学校も仕事も始まり2013年もいよいよ本格スタート! といってもなかなかエンジンがかからず、「テレビを見ながら寝正月」を早くも懐かしく感じる頃合いではないでしょうか?
年末年始のテレビ特番でも大活躍だったプロ野球選手たち。特に今年はWBCが開催されることもあり、日本代表候補選手の活躍が目立ちました。しかし、プロ野球人気を支えるのは彼らばかりではありません。ベテラン選手、OB、そしてメジャーリーガーたちの長年の努力の積み重ね、そして深淵な野球愛があればこそ、です。
そこでこのコーナーでは、あえて代表候補以外の選手たちに注目。野球を巡る様々な「愛」の形にクローズアップしながら、年末特番の中でも特に印象的だった愛あふれる名言とエピソードを、独断と偏見とともにランキング形式で振り返りたいと思います。
■第5位/チーム愛
「みんな“グラウンドに銭が落ちてる”と言ってますけど、僕の場合はロッカーに落ちています」
(25日放送・テレビ朝日系『中居正広のプロ野球魂』より、中日・小田幸平捕手の言葉)
毎年、プロ野球選手も交えながら狭く深くプロ野球を掘り下げる『中居正広のプロ野球魂』。今年のテーマは「契約更改」。大人気漫画『グラゼニ』のエピソードを参考にしながら、契約更改の悲喜こもごも、査定基準の秘密、コーチ陣と査定担当者との因果関係など、契約更改の裏側に迫っていきます。そんな中、『グラゼニ』のタイトルの由縁でもある「グラウンドには銭が落ちている」という言葉を引き合いに出して中日・小田幸平選手が語った言葉が上記の台詞。
ベンチでの声出しだけでなく、ロッカールームでの雰囲気作り、さらにはお弁当(ナゴヤドームの球弁「やりましたー弁当」)などのグッズ人気も査定に入っている、というエピソードを披露し、他のプロ野球選手たちも驚かせました。
■第4位/マウンド愛
「苦しんだマウンドでもありますけども、自分を成長させてくれたマウンドでもある。国内にいても成長できたと思うけど、こっちに来たからこそできた成長が大きい」
(26日放送・NHK総合『スポーツハイライト2012』より、レンジャーズ・ダルビッシュ有投手の言葉)
ポストシーズン進出はならなかったものの、メジャー初年度を16勝9敗という好成績で終えたダルビッシュ有投手。しかし、シーズン中盤には1イニングで6失点を食らうなど、制球難に苦しみました。日本ではコントロールの良かったダルビッシュ投手がなぜ? そしてどうやって克服したのか? その秘密が「マウンド」にあったと明かします。
メジャー特有の「堅いマウンド」に慣れず制球難に陥っていたダルビッシュ投手は、2012年のサイ・ヤング賞にも輝いたD・プライス投手(デビルレイズ)の映像を研究。左足の着地姿勢を変更するという新フォームを8月から導入し、それまでの6試合で6.15もあった与四球率が、新フォーム導入以降は1.77と大幅に改善を果たします。苦難も新境地も両方味わった今季のマウンドへの思いを熱く語り、来季の更なる飛躍を誓いました。
■第3位 夫婦愛:プロ野球編
「主人の夢が、私の夢だった」
(『プロ野球戦力外通告2012 首を宣告された男達』より、元千葉ロッテ松本幸大投手の妻・陽子さんの言葉)
9回目を迎えた年末恒例の人気番組『プロ野球戦力外通告』。今回は12球団105人の戦力外選手の中から、元ロッテの松本幸大投手、元楽天の中村真人選手、そして木下達夫投手(元ヤクルトほか)、古木克明選手(元横浜ほか)、G.G.佐藤選手(元西武ほか)の5人に密着して、選手本人と家族の葛藤が描かれました。
中でもフューチャーされたのが松本幸大投手と陽子夫人。中学の同級生だった陽子夫人とは15歳から交際を始め、プロから注目もされていなかった21歳の時に結婚。陽子夫人は「プロ野球選手になる、という自分の夢を支えて欲しい」という松本投手の願いを聞き入れ、保育士の仕事を辞め、独学で栄養学を学んで身体作りのサポートに専念。結果、遅咲きながらも26歳の時に晴れてプロ入りを果たします。しかし、32歳の今シーズン終了後に無念の戦力外通告……。
今回の特番ではトライアウトに挑む過程だけでなく、長かったプロ入りまでの苦労を振り返りながら「主人の夢が私の夢」と何度も語る陽子夫人の姿が印象的でした。松本投手はオリックスの入団テストをパスし、2013年もプロ野球選手として活躍する場を獲得。今年の活躍にも多いに注目したいところです。
■第2位 夫婦愛:メジャー編
「人が人を支えるということはこういうことなんだ、いうことを弓子から学んだ」
(29日放送、NHK総合『プロフェッショナル仕事の流儀 イチロースペシャル2012』より、ヤンキース・イチロー選手の言葉)
昨シーズンに引き続き、打撃不振に苦しんだイチロー選手。それまでの10年間、チームのふがいなさを自身の打撃に集中することで払拭してきた選手だけに、自らのスランプは結果として、チームメイトとの溝をこれまで以上に生み出します。慣れ親しんだ環境、熱狂的なファンを失ってでもチームを変えるべきか否か悩むイチロー。孤独に苦しむイチロー。そんな移籍直前の5月31日に吐露した台詞が上記の弓子夫人への想いです。
「移籍を決断する上では家族の意向も重要」「好きなことを職業にしているけど、周りが見ているほど楽しいものじゃない」「結果と感触が全く違う。紙一重のところでずっと結果が出ない」と弱気な発言を何度も語るなど、今まで以上に人間・イチローの魅力にクローズアップ! その後、ヤンキースで見事なまでの復活劇を果たしたのはご存知の通りです。
この番組は再放送が必ず組まれますので、見逃した方も再放送を要チェックです。
■第1位 家族愛、そして親友への敬愛
「525本のホームランを打ったけど、あいつらには1本も見せたやれんかったから。自分の息子に1本だけ、親父としてね、ホームランを見せてやりたい」
「やっぱり俺と桑田は対決するべきじゃないってつくづく思ったよ」
(31日放送、TBS系『大晦日スポーツ祭り!KYOKUGEN2012 〜人生最後のKK対決〜』より、清原和博の言葉)
2008年の引退から4年。そして、最後のホームランから早6年。二人の息子が物心つく前に引退してしまった清原和博の唯一の心残りは、ホームラン打者としての父親の姿を生で見せてやれなかったこと。今一度、息子たちに真の父親の姿を見せるため、一夜限りの復活を目指します。対戦相手に選んだのは永遠のライバル・桑田真澄。
KK対決を目指して2カ月間毎日500スイングを敢行し、引退後に130kgまで太ってしまった身体を現役時代に近い113kgまで落として決戦当日を迎えます。一方の桑田も現役時代さながらのトレーニングを積み、対戦では最速129キロの直球にカーブ、スライダーを交えての本気の投球を披露。最初の5打席勝負では「空振り三振」「見逃し三振」「レフトへのゴロ」「右中間へのフライ」「左中間フェンス手前の大飛球」と惜しくもホームランはならず……。それでも気持ちが収まらない清原は、桑田と相談の上、さらに三打席勝負を追加します。にもかかわらず、6打席目も7打席目も「空振り三振」。いよいよ追い込まれた清原。
しかし、追い込まれたときこそ、サヨナラ男の本領発揮。運命の最終打席で見事、西武ドームのレフトスタンドにホームランを放ちます。それまで寒さに震えていた息子たちも、打った瞬間、立ち上がっての大喜び。清原の元に駆けつける姿は大晦日にふさわしい感動のフィナーレです。
歓喜のダイヤモンド一周をする清原。しかし、ホームに戻ってきた清原が発した言葉は息子たちへではなく桑田への感謝でした。
「桑田の協力があってこそ。すごいよ、あのピッチャー。俺のスイング軌道を把握して全部そこに投げてくれた。やっぱり俺と桑田は対決するべきじゃないってつくづく思ったよ」
松井秀喜選手引退の報道が流れ、寂しく暮れようとした一年を締めくくったのは、昭和最後のスーパースター、清原・桑田の二人でした。
※次回(1月15日(火)の更新になります)は年始特番を独自の目線で振り返ります。