『野球太郎』が西武の補強ポイントに挙げたのは「高校生投手」、「守れる遊撃手」、「即戦力のリリーフ型右腕」、「即戦力のリリーフ型左腕」、「右打ち外野手」だった。「高校生投手」から順に指名結果を見ていこう。
今年は高校生投手の逸材が多く揃った。そのなかで西武は“高校BIG4”の一角で今夏の甲子園優勝投手・今井達也(作新学院高=写真)の単独指名に成功。西武らしい「一本釣り」で最高の投手を指名した。
今井の一番の武器は最速152キロのストレート。細身の体でもこれだけの速さの球を投げられるだけに、プロに入って体ができれば「160キロも夢ではない」と目されている。
ただ、不安なのは故障がちなこと。その点は、高卒1年目の投手を無理せず大事に育てる印象のある西武に指名されたのは、今井にとってプラスに働くはずだ。伸びしろ十分の逸材が、どれだけの成長を見せてくれるか楽しみだ。
長年の課題だった遊撃手は、後半戦に活躍したルーキー・呉念庭の台頭で解消されつつある。
来年から西武の指揮を執る辻発彦新監督は1つの方針として、「1点にこだわる野球」を掲げた。この点で、3位で源田壮亮(トヨタ自動車)を指名したのは大きい。源田は「自分は守れないと価値がない。そこは誰にも負けたくない」と言い切るほど、守備を武器とする即戦力遊撃手だ。
ドラフトの約1カ月前には、西武第二球場で西武の2軍と対戦していた源田。この試合でも高い守備力を見せていただけに、その姿が評価された可能性もある。また、50メートル5秒8の俊足も魅力だ。
西武の守れる遊撃手といえば永江恭平もいる。となると、呉、源田、永江の激しい遊撃手争いが繰り広げられるのが濃厚。長年の課題であった遊撃手は、今や最激戦区かもしれない。
西武は今季、リリーフ陣が躍動。守護神の高橋朋己を左ヒジの故障で欠いたが、増田達至が抑えで28セーブと活躍。武隈祥太は64試合に登板し、牧田和久と小石博孝はロングリリーフもこなした。
ただ、牧田に関しては、来季は再び先発で起用される可能性がある。そうなると即戦力のリリーフ右腕を1人は補強したい。その点で、西武は5位でサイドスローの平井克典(Honda鈴鹿)、6位で田村伊知郎(立教大)を指名した。
平井について西武は「キレのあるストレートとスライダーを武器に打者に向かっていく投手。中継ぎとして期待」と評価している。
また、田村は侍ジャパン大学代表でストッパーを務めた。最速150キロのストレートを武器に勢いで押し切るタイプだ。リリーフ向きな雄叫び系投手。
即戦力のリリーフ左腕も1人は欲しいところだったが、今回のドラフトでは指名はなかった。
竹原直隆が戦力外になり、右打ちの外野手は4人と少ない西武だが、右打ちの外野手の指名はなかった。
【総合評価】95点
今季は3年連続のBクラスとなった西武。それでも打線は、中村剛也以外がケガで離脱した以外は、おおむね活発だった。となると、課題は投手陣だ。
単独指名に成功した今井は即戦力とはいかないが、順調に成長すれば将来、チームのエースに成り得る逸材。今井を指名できたことは非常に大きい。
また、2位の中塚駿太(白鴎大)は最速157キロのストレートが武器の素材型投手。平井と田村は即戦力の期待がかかる。投手の整備という課題を解消し、同時に、将来性もあるドラフトとなった。
また、源田は即戦力として見込める遊撃手。4位の鈴木将平(静岡高)は将来のリードオフマンと期待のかかる逸材だ。
投手、野手ともに即戦力と将来性の両面で充実したドラフトになったといえる。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)