知っておきたい球場の話。第4回となる今回は地方球場のなかでも珍しい光景が広がる珍球場を紹介したい。
高校野球、大学野球が開催されている明治神宮第二球場は非常に珍しい複合施設として野球ファンの間では有名だ。一塁側のスタンドにそびえ立つのは何と3層構造のゴルフ練習場。野球開催時以外はグラウンドに向かって、打ちっぱなしができる。都会的な省スペースでの両立であり、この構造を考えた人は奇才としか言いようがない。
ただ、2020年の東京五輪以降、神宮外苑は大規模な再開発が予定されており、神宮第二球場は取り壊される見込み。レトロフューチャーな光景を記録や記憶に残すなら、今行っておくべきだろう。
野球ファンにはたまらない珍球場は東海地区のアマチュア野球ではおなじみの岡崎市民球場。中堅がなんと126メートルと12球団本拠地よりも遥かに深く、見るからに外野が広い(両翼は99.1メートルのため、特にセンター)。たまにオープン戦や2軍戦が開催されるが、観戦する機会があればプロの守り方にも注目したい。
標高1035メートルに位置する野球場。山梨県の高校野球などで使用されるが、ホームベース、電光掲示板、そして奥に望む富士山が見事に直線的に配置されており、「富士山と野球」を一度に画に収められる絶景球場。東京からのアクセスの苦労もあり、スポーツライターなどはこの球場に行くと思わずツイッターにアップする。「記録より記憶派」でもスマホ、カメラを構えずにはいられないスポットだ。
熊本野球の聖地であり、古くからプロ野球の九州巡業の定番だった藤崎台球場も珍球場のひとつ。野球ファンには周知の通り、外野芝生席の奥には樹齢約400年から1000年のクスノキの巨樹が群生しており、外野フィールド部分にまで迫り出している。
このクスノキは国の天然記念物に指定されているため、容易に剪定できず、高校野球では枝や幹に当たれば本塁打扱いという「ラッキーゾーン」になっている。ただ、ボールを当ててしまうのはあまりに畏れ多いが…。
また中堅が約122メートル、両翼約99メートルのサイズは昭和に建てられた球場では飛び抜けて大きく(甲子園にもラッキーゾーンがあった時代)、「日本一大きい球場」というテレビ実況の一文を覚えているオールドファンも多いという。1軍戦が開催される球場としては間違いなくその部類だっただろう。
城郭を利用した運動施設、野球場も少なくないが、壮大さなら伏見桃山城運動公園野球場がすごい。ライト後方には伏見城の大天守と小天守がドーンと構え、まるで御前試合である。外野席はなく、内野のスタンドも小ぶりだが、京滋大学リーグの公式戦でもときおり使用されている硬式規格の球場だ。
ただし、この伏見城は1964年に開園した「伏見桃山城キャッスルランド」の模擬天守。2003年に同園は閉園したが、運動公園として整備され、胸躍る構図になった。現存天守では絶対に実現しないであろう珍しい光景だ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)