまず11月末時点での陣容を踏まえて、来季の予想オーダーを独断で組んでみた。
1(左翼)島内宏明
2(遊撃)茂木栄五郎
3(二塁)浅村栄斗
4(右翼)ブラッシュ
5(一塁)銀次
6(DH)ウィーラー
7(三塁)鈴木大地
8(中堅)辰己涼介
9(捕手)足立祐一
キーとなるのはウィーラーだ。今季は、来日5年目にして初めて打率2割5分を割り込んでしまった(打率.247)。来季、持ち直すようならクリーンアップ昇格も考えられるが、さらに沈むようなことがあれば、ブラッシュを指名打者に回して、右翼にオコエ瑠偉や田中和基を起用するパターンも考えられる。
また、先日のドラフトで1位指名した小深田大翔(大阪ガス)がキャンプやオープン戦で存在感を発揮するようなら、内野のどこかに割り込む可能性もあるだろう。
一方、投手陣は、先発が則本昂大、岸孝之、辛島航、石橋良太ら、中継ぎはブセニッツ、森原康平、高梨雄平、ハーマンら、そして抑えは松井裕樹といった面々。先発はあと何枚かほしいが、それぞれがシーズンを通してポテンシャルを発揮できるようなら、戦えるスタッフは揃っている。
今季、及ばなかった西武、ソフトバンクにどこまで食らいつけるか。来季の楽天には注目だ。
文=藤山剣(ふじやま・けん)