5回戦、早実の相手になったのは国士舘。2000年以降、3度のセンバツ出場、2005年には夏の西東京を制している強豪だ。
さすがにここまでくると、清宮へのマークも尋常ではない。国士舘バッテリーは、第1打席は内角を攻めて死球。その後は四球を辞さない外角攻めを徹底した。
そんな中でも清宮の好球必打が炸裂した。3回1死二塁で迎えた第2打席。国士舘バッテリーとしては歩かせてもいい場面。当然、外角のボール球で「打ってくれればラッキー」の思惑だったが、やや甘めに入ったボールを清宮は見逃さず、1万1000人の観衆の前でライトスランドに一閃。貫禄を見せつけ、準々決勝進出を決めた。
≪清宮幸太郎全打席:5回戦≫
第1打席 死球
第2打席 本塁打
第3打席 中飛
第4打席 四球
準々決勝の相手は八王子。甲子園出場はないが、近年は上位までコンスタントに駒を進めている強豪校だ。
周知の通り、八王子が6対4で早実を下したが、この試合でも清宮に見どころはあった。
八王子バッテリーの選択は当然、基本的には勝負しない方針。第1打席は1死二塁から清宮を四球で歩かせる。
しかし、第2打席では早実・二塁走者の金子銀佑(3年)が三盗に失敗して2死走者なしとなり、八王子バッテリーは勝負を選択。内角高めのボール球で打ち損じを狙ったが、外角低めへの逆球となったところを清宮は見逃さず、低い弾道で右中間を破る二塁打を放った。
しかもこのとき、八王子は変則シフトを敷いていた。清宮の引っ張り傾向の強い打球に賭け、ライト=ポール際ライン寄り、センター=右中間、レフト=左中間の「清宮シフト」。普通はこうなると右中間を破ることは不可能だが、清宮の打球はフェンスに到達。超高校級の高速二塁打、それも外角低めのボール球を仕留めた。
それでも勝負に勝ったのは八王子の2年生左腕・早乙女大輝だった。120キロ前後のストレート、チェンジアップ、遅いストレート、スプリット、スローカーブなどを“緩緩自在”に操る超軟投派。
第3打席は清宮を敬遠気味に歩かせたが、第4打席では内角高めで詰まらせてセカンドフライ。このセカンドフライも高く上がり、実質ライトまで飛ぶ超高校級の大フライ。清宮のポテンシャルを垣間見たが、結果的には八王子が流れを掌握する大きなポイントになった。
清宮の最終打席にも息を呑んだ。3点差で1死一、三塁。マウンド上には、2番手の米原大地(2年)。一発出れば同点のシーンだった。
後続の4番にはスーパー1年生・野村大樹も控える中、八王子には勝負の選択肢しかなかった。
その初球、米原が投じた内角への緩めの球を清宮は振り上げるようにさばいた。バットは快音を響かせ、誰もが「入った」と思った。しかし、逆風に押し戻され、スタンドイン直前で無念の失速。犠牲フライで1点を返したが、後続が打ち取られ、早実の夏は終わった。
≪清宮幸太郎全打席:準々決勝≫
第1打席 四球
第2打席 二塁打
第3打席 四球
第4打席 二飛
第5打席 右犠飛
西東京大会(通算):打率.583/3本塁打/8打点
早いもので清宮に残された甲子園行きのチャンスはあと2回となった。
今大会では5戦3本塁打。スナイパーばりの集中力を発揮した清宮だが、高いレベルを基準にするとまだまだ課題も多いだろう。
例えば、清宮シフトへの対応。外角低めでも華麗に引っ張る技術はあるが、今大会では左中間方向への打撃は見られなかった。高い能力があるからこそ、その先を見すえて“逆方向への驚愕弾”にも期待したい。
そして、最後のもうひと押し込みもほしいところだ。最終打席も含め、「あと5メートル打球が伸びていれば本塁打」という打球がかなりあった。
清宮にはあと1年の時間が残されている。今夏の“惜しい当たり”を本塁打に変えることができるのか。
実力だけではなく、将来性までをも見せた清宮2年の夏だった。
文=落合初春