11月8日に開幕した「WBSCプレミア12」。初代王者を狙う侍ジャパンをはじめ、それぞれの国や地域の選手がプライドを背負って、熱い戦いが繰り広げられている。
その中にはもちろん、李大浩(韓国代表・ソフトバンク)やウラディミール・バレンティン(オランダ代表・ヤクルト)など、今シーズンの日本プロ野球界を沸かせた助っ人たちも含まれる。
また、過去に日本でプレーした選手も多数参戦することで、大会がちょっとした“同窓会”の場になりそうだ。
元NPB勢でかつMLBでも抜群の実績を誇るのが、アンドリュー・ジョーンズ(オランダ代表・元楽天)だ。“AJ”の愛称で親しまれた英雄はメジャー通算434本塁打を放ち、2013〜2014年に在籍した楽天でも2年間で50本塁打をマーク。球団創設初のリーグ優勝、日本一に導いた4番打者として今も記憶に新しい。楽天を退団後は無所属の状況が続いているものの、大会で活躍して再び日本で…なんてことも100%ないとは言い切れない。
ユリエスキ・グリエル(キューバ代表・元DeNA)も、インパクトを与えた意味では負けていない。五輪やWBCで幾度も顔を合わせた赤い稲妻の象徴は、昨季途中からDeNAでプレー。62試合出場で打率.305、11本塁打と十分な成績を残した。一方で極度の飛行機嫌いから遠征に同行しないなどトラブルも少なくなく、今季も足の故障を盾に“来日拒否”。開幕直後に契約解除となったが、予選ラウンドの結果次第では再び侍ジャパンの面々と相見える可能性もある。
ジョーンズにグリエルと大物がやってくる野手陣に比べ、投手陣は熱心なファンでないと覚えていない選手もいるだろう。
代表格のダニエル・カブレラ(ドミニカ共和国代表・元中日)は、2メートル超から投げ下ろすパワーピッチングを武器に昨季まで中日に在籍。試合開始まで1時間を切ってから調整を始める、超マイペースぶりが目立つ投手だった。守備が非常に苦手なだけに、日本戦で投げることがあれば、バント攻撃で攻略されるかもしれない。
クリス・ラルー(カナダ代表・元ヤクルト)は先発投手として期待されている。同じくカナダ代表のダスティン・モルケン(元日本ハム)はリリーバーの一角を担う。球界最長の身長2メートル16センチで話題を呼んだルーク・ファンミル(オランダ代表・元楽天)は、どうやらクローザーを務める可能性が高いらしい。
今大会に参戦するのは選手だけではない。監督・コーチにもNPBゆかりの人々がいるのだ。その中で指揮官を務めるのが、郭泰源(チャイニーズタイペイ代表・元西武)とヘンスリー・ミューレンス(オランダ代表・元ヤクルトなど)の2人だ。
郭は“オリエント・エクスプレス”の異名をとった剛腕。80年代〜90年代の西武黄金期を支えたひとりで、郭源治(元中日)とともに台湾出身助っ人の草分け的な存在だった。昨季までソフトバンクの投手コーチを務めていただけに、日本の事情にも明るい。
ミューレンスは現役時代、「ミューレン」の登録名でロッテ・ヤクルトに計3年間在籍。1995年のヤクルト日本一時には、“恐怖の8番打者”として投手に恐れられていた大砲だ。指導者としても有能で、2013年のWBCではオランダ代表を初のベスト4に導いた。
その他にも、かつての中日のストッパー・宣銅烈が韓国代表の投手コーチ、ビックバン打線の一員だったロブ・デューシー(元日本ハム)がカナダ代表のコーチを務める。
元NPB勢を懐かしがるのも、国際大会ならではの楽しみ方となりそうだ。彼らの元気な姿を見届けたい。
文=加賀一輝(かが・いっき)