初戦で横浜高を破りながら2回戦で敗退した八戸学院光星高。注目の北條裕之は、好左腕・高橋奎二から2安打を放った。3回のタイムリー二塁打は、外角への厳しいコースのストレートを右中間へ。しかも第1打席で内角のスライダーに空振り三振するなど、内角を意識させられた上での対応だった。相手の術中にはまらない対応力と広いヒットゾーンは今後、北條の打撃スタイルの大きなキモになりそうだ。
豊川高のエース・田中空良が、がむしゃらに飛ばした初戦とはまた異なる姿を見せ、チームをベスト8に導いた。この試合を通じ、田中の精神面での成長を強く感じた。
昨秋の東海大会で“センバツ当確”となる決勝進出を決めた時、今井陽一監督は田中について「本塁打を打たれた後なども(冷静に切り替えて)抑えられるようになった」と“心”の成長を褒めていたが、センバツ2回戦ではさらにもう一段、大人びていた。マウンド上で打者を見下ろし、振る舞いに余裕があった。3回表、けん制で一塁走者をたて続けに刺したのはその典型。序盤から視野を広くもち、絶妙なタイミングで意味のあるけん制を仕掛けた。
ピッチングは初戦よりも球速が出ていなかったが、コースを意識した投球でやはり「大人」な一面を披露。球が浮くシーンは時折あったが、7〜8割のデキでもきちんとゲームメークし、甲子園2勝目を挙げたことは大収穫である。
桐生第一高との引き分け再試合により、2日間で304球を投げ抜いた山岡就也は、ベスト8目前で涙を飲んだが、存在感があった。まず、初戦の東海大三高戦では、いきなり4者連続三振を奪い、勢いをみせたかと思うと、6回以降は打たせて取る投球にギアチェンジ。メリハリの効いた大人の投球も披露した。なかでもこだわりのあるストレートは、驚くようなスピードこそ、計測しなかったが、打者のバットが空を切る場面が印象に残った。その要素として、昨秋に本人が課題にあげていた制球力不足を克服したことが大きい。多少アバウトだったストレートの精度が増し、キレとコーナーワークが格段に成長した。それは32回を投げ、四死球3つという結果にも表れており、これも球速だけでは語れない、こだわりのあるストレートだといえる。
「琉球のライアン」こと山城大智。ここまで2試合18イニングを投げて計1失点の安定した投球から一転、準々決勝は初出場の豊川高を相手に試練の投球になった。初回、先頭打者にレフト前にポテンと落ちるテキサスヒットを打たれると、1死三塁からの3番・氷見泰介のセンターへの詰まった当たりが適時打となり失点。不運な当たりに出鼻をくじかれ、2回までに5点を奪われノックアウトされた。決して打たれた実感のないまま、あれよあれよと豊川高のムードに巻き込まれたという感じだろう。
夏はセンバツに同じく出場した美里工高らとの厳しい争いが待っている。甲子園に棲む「魔物」に借りを返すことができるのか? 夏もライアン・山城に注目だ。